或る日の僥倖/幽霊
 
 声をやって女を呼び込み、彼女は私のところまで歩いて来た、が、それは漠然(なんとなく)どこか真っ直ぐやって来たな、と私に思わせた。まぁ、尋常(いつも)はこれほどまでに真っ直ぐやって来たとは私に思わせない。それが
 それだ、細長(あわ)い線(もの)が彼女の手から伸びていた。白杖。彼女は盲いていた。私は盲目(それ)を知って彼女を懐かしく思うた
 いまに恋(いきぐる)しい
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