わが『ユリシーズ』/川崎都市狼 Toshiro Kawasaki
人戀しさのあまり
無駄ガネを遣ふ
本当は誰も俺の事など
知つちやゐないのに
よおあけおめ(笑)なんて愛想を振りまいて
ライヴハウスの喧騒の
中に獨り
ワインが何とも澁い
舌が痺れる
東高円寺は遠い
結局行かない
明日も俺が生きてゐる、とするならば-
要するに戀人の體臭を嗅ぐにも
カネがかゝるのだ
暗い詩
とならざるを得ない
俺に書けるのは
友にも會へぬ、バイトの手間賃仕事
を恐れてゐるからだ
そこでは詩人の自恃など
髪の毛一本ほどの価値もない
即興で書く
水鳥の如き水面下の足掻きを
卒倒する迄
の話
俺のそつ首を掻き切る
サロメよ!
わが『ユリシーズ』
オデッセイが
俺を世に押し出す-
それも現時點では夢物語
全く、暗い詩と
ならざるを得ぬ そんな
近況報告
これすらも
誰が讀む?
ジョイスの翻譯をした
左川ちかを思ふ
彼女が俺の戀人であつたらな
不謹慎
な詩人
に
俺はなりたい
#詩
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