鈴森と鏡子/木立 悟
鈴の森触れては消える降るうたは触れては消える触れては消える
夜に泣く左目を知る鏡の子まなざし手繰る火の指の先
忌みの日の化粧のように白き喉うねりざわめく小径を照らす
洞となる夜の荒れ野を響きゆく獣のこだま鬼の言霊
終わりなく変わりつづける詩を追い人を捨てしものひとつ落とす影
泪には何があるのか触れてみる鏡の指に伝わるこだま
消し去れぬ想いに焼かれ目覚めれば空を埋ずめる蒼ざめた路
頬ずりの記憶かなしくよみがえる失くした眠り終わらぬ渇き
近づいてやがて遠のく鏡の子うた降りやまぬ鈴の森から
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