昼/渦巻二三五
 
つば広き帽子を被り身を隠すべきところなき昼へ出でなむ

あの家もこの家も土購ひて植物の笑み養つてゐる

曇る日も洗濯物を干せること働きに出ず部屋にゐること

山盛りのカートの並ぶ特売日「あからさま」てふ列の尾につく

ゴミ袋購入チケツト店員に差し出すときのかすかな卑屈

夕風に向かひて瞼閉ぢてゐるくちづけを待つわけぢやないけど

テレビ観てをれば度々なつかしく 帰りたいとは言へぬ東京

貼り紙のありて肉屋と気づきけり「牛肉あります」店主達筆

お隣の庭に蛙がゐるらしく吾が通るとき鳴き止むらしく



     
初出:二000年五月 @nifty 現代詩フォーラム

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