冬とむらさき/木立 悟
 





すぎてゆく光の指に思い出す斎場の冬の風ひとかけら



死にたいか死人でいたいかどうなのか急かしつづける夜の水たまり



おまえにも俺にも指が十二本打ち寄せる泡すくいこぼして



川はさみ夜は無音を建ててゆく九時に帰る矢が帰らないまま



ふと見ると空には曇の場所が無いときどき染まりときどき落ちて



骨の森ふきだまる午後けだものは己のはらわた踏みしめてゆく



すべて捨てすべて喰わねば到かない冬を冬の血に響かせたいなら



動かずに動きつづける楔文字冷えたむらさき流れつく先




















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