17P 「短歌2」より/むさこ
 
木の芽煮る 香を家中に満たしめて
仄な気息に浸る一時

柚の香のたつ厨辺に春の雪
硝子戸越しに舞い上がりゆく

咎むること胸にある日は釘までも
せんなきことに吾が服を裂く

雨の音聞きつつ寝るはいたわるる
如き思いの安けさにいる

豊かなる表情を見て通りすぐ
電話ボックスの中の若き娘
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