廃ガラス/リリー
 
 
 さっき山の端に消えてしまった冬茜
 建ち並ぶ商業施設の脇を流れる
 堂の川
 吹きつける風でこまかい波紋が
 わずかな灯りを掬って沈み

 並木の枯枝にとりのこされた
 烏のひと鳴き
 コンクリートの短い橋で
 重い時刻にうつむいて足を止める
 今日の小さな疲れが
 溝川に潜む魚のあぶくとなって
 ピカッと、廃ガラスの粒子の様に
 光ったかもしれない

 五十路ゆく友と
 時を経て逢うたびに
 互いの容貌は凋落しても
 あかるい思いを噛みながら語らえば
 また夢もめぐらう
 それでも詩は
 心虚しくする日々の空洞でいつも
 わたしを待っている
 
 
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