触れずに/木立 悟
白濁が白濁に午後つらぬいておまえを息に刻む刃の先
一時から一時半にてひとり縫う花の棘の指つぎはぎの指
夜が消え夜の代わりの夜が笑み早すぎる星に刺さる右耳
がらんどう銀が鉛に鳴りひびき踏み砕かれる冬や冬や冬
指たちが氷弾く指見ないのは忘れられるのがおそろしいから
冠をわたしそこねた羽の手が二月の玉座をめぐる血の道
冬の死の光を知らぬ光には導くように割れた鈴の鳴る
死を死とは言えぬ息こそこだまして接ぎ木のいのち燃やすうたかた
雨あがり遠のく空の上の空ぐらりと光り足もとを見る
ひとしずく誰も知らぬうたうたいゆくおまえがおまえに触れず触れる日
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