年神さまのこと/花の営み/ちぇりこ。
大晦日の夜から元旦にかけて
年神さまが誰も知らない山から降りてきて
健やかな子どもの足裏に
ひと粒の種を植えてゆく
今年はせいちゃんの番かもしれんねえ
そう言って祖母は細い目をいっそう細くして
しわくちゃのお餅みたいな顔になった
大人たちは年神さまを迎える準備に余念が無い
大きな声でお酒やらご馳走やらが飛び交って
色んな匂いが混ざって
古い家屋はぼくの知らない家屋のようになる
子どもは年神さまを見ることができないので
布団を頭から被り目をつぶり
寝たふりをするしかなかった
今年の年神さまはたいそうお酒が好きだったね
今年の年神さまはえらい無口だったね
大人たちは口々
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