51P 「短歌2」より〜 昭和五十年/むさこ
 
新雪を犯して歩む足跡が黒く
続きて物語めく

人走る足音ひびく小夜床に
大寒と言う静けさかとも

蓑虫が瓦に下り風花に
吹かるるが見ゆ窓に寄るとき

胸のすく音させて割る うす氷
水溜りまたたく泥の水

密に降る雪に街並幻の如く
車が音なく走る
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