冬と斑唱/木立 悟
輪には輪の渦には渦の溶鉱炉くべられし穂と冬空の青
金属を踏む左足火のかたち花のかたちにひらかれる指
もろもろの人の憎しみ浴びながらぴくりともせぬ冬の大鎌
とめどなき仄か幽かにあふれ出て野は野に霧は霧に迷いゆく
冬の地の弦と螺旋がつまびくは無慈悲な姉の死の物語
川を陽を空を世界を流し去り鏡は鏡を流しつづける
眠りより堕ちたものから響きゆく双つ野を過ぐ冬の遍歴
何もかも雨の化粧をするときに面かぶるもの笑みひらくもの
蒼でさえ到かぬ蒼とその果ての冬が冬を見初めゆく海
唱になり水になり火にはばたく子そこで遊んでいいのだから
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