街角のかたつむり/リリー
昨日届いた喪中葉書
十二月が、いそぐ街道で
歩むわたしの跡に光っている
薄いオリエンタルブルーの粘液
これは体のタンパク質と
多糖分と大量の水分
角が右も左も交互にのびて
スニーカーや革靴に踏みつけられないように
のがれながら前進する
居心地のいい湿気たところにばかり居られない
いつもの駅で
電車を待つ人の列から外れた少年が
両膝を抱えて座りこみ眠っている
誰からも声を掛けられず
彼も、巨きなかたつむりだろうか
わたしも眼を瞑れば時に
ビル風も凍雲も
ざらざらと意識に見え隠れして
ちっぽけな臓物の上には、
にんげんの影をおとしていく
熱くなってしまう頭を引っ込めて
地上の振動で響いてくる圧力から解脱し
心には、しずかな明日の空いろと
裸木の枝を仰ぎ見る
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