名もなき明日/望月 ゆき
朝露が、透明に落ちて、
ガラス玉、
ふりそそぐ、すべてのことに、
驚かないで
あの高台にたたずんで、
きみが眺めていたものがなんだったか、
それをたしかめるために、
わたしはこれからも、生きていこう
まぶたの裏側の露の揮発性 幾度も還る 空の湖
希望的観測の上 散りつもる 花弁の白を反芻する朝
背中越しスローモーションで崩れゆく世界を眺む午後のルーペで
遠浅に浮かぶ箱庭 星くずを抱いて仰ぐ揺るぎない空
沈黙の庭に芽吹いたムスカリの 笑い声にも似た鮮やかな
柔らかな石畳から蒸発す 悪意なき海の声と涙と
弧を描く鳥の軌跡を虹という きみの輪郭だけがとなりに
白昼に空中分解した過去よ 集え 一本松を座標に
彼方まで見渡す森の底の底 宝さがしに出かける朝に
永遠よりも長い夜のその先の 名もなき明日を照らす太陽
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