春を密輸/しろいろ
ぼくたちは春を起点に遠ざかる公転軌道を失った星
君という病を喪いかたかたと瘧(おこり)のように震える柱
便箋を一枚一枚丁寧に破ればただの紙の山です
カポーティか太宰を常備薬として制服姿で密輸する春
助手席はずっと空席(頭上注意!)歩道橋から降ってくる影
二十余年全身麻酔の夢のなか幕引きのための符号はどこだ?
この手にはきみのぬくもり やわらかな卵のちいさくふるえるような
クレパスで大きく円を描いてもすこしはみだす あのころのそら
恋人は屋
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