鈍いいろ/遠藤杏
少しだけあと少しだけ青が足りないもう少しだけ呼吸するには
苦しくてひねる手元のボリュームはいつもなにかを拒んでるふり
悲しみの色水溶かして街中にゆっくり注ぐ犯罪行為
パレードの最後尾からおもむろにナイフ手にして歌う賛美歌
自慢げに取り出す絵の具をぶちまけて手っ取り早く絶望しろよ
濃紺の夜の絨毯ひろげたらキャンプファイアの準備するころ
赤い服着てビル街の隙間からそっと見守るベンチの会話
黒い爪かさかさになった指先を撫でるしぐさは夜に似ている
すれ違う駅のホームの少年のヘッドフォンからプルトニウムが
あまりにもかたむきすぎた階段をくるぶし使って登る水鳥
戻る 編 削 Point(1)