陰と振り子/
木立 悟
閉ざされた石倉の目に咲いた花あらゆる腔が熱を吹く日に
押すと消え押すと現わる世を胸に見知らぬひとの名を呼びし闇
何もない心がひとりうたうのは己れが己れにおののくがゆえ
夏雨が菓子を食べては礼を言う羽に取られず土に取られず
残るもの残らぬものを過ぎる風ひとりの距離にひとりたたずむ
蒼白き鉄の輪のなか遠去かる滴の眠り子蜘蛛の宇宙
はじめからひとりの遊び帰れない影踏みの影燃え尽きたあと
かしかしと手のひらに鳴る見えぬ紙見えぬままただひらかれてゆく
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