無人島/たもつ
あなたが好きだった
あなたの好物はベジタブルで
わたしはベジタブルよりも
あなたが好きだった
同じ所に住んで
同じお役所で手続きをして
世界中で一番好き
なんておこがましいけれど
少なくとも
市内で一番好きだった
夜、二人きりで
ベジタブルを食べる
無人島に流れついたように
闇に溶けていく気がする
二人いるのだから無人島じゃないよ
そう微笑むあなたの姿が
世界中のどんなベジタブルよりも
愛しく思えた
それなのにあなたは
ベジタブルになってしまった
静かな冬の日だった
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