火と歩み/木立 悟
光なく音もたてずにうねりゆく野火の描く蛇さまよういのち
はねのける受け入れるだけが生でなく争うことは戦いでなく
足跡も足音も絶え他を焼かず自らを焼く火を歩みゆく
ものは象(もの)ぞうは象(ぞう)だと知りつつも有象無象に囲まれる日々
心臓につながる両目とざしても火は肉を馳せ血をめぐりゆく
もとめればもとめるほどに遠去かる響きから成る真綿の地平
火を映し火に染まらずに火をうたい荒れ野をわたる水のくちびる
砂の陽を浴びる歩みのかたわらで穂の手のひらに降るひとしずく
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