勝手に咲いてしまう花/夏井椋也
 

書けないのなら
書く必要がない

心の縁から
投げ込んだテーマが
もったり沈んでいくのを
焦げたトーストを齧りながら
眺めていた

書けていないのなら
書く意味がない

心の底を
彷徨うメタファーが
苦い気泡を吐いているのを
ウヰスキーを舐めながら
眺めていた

深夜
もぞもぞと
心の真ん中に
勝手に花が咲いた

慌てて寝床を抜け出して
誤変換だらけのキーを叩いて
タイトルと値札をつけてみたが

たぶん

違う



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