ノート(茫日某月)/木立 悟
 






夜を剥くまた夜が出てまた剥いて五十六億七千万剥く




霧を霧煙を煙に打ち付けて鏡に沈む磔刑を見る




青空が堕ちて積もりたる谷間には幼い子らが正座しており




くりかえし夢と現を削りとりただそれだけで何もしはしない




夜を割る夜をすぎるたび夜を割る止まった川辺の時間うららか




鳴りひびき鳴りつづくのは虚ろゆえ終わりなく鳴る虚ろ尽きるまで




あなたからあなたの笑みの牙を取りひとさし指の空に落とす午後




ゆくのならささやくほうへゆきなさい大声でなく大勢でなく




目の下の六月の空すぎてゆく幻日や火や文明の址





























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