冬業/木立 悟
雪原の風たぐり舞う銀髪にあるはずもない笑みを見ていた
くりかえし光の行方追いつづけ雪の背骨を駆けてゆく子ら
道に棲む静寂(しじま)に映る水の笑み夜の片目にそそがれてゆく
抱きつかれその冷たさに動けずにただ打ち寄せる髪を見ていた
闇のなか置き去りにされた鏡には置き去りの手がかがやいており
夜に融けふたたび凍る水の笑み空の濁りを閉じこめたまま
うなるもの空をゆくもの名を降らせ積もりそびえて崩れ去る名を
うた遠く笑み遠い道たたずめば頬つたいゆく冬の花びら
戻る 編 削 Point(19)