庭を散布する/本木はじめ
蝶をつくる手がはぐれてしまう
簑田伶子
「ほら、海!」ときみがはしゃいだ時は過ぎ埋め立て地にて描くあの夏
幼さや日本むかしばなし的郷愁思い出補正が鳴るよ
再会は再開なのかきみといて「ザ・ワールド」と呟く僕は
あいかわらずきみはセンスが悪いねと思うサンダルダルシムのシャツ
聞いたことない駅の名を携帯の向こう側から叫んでるきみ
滅相もございませんの滅相てなんなの?なんか怖いんだけど
きみが気付いた四角い部屋を暗くして冷たい虹鱒クッションを抱く
今晩はまだら模様の夜空です涼しい風と散歩しましょう
何ひとついいことないと言いながら数えきれない蛍を描く
八月の淡い夕陽を内包す空にふたりが泣かされている
きみが来るベッドの中で死に際の僕の病室スイカ抱えて
愛でないものがこの世にあるということをあなたに伝えなければ
透明の煙じゃなくてきらきらとひかる煙になってさよなら
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