帯色未遂/本木はじめ
 
今赤き風船ひとつきみの手をはなれ空へと浮気なぼくら


胎動を促すごとく数々の伏線蜘蛛の巣顔にかぶれば


ソヴィエトで焚き火にあたっている少女大陸横断鉄道の窓


金魚鉢のふちで指切り約束は滲む金魚の尾ひれに揺れて


ぼくときみ見知らぬ街でぶつかった白い車のミラーの中で


信号機渡る手の平汗ばみてふたりのひとみはあかあおきいろ


ゾンビしてきみに真夜中会いにゆく開口一番「きゃー、バンビ!」おい


蜜とゆう甘くてとろける液体だ星間宙宇を歩いて月へ


牢獄からあなたへ届く一通の手紙の中のひからびた蝶

戻る   Point(13)