思い残しつつ/ヒロセマコト
 
真っ赤な毒で満たされた盃を
一息に飲み干した

人生の不遇も悲しみも
すべて人のせいにして
生きてきた贖いとして

置き去りにしてきた不義理の数々
あなたは思い出すだろう

人の優しさを貪り
愛で報いることもせず
差し伸べられた手を振り払って
不貞腐れて生きてきた天の邪鬼よ

絶望の風に弾き倒され
凍てついた孤独の地をのたうち回り
声をあげて泣けばいい

涙が凍り目は塞がり
感覚を失った足は萎え
立ち上がることすらできなくても

あなたの心臓は脈打つことをやめず
安息の日はまだ遠い

毒を吐き戻し
涙と涎で汚れた顔を上げれば
あなたはきっと
少しだけ変わることができる

傷んだ体を引きずりながら
次の門をくぐり
今日と地続きの明日への道を
ともに歩こうよ
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