母、ハルピンへとゆく/栗栖真理亜
まだ夜が明けぬ間にハルピンへと旅立った母
異郷で歌を届ける為だ
新入りだというだけで白い目で見られながらも
欠かさずレッスンへ行き家でも家事をしながら
テープを流して歌を歌っていた
その姿が娘である私には眩しく見えた
今はもうハルピンに着いたところだろうか
日本とは違う異歌う度胸は私にはないけど
どうか無事に成功して帰ってきて欲しい
そしてまた明るいトーンで私に土産話を聞かせて欲しい
美しいソプラノの音色で
私の知らない思い出話を
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