夏の果実2種/雨音些末
 
<桃>

夏の夕 シャワーを浴びて 丹念に
        君に食まれる 身支度のとき 

うっすらと 産毛の肌が汗ばんで
        早く食べてと 桃の香がして

摑まれて 形を崩す くだものの
        香り満ちゆく 夕暮れの刻(とき)


<葡萄>

侵入(はい)ろうと 白い歯が押すテンションに
        薄皮抗う ピッテロビアンコ

ふっつりと その果皮破る白い歯に
        痛いとも言わず果汁(しる)迸る

薄緑 咀嚼の音もさりさりと
        窓外の雨 未だ止まずに
戻る   Point(3)