声待ち/AB(なかほど)
 


毎年この日の夜には
上原君の星が話しかけてくるはずなのに
今年は何も聞こえてこなくて

見上げても
光が揺れることもなく

なあ、もう忘れちゃうよ


小さく嘘をついてみた

遠くの河原で花火の上がる音
そして
     虫の声

なあ、

もう

     忘れちゃうよ


「花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように」より


   

戻る   Point(3)