修羅を読む(7)/Giton
 
にせものは灼き尽されて
荒れた野に
芽ぶき伸びたつ 大乗の樺

    ☆

明け空に
大きな青い星うかび
償はれぬ恋
しづまらぬ風

    ☆

みたされぬ青い抱擁
萱の穂のかへす赤潮
ひるのまどろみ

    ☆

坊主森 削られた崖 飛ぶ車窓
沃度の匂が かなしくする

    ☆

バリカンは松や小楢を刈りおとし
うめばちさうや山羊の乳にほふ

    ☆

走る羊歯
さるとりいばら
ラテライト
萱の灼熱 寂寥の紺

    ☆

白びかる そらのバリカン
萱のかぜ
波だつ赤い花 とんぼ飛ぶ

    ☆

三角やま ひかりにかすれ
馬せかせば
さびしく燃える 栗の木ひとつ

    ☆

日はくらみ
伯林青(べるりんせい)のスロープは
また削られて 天の石墨

    ☆

琥珀ちる 明暗交錯のむかふ
悼みきらめく 果ての梯形

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