WELCOME TO THE WASTELESS LAND。──詩法と実作/田中宏輔
 
「私の生涯を通じて、私というのは、空虚な場所、何も描いてない輪郭に過ぎない。しかし、そのために、この空虚な場所を填(うず)めるという義務と課題とが与えられている。」(ジンメル『日々の断想』66、清水幾太郎訳)「この間隙を、深淵を、わたしたちは視線と、触れ合いと、言葉とで埋める。」(アーシュラ・K・ル・グィン『所有せざる人々』第十章、佐藤高子訳)「「存在」は広大な肯定であって、否定を峻拒(しゆんきよ)し、みずから均衡を保ち、関係、部分、時間をことごとくおのれ自身の内部に吸収しつくす。」(エマソン『償い』酒本雅之訳)「彼、あらゆる精神の中で最も然(しか)りと肯定するこの精神は、一語を
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