喉痕/中沢人鳥
 
空が灼け落ちた跡に残る鳥影は
もはや輪郭ではなく黒曜石の断面であった?
そこに指をあてると微かに温度があり
それを痛みと呼んでも差し支えないと思った
喉奥に残る違和感は
言葉の幼生が死に絶えた痕跡のよう
粘つき、蠢いた?
街の喧噪がやけに清潔で
それを憎んだ
ロックスターの声は
瓦礫のように散乱する肉体論であり
その上を裸足で歩いた?
血は出なかった
代わりに、ある思想が沁み出した
私は人を殴ったことがない?
ただ、その人が崩壊する様を?
息をひそめて見つめていたに過ぎない
それは愛ではない?
だが、最も純粋な形の祝祭だった
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