海/永乃ゆち
 

母さんの優しさに頼り切っていた十四の頃の海は真緑

深海のクジラの骨に囲まれて眠っています空を夢見て

いつの日か母と歩いた海岸線足跡などは跡形もなく

海原に虹を見たのかあの人は輝ける星になり燃え尽きた

愛と言う海に溺れてもがけども足掻けどもなお沈んでしまう

あの朝に海に還った恋人よ私の事など忘れましたか

砂を噛むように今まで生きてきた途中下車した海は青くて

さざ波がつま先を強くを引いてゆく海にも重力があると知る

重力に負けたんだよねそれだけの事です彼は海に還った

永遠に終わりのない旅永遠に始まらない朝海は等しく
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