【病棟日誌】 友達/レタス
 
松本さんは重度の統合失調症で
時々大声で叫ぶ
その後にぼくとハグをして泣く
ぼくは背中を撫で、ポンポンポンと軽く叩く
ストレスで叫んでしまうと言う

お酒がないのでぶどうジュースで乾杯もする
足腰はしっかりしているので朝の散歩も事欠かない
土手の散策路で水面の鴨を数えてニッコリする

十歳年下なのに完璧な白髪だ
食事は高カロリーのペーストと液体、牛乳だけだ
これで一食600キロカロリーは確保している
魚や肉を食べるとジンマシンが出るという

寡黙だけれど、必死に挨拶をしたり
何かを伝えたがるようになってきた
磨き抜かれた回廊を並んで行ったり来たり
入院中だけだけれど友達でいたい
彼は純度の高い結晶を持っている
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