単没/ふもと 鈴
 
地下鉄のとびら額のはりつく「つめたい」

雷を呼びにけり描きにけり画家の病癒えにけるかな春の夕

かすがひに苦しみ咲いた秋雄花水をうかべるために倒れる

いつもいつも青に尾をひく詩をおきて夕日にきみを沈めるといふ

日の過ぎし新聞黄に変わりけりわれの手もまた小さくなりぬ

年若く春日に暮らし鳥にあふなに介在す余地もなきまま

強く強く視界のすみの渦潮がとばそうとするしぶきのある

未読みどりマスカット種の口に砕かれぬ歯がゆさ


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