立春前/
本田憲嵩
小春日、
冬がときおり気紛れに被ることのある仮面、
とてもおおきな、
あしなが蜘蛛は、
その翌日、
いち早く訪れた、をよそおって、
まるで春そのもののように壁に張りついている、
けれども、
手袋を履いたぼくの指先からは、
けっして逃れもせず、
まるで枯れきった茶色い冬の花のように、
ポロリ、
と、
冷たいコンクリートの床面へと剥がれ落ちてゆく、
そんな、
まだ依然として居座り続けている、
冬という名の季節の、
冷酷な素顔、
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