木の芽立つ/渦巻二三五
 
木々の芽の魚(うを)の頭のかたちして霞の谷に息ひそめゐる

この冬も人失はれ残雪の谷さやさやと木の芽張り初む

断崖に身をよぢりたる一樹あり芽のあをあをときのふを忘れず

約束てふ言葉はあらず芽吹くときいつせいに水のぼりはじめる

木の芽立つ枝をふるはせけものめく森に夜の雨ぬるく注げり

木の芽立つ枝交はりて天地(あめつち)をめぐる争ひまたはじまりぬ




          
一九九九年四月二六日 現代詩フォーラム@nifty


戻る   Point(2)