迷/木立 悟
早朝に目から冬空吸い込めば高くそびえる水銀の道
誰も居ぬ場所を迷えば誰か居る今にもいのち消える目をして
星が噛み窓が割れても空ふたつ棄て置かれし火棄て置かれし火
川辺にて目隠し解かれ水面にただ翁面(おきなめん)燃えゆくを見る
こどもらの放つうたから足はえて浮かれ浮かれて空ふみはずす
酒こぼれ近寄るものも無い夜に頬つねるよな猫のくちづけ
雨になる雪になりまた雨になる水底で火は見つめつづける
けだものの造りし迷路さやさやと尾は那由他(なゆた)なり穂は無限なり
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