夜/
花形新次
小児喘息が酷くて
発作が起きて寝られない夜は
リビングの椅子に座って
朝が来るのを
ひとり待っていた
眠くなっても
熟睡は出来ずに
自分の呼吸音だけに
集中していると
それはやがて浅い眠りのなかで
波の景色に変わった
長くは生きられない
そんな予感がした
でも僕はまだ生きている
透明なガラスのような
汚れない美しさは
いつの間にか
消えてしまったのに
僕は
まだ生きている
いや
だから
僕は生き永らえている
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