バス待ち/AB(なかほど)
 
  

陽だまりの停留所に
車椅子の老人


声かけようか
たとえば
今日もお陽さん輝いていますね
でもすぐそこには冬将軍で
そのブランケットは暖かそうですね
サングラスがずれてますよ
とか やめとこ

22番は
まだ来ない


私は22番を待っているのだから
こうして体を少し揺らしながら
待っているだけでいいのだ
なにも
若者に気をつかって
いつもどおりで
時間どおりじゃあないよなあ
なんて笑う必要もなく
時刻表を見る必要もない

22番は
まだ来ないのだから


やがて22番が停まり
若者が先に乗り
一度だけ振り返ると
老人はやはり
居眠りのふりをして

陽だまりの停留所


「花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように」より

   

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