無口な君を忘れるな/みぎめ ひだりめ
義務と責任に 取り憑かれ
小さな嗚咽を 飲み込んで
それすら 笑顔で遮った
君はどうして 無理をする
あればならぬと 奮い立ち
恥をかくなと 叱りつけ
そうして 自分を守るのか
背負った重荷に 身が軋む
なんでもなかった あの頃の
昼間の 小さな公園の
木陰に触れる 風のよな
無口な君を 忘れるな
見栄や外聞を 掻き抱いて
できないものを 見下ろして
見上げるものを 選んでは
それに及ばぬ ことを責め
金がなければ 生きられぬ
だから どうにか役に立つ
自分でなければ 価値はなく
こころは 二の次三の次
大人になった 君の手を
草穂の波が なでつける
なんでもなれた あの頃の
無口な君を 忘れるな
ぼくと遊んだ あの頃の
雲の白さを ただ見つめ
春の日差しに まばたいた
無口な君を 忘れるな
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