大和未遂/本木はじめ
 
閉じ込めて鍵を閉め忘れたがゆえに青空今日もひろがってをり


低地へと雨がながれてゆくはるか彼方の名も知らぬやま


生活のにおいを捨てて枯れすすき遠くに見ゆる鬼と目が合う


彼方へと船を漕ぎ出す少年や少女は野やまの風に抱かるる


紫陽花や象の集いし部屋にただひとりだいひゃうとして喋りをる


たとうれば少年少女の砂場にてを埋めつくりをる砂山の穴


影ばかり追いしつかの間あさが来てスーツネクタイなど纏い出ずる


誕生日雨傘ひとつくれてやるミシンは自分で買いにでかけよ


きみどりのようやくうすれてゆく冬のはじめの庭の黒蝶

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