タム・タム ボーイ/栗栖真理亜
 
翼をむしり取られた鳥は
もう二度と真っ青な大空を自由に飛び回ることができない
かつて、自分自身がこよなく愛した空を
今は、涙をためた小さな瞳でなつかしそうに
かつ、憎しみを込めて眺めるだけ

踏みつけられた蛙は
もう二度と自分の憩いの場へは戻れない
アスファルトの地面と同化しつつある
自分のそのからからに渇いた体を眺めながら
じっとその場にたたずんで静かに死期を待つだけ

ああ、慈悲深きタム・タム ボーイよ
あなたは彼らのような辛い思いを一度でも
噛み締めたことがあろうか

息が今にも絶えそうになりながらも
か細い、小さな声で思いを訴える彼らを周りの者は無情にも踏みつけんとする
なぜならば、周りにいる彼らは冷たい氷で覆われた透明な壁なのだから

もし、一筋の光が彼らのほうへ差し込み
それらの壁を溶かし込み
弱者に手を差し伸べるとするならば
鳥はもう一度、自由な空へ飛び立ち
蛙はもう二度と戻ることがないと思われた
わが古巣へ帰ることができるであろう
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