Scherzo/リつ
 
A音。
AーAa,AAーa,Aaー

絶え間無く平坦に繰り返す耳鳴りが
(ラ)のおとだと気づくのは
虚しく遣りきれない。

窒息しそうな圧迫が
次々と追い駈け
螺旋を巻いて
私、
皮膚の舌から
はだかになってしまう

望んだわけではなく
楽しさを見つけられない夜啼鳥の
三拍子くるった歪みが頭蓋を抉るので、
嫌みな笑いを抑えきれない。

裸になった私は
理科室の人体模型よりも惨めに薄汚れて
腐りかけたアメリカンチェリーの甘く爛れた匂いを発酵させながら
赤黒い体液を垂れ流すのだ。
粘っこい液体は蒸発することなく
床にしたたる傍から
じゅうじゅうと音鳴る
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