幾春別/伊藤透雪
学校帰り、町に一つしかない音が出る横断歩道を、
わざわざ渡って帰ろうとしたら、横断旗が誰かに
盗られて無くなっていたのでがっかりした。
通学路は神社の山を横に見て、帰る道には線路が近い。
金網を覗くと珍しく回転台に蒸気機関車が留まって
いる。乗ったのは随分前だ。幾春別駅は小さな駅だが、
構内は広くて人道橋が渡っているほどだ。
鉄路は岩見沢へ向かっている。以前に何人かと秘密
の穴から潜り込んで構内に入り、レールに耳を当てる
と遠くに機関車の来る音が聞こえる事があって、男子
がはしゃいでいたのを思い出した。
人道橋の手前でうちの工場だ。ただいま、と帰る
と鑿で板を削る父
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