ちりぬるを
ひだまりに さらされてゆく くちびると 動けずにいる ぼくの両足
すこやかな寝息としろくなめらかな腕 みだれうつぼくの欲求
水を抱くように おもいだしている 髪の毛 指先 かさなるため息
ありがとねの声が耳からはなれない さよならもう わすれるね
誰をみて誰にふれても かまわないけど ぼくのことは 違う目でみて
つけたゆびのあとはうすあお桃いろはなほの不在をつらぬき通し
おだやかな寝息はうみをつれもどしくち元にふるいはなをかざる
つぼみさへかたく締まつてゆめを見る足音とほくはるは逃 ....
うその花にも匂いがやどりすあしをみせるこまかい蝶々のむれ
うす皮をむくようなはだとうす皮をむくような思春期の目つき
曇天のむこうがわには陶酔とうすあおがともにめくばせてさく
さか ....
肌やきもちが敏感になって あしたにはきえてしまいそうな夜
長い髪がどんなふうに垂れるのか その白い背を 思い描ける
椿にも桜も菊も石南花も 指先のあとがこゆく残る
つつじから蜜を吸いとる口元が こぼれるようにあまく光った
胸もとはこぼれる花弁の花水木 火照る頬には蝶々が咲く
風が光れば花たちは咲き笑い きみが笑えば空が高まる
日ごと濃くなる ....
どこにでも 君のあとが のこるのに 僕たちの夜は どこにも もうない
蛍光灯にむらがるちょうのりんぷんをあつめて宙をとぼうとしている
青い夜 赤い欲求 白い汗 真っ黒い僕 透明な君
とじられたみじかな睫にさす寝息晩春をひきとめている夜
やわらかな毛布と肌の中間にうすくかく汗で季節をしる
曇天も蝶々もみな教えられることなく去り際にゆく
あまおとに そらにむらがる あまおとに たましいを忘れ たましいを忘れ
はねかえり つらなる円を 欲すれど あるのは怠惰な 水溜まりのみ
ひとことに ふとしたしぐさに まなざしに 弱い ....
しおからい肌のおもては なまぬるく うらがえしてもどこか遠くて
たゆたゆと零れおちゆく蒼いとき つめに絡ませ朝をむかえる
すべりおちのたうちまわる欲情を 涙のようにみちびく指さき
肌を知りささやきを知り朝を知り 自分の皮膚の分厚さを知る
藍をぬぐしろはあさを見 みぶるいし夜は反転しぬるいねむりがふる
薄蒼い窓いちまい向こう側にはじまる新しいきょうに馴染めず
柿ノ木がすきだと言って 柿ノ木に なってしまったあの娘を想う
明け方の眠りにちかい藍色に 背中をむけて何度もふれあう
やわらかな寝息の燈る喉元に 肌近づけて我が息舫う
臍の緒のかすかな匂いと乾く色 掌のうえで吹き飛びそうな
汗ばんだ額に張り付く細い毛は 彼が残した最期の祝福
いくつかのいろをならべてかきまわし 何も塗らずに雨をながめる
ためらいを 固めたような白い空 てるてる坊主を逆さに吊す
はげしさもやさしさもせつなさもなく とまどう甘さばかりが目につく ....
みず玉の瓶のむこうの夕立と 風をとおした君の目元と
君は右僕は左を濡らしつつ ちいさな傘をでようとはせず
ためいきを午睡の風に結び付け生温いまま季節交わる
水溜りにかがんだ君のう ....
汗ばんでためらう肌の距離をよみ 計らうようにつよい夕立
ため息を晴天に変え 風鈴のちらりと鳴れば緑濃く揺れ
ひと筋の汗がもたらす扇動に僕の背中は夏より暑く
抜けられぬ肌いちまいも超えられず「苦しい」と笑う夏 午前二時
スプーンを傾けるその角度さえ愛しいままに百年が過ぎ
カーテンの揺れるはやさに追いつけず取り残されて百年が過ぎ
指さきにのこる温度をたぐり寄せ記憶撫でるだけ百年が過ぎ
晴れわた ....
晴天のすみわたるほど影は濃く 向き合いながらも表情(かお)わからずに
晴天に雨を呼ぶこえ 薄暗い部屋で待つ指磨いた首筋
晴天を裏切るような白い肌 夕暮れどきには空より染まる
海よりも空よりも青い夜を泳ぐ 果てたからだは一つによじれて
もう一枚、もう一枚と 剥いでいく 辿り着けないことを知りつつ
ずるずるの皮膚を引きずりゆく炎天 砂で身体を洗われるよう
まなざしが果実のように熟すなら 情も枯れゆき朽ち果てるのか
鰯雲 終い忘れた風鈴がからからと鳴る かなしいみたいに
別れぎわ惜しむ間もなく日は落ちて 寄り添う影に夜は優しく
こうばしい背中にのこる夏の日を さらさら撫でて響く虫の音
ためらいを波打ちぎわでうけとめて こぼれる前に飲み干す二人
えりあしに新しい香をしのばせて 季節のように抱き合う初秋
組んだ手を解いては笑いまた組んで ほろりと落ちる金木犀
ぶどうの実みたいにていねいにしてね 薄い皮膚のしたは滲んで
くち元におだやかな笑み 午前2時 夢をみながら 夢みせるひと
体温のうら側を抱き合うふたり せまい寝床は寝息で縺れて
遠い夢にひとりきりでたっている 澄んだ海辺に干されるように
やるせないものばかりを盗んでいる ほつれた糸を引き抜くように
後ろ手に楽器を鳴らすようなもの わたしを見ないひとを抱 ....
あの星が流れたらひとつ捕まえて 君に会うまで隠しているよ
朝靄の薄雲に似た恋情の 移ろい易くもいちめんに咲き
よぶ声のかなたに響くまなざしにあけゆく空の眩しさをみる
尖端の白きをつかみ撫でまわす手くびの技に鐘なり響く
空白をうめるが如く手を合わす かじかむ指にからむ願いを
もつれあう六度八分をもてあまし 外を見遣ればふりつもる雪
夜と似た静寂をまちわびている 恋情の背にふる初雪よ
夢の続きをなぞるように傾いて空白のつめたさに日がさす
からからの空気のなかにいきものが 二人そろって息を殺して
広大なシーツの海にひとつの身 あたらしい日に寝返りをうつ
体温のいきどころ無くそれでいて冷えるばかりの指とつま先
「海をみに」 だからといってくちびるがこんなに冷えるわけないじゃない
ひと言の代わりに振った手のひらを降ろせずに一人振り続けている
わがままを言えば最後になるような気がして噛んだ唇から血
季節はずれの立ち枯れの薔薇の木と 似た者どうしで冬の日に二人
日が落ちて からむ寒さにあわす両手のひびわれがいつもより深い
何もなければよかったね なにひとつ持たずにここにいられたら
....
わらうしかなかった なんでも持っているあなたのひとつになれないままで
誘う手のまにまにのぞくかなしみよ ひとりよがりの罰か褒美か
花びらははかなくきれいうすいほど おんなのことは少し似てるね
その間際 はかない音を散らすのは つぼみと脱皮するおとこのこ
女ならひとりでに咲くものかしら 触れられることも触れることもなく ....
風は蒼 夜が海なら君は白 どこへも行けない絵筆が僕だ
桃色の裏側に打つ純情を 絞りだしたら赤黒い澱
むすびめを ほどいてむすび また解く 甲にうずまく 視線の熱よ
はじめては さいごのように あとをひき 最後のときにはしることもなく
かなしみを束ねたように咲く春と 曇天に鳴るあさましい胸
振り向けば 散りながら咲く優しさを 知っているから前しか見れない
はるあさく みどりをまつは 黄卵と よるのせにさく ふくらみゆく月
あかるさに開いていたのはこころでもからだでもなく精神でした
マニキュアが剥げちゃったから帰らなきゃ 爪のさきまであたしでいなくちゃ
ふりむいて、そのときにまだちゃんといて 先に終わるな ....
うす青は群青の背に程遠く 終わらぬ恋の浅はかさを見る
はじめから終わっていたと知りながら引きずるように肌をぬらした
すべてなどあってないようなものだから千切れた胸に世界を仕舞う
....
内臓の
ころがる音に
群がって
肉が み し
み し
ゆがみはじめる
ばかだから
わからない か ら
言って
....
かなしみは波打ち際でさざめいて泣き砂を踏むひとの無力さ
知ることの無力さを知り無味を知り知らぬままいる恐ろしさを知る
上下する正しさのある胸のうちに 隠し持つ劣等の甘く腐れる
寂漠の砂地は濡れずざらざらとながれる雨の無情さ ....
根腐れの根だけ残して摘み取られ 花だけを見て「咲く」を愛でられ
くみふせて あせばんだのち からからに かわいたのどに すべる液体
ささくれてささる六畳 古畳 色の移りは 抱き合うかたち
ため息はしめる身体を押し出して 指の先までしずかに浸して
....
ちか道を知っているけどおしえない 君との時間が縮まるようで
はえ際に濡れるうぶ毛を ひそやかなものにたとえる ばれないように
百年が経てば僕たちも街も無くなることだし 遠まわりしよう
....
自分とはぜんぜん似ていないものを あつめて暮らす 花とか夢とか
影の濃くなる季節には男物のシャツを着て立っていた君
アスファルトさえ色づいて騒がしいから両の耳ふさぎたくなる
日に一個積む諦めの白々しくかがやく三百六十個目
這うように日々をゆく目の多きこと嘆きながら同じ目をして
熟れすぎた花がはじけるとろとろと下着をつけない肌のあいだに
砂浜は背につめたく体温は胸にあつくってどこへもゆけない
こんな日に果実が海に生るなんて 咲かせばすぐに摘み取る指に
ため息がちぎれる夜に正座して冷蔵庫からの明かりで本読む
息つぎの仕方をうまく覚えられぬうちに夜はどんどん深まり
静謐をやぶる術をしりたくて肌を押したり引いたりしてみる
ざらざらの ....
うんと薄くつくったカルピスは母のワンピースに似て少しかなしい
そのかわり僕のなまえを覚えてて 僕がきみを忘れるかわりに
「海は嫌い、夏も嫌いだし、晴れも嫌い」 僕が何よりすきだった君
わがままな人ほど白が似合うのだと知った 季節が変わる音がきこえた
じりじりと焼く鯵の身の焦げ方にわたしの罪をひっそり重ねる
降り出して濡れゆくまちで動けずに 空があまりに重たくあるので
なにもかも違う ここではなにもかも違う あなたが過す場所とは違う ....
傘も無く着る服もなく靴もなく さびしい右手と左手がであう
雨降りの日には出掛ける少しだけよそよそしい町で手を繋ぐ
あまりにも遠くて帰れない夢を手招きしているさびしい右手
みとめよう 夏は終わってしまったし あなたをぜんぜん愛してなかった
溶けているアイスクリームの傍らで 吹けばとぶような恋をしていた
場所なんてかまわなかった 季節なんて名前なんてかまわなか ....
開け放し砂漠のようなせまい部屋 砂糖の雰囲気を探してる
二人して抱き合うふりして寄り添って あつめたものはばらばらの穴
痛い痛い雨がやんだら堅い床踏みつける指すこし緑の
眠る人の横で研いでるさみしい女の匂いや色や言葉や
夜はまだ明るすぎるし広すぎる体が重くて朝を見れない
優しさのはりつく頬を撫でた ....
「ちりぬるを」 いろはにほへと 、でも君は死なないだろう それが君だろう
さんかくにだまって座っているそこの不安ちゃんたちこっちおいでよ
どれぐらいさみしかったら死ぬかなと観察しているなかなか死なない
諦念はナプキンにくるみデパートの女子トイレへと捨ててきま ....
かたまったぼくのたかまりたかまったきみのからまり夜のまにまに
生ハムのあぶらのようにこびりつく濁る合図とするどい刃物
明日にはしなびる青の予感抱き ちんげんさいとふたりでキッチン
うつむせのしずかな背には薄い毛となめらかに降るみじかい死たち
閉じられたまぶた、唇、深い息 明けがたの音が通過していく
触れられず 逃げも進みもできないぼくらを死たちはじっとみている
....
つやつやの爪いっぽんに一つずつそれを当然とおもうかなしさ
クッキーの箱に描かれたちょうちょたちくらいの不自由さなら欲しい
つめたさは皮膚よりさきに目からくる すばやく、ゆっくり、的確に
からからにかわいた猫とはす向かいぬるくて不味いビールを開ける
背伸びして届かない空、 十二月、とり残された犬はびしょびしょ
ベランダに並んだ鉢植 ベッドにはただしく冷えた子どもがふたり
赤色を重ねて空し十二月 噛み砕かれた夜を吐き出す
朝焼けと冷えた砂糖と緑の手 チャイムは一度も鳴らなかった
死にかけの卵を袂に温めて知らない男に強く抱かれる
あるだけの星をあつめて飾る身をうかべる水は暗く濁って
強くなる光をまともに受け止めてだんだん薄くなる子どもたち
あたらしいかたちに明けた一日を 一日かけて同色に塗る
ささくれを剥いたところで息をつく (これがいつかの咎だったなら)
おちてみて気づく深さの泥沼の いつか自分でそそいだ泥だと
あわれみを十本のゆびにたぐらせて いい子 いい子 と その羽 ....
つかまえることなどできはしないのに つかまることはひどくたやすい
はずかしいことばかり言う あさもよも なげだすつもりの つめたいきもちも
見えるはずのないものをみて みなければならな ....
陽と月の長さをわけるいとなみを あしをそろえて外をみていた
群衆のみている色のはんたいのいちばん端に紐をゆわえる
日のくれるながさに臓のかたむきをあわせひそめる影のようになる
う ....
ためらいをすすいでもなおしがみつく なめらかな背にきょうも日暮れる
ひとの手でひらかれてなお閉じている 体から出る術を知らない
吊るされたカーテン わたしはここにいて光の落とす影を見ている
まちわびて平たい波のゆく先は きみの白さへ届くだろうか
いち日にひと粒と決めた涙たち 青ざめている731粒
泥を食べ泥に抱かれて遠くまで来たはいいけど曇天の海
ぬかるみに口づけをする三月晦日 とう‐かい とか言う言葉を浮かべ
みず色を捨てられぬまま成人し 春をうっては剃刀を買う
上等の夜と下着とかみそりは薄っぺらいほど ななめに刺さる
春の背に流れていたのが情でなくただのいつもの赤い血だったら
甘い手で引きずり下ろして見た空は 星も月も果て灰色の海
かわりめの溶けた若さを積む指はざらざらひかりなめれば甘い
幸福のかたちをつくる他人の手 呼ぶ声のする高く黒い手
ぬるぬるとひかるひかりの影を浴び 空 いちめんに蔓薔薇の咲く
ふりやめばななめに濡れた傘をもち 地図の無い身を倒して五月
くちづけの無い街に居て想うひと 鏡にうつる身は星だらけ
春過ぎて歩きつかれて血を食べて 想いだしては想いだされて
はれあがる青ざめた赤のうら側で息をひそめて聞いていた脈
階段の途中で立ち止まるような恋 昇ってきたのか降りてきたのか
ふりだせばいっそ気にすることもない水を遣らずにこの花咲くか
ものいわずほどかれるのを待つふたり あやつなぎしたみはうつくしく
咲けばこそ散るや実のなる花たちの つぼみでいれば摘む指もなく
じたばたと蜜に絡まる水黽よ 飛ぶがはやいかそれとも死ぬか
なめらかな言葉をめくる指の香の 甘い匂いは罪か褒美か
ぎらぎらと夏枯れの咲くカウンター 汗ばむ肌はななめに剥けて
からっぽをからっぽで埋めからっぽで蓋をしててもあふれるからっぽ
鈍痛をめくりあげると赤蜻蛉 あしたはどこか遠くへ行こう
ふたりしてつくっていたのは絵ではなくかたちでもなく額縁だった
はじまりのない迷路に居て終わらせる術はいくつも持って立ってる
これいじょう失えるなら幸いだ まぶたにこぼれる星さえも今
きりもなく、おそろしいのは 何ひとつおそろしいとは思えないこと
....
幸福は匙で掬ったアイスクリーム みつめていても溶けてしまう
かたむいてみていた月のかたえくぼ きっとだれかがキスしたのね と
左手をすりむいたなら右側も おなじでないと真っ直ぐたてない
こぼれゆく砂時計の砂かなしくて寝かせてみれば どこへも行けず
....
ぬかるみのあかるみにふと気をとられ 忘れたことを忘れて傾ぐ
筆先に闇がぼそぼそ溜まっている 想いもないままはしるからだと
みたされて游ぐからだの陰を彫る 夕立に似た匂いの指先
さいごまで赤くならない実のなかにいっぱいにあるなんにもないたち
さか道を行って戻ってころがって恨みながらもバスには乗らない
青のしたの鉄のむきだしすべりだい ななめにういた赤錆の音
(なるほど)と(それもそうだね)と(なるほど)
(出していいよ)と(でもまだ待って)
いつまでも凍えてるわけにはいかないでし ....
しらないと言ったそばからうそになる 知りたくないのだ 正しく言うなら
こわいのは戸棚の奥の砂糖壺 ざらめのついた世界はきれい
ここからはからだを脱いできてくださいね 心も脱いじゃう人も ....
わたしたちどうしてこんなに悲しいのか 倒れながら飛ぶ鳥よりも
雨ごいはこうやるのよ見て ドーナツの穴が落ちてるはやく拾って
意味や色は流行りが過ぎて色あせて いまではみんな灰色の◇
....
自由です迷子ですから自由です あなたに触れて明日も明後日も
迷子です自由ですから迷子です ひとつ触れたらひとつ忘れる
風の日にしろつめくさを摘んで来て 雨の降るまで歌をきかせる
びわの葉に隠れてしたのを覚えてる? 分厚い梅雨の灰色の下で
乾かないとびらの前を転げてく あかい林檎と蠅と蜜蜂
どの花を食べれば会える どの花もいない人には繋がらないよ
例えばの話で塞ぐ逃げみちを 今さくかもやすかふりむくか
つめを剥く爪の転がる香ばしさ 言いたいことなど無かったのかも
立ち枯れの紫陽花程に美しく 言わなくて良い言葉を掬う
烈々と熟した夢の桃に似た 滴る目線を振り払う夜
うす昏い部屋には蜘蛛が住んでいて あるはずのない夢等を喰う
ゆがんでるはじけたプラムその先にいる あれあなたもしかして裸足?
みじかめの恋が流行ってるらしいよって 蟻が来そうに甘い口調で
プラムとか桃とか葡萄とか林檎とかなんだっていいけど悲しい ....
回転灯 知らない街の知らない手
あなたの肩の今日が溶けてく
空白の手前で気付かないように
ちゃんと落ちられますようにね
空腹に 甘いかげろう 甘い夢 コーヒーショップのにがい喧騒
あれかやし季語のない身をふるわせて
いくつも嘘をみのがしました
ふたりして春の間際で咲いちゃって あるはずのない青い花弁
うみのような体ですから波打って別れ際にもずっと濡れてる
蕾さえ開かなくなったこの部屋であなたがいなくてどうして眠るの
なぜだろうマフィンが今日はすごくかたい あした世界がおわるからかな
刻まれた時間のそとで落ち合おう 蕾、マフィ ....
かたまりを割ってほぐしてねばついて大事みたいに半分こした
愛とか愛じゃないとかで争った夜ひとつのかたまりで寝た
ため息の重さで溢れる夜を抱き
わたしよ明日こそ私であれ
語られた言葉のあとで浮きあがる 静寂 目線 寂しい体
ふれられてふれてなお泳ぐ肌 これより遠くに行けはしないね
燃えたのは夜の端、指さき、君の声 ふるえたのはそれ以外のすべて
もう来ない誰かの代わりに花を折り 空洞がまた広がっていく
はじめからないものばかりを失って 立ち上がるたびに笑う三月
夕立の跳ねて乾いてアスファルト 湿る私のおもたい体
どうしても遠いあなたと山椒の木 羽を乾かす若い蝶蝶
このままじゃ動けなくなるから行こう 猫は恋を終え 沙羅は咲いてる
なげうっ ....
結び目の緩いところで待ち合わせ
よごれるつもりでした恋だから
どうしたら死んでいけるかわからずにすり潰されて夜まだ三時
たらればの串刺し「100円」
ちょっと待て なくてもいい様な嘘を強請った
濡れたまま転んだからね血が出ても気づかないまま走りつづけた
わーいわたしにぴったりの花束だ青くて赤くて白でみ ....
紫陽花を行きつ戻りつ濡れながら 中中あかない夕暮れのドア
明日のない身と知りながら夏椿 羽根のかわいた雛が飛んでく
短夜の風を含んで消えていく
ほとんど意味ない囁きの群れ
すみれの日あなたは今もそこにいて横断歩道を渡らない
右岸には青い鳥がいて左岸には神様が居る 私ふやける
だれだって皮膚を剥いたら一緒でしょ いいえあなたの骨はとくべつ
蜂蜜をなめて凌いだ一日のうち30分だけ陽が当たる床で
底なしに冷えるからだとしゃぼん玉 愛されながら 高く飛べずに
遠くまで来たねと言うが それは嘘
散々愛して 行止まりだよ
なんにでもバターをつけるきみのくせ
そしてわたしは蝶を見つける
光から溢れ散ばる蜜の束 あの子の耳を少しゆらした
手をとめて見てほら部屋の隅にある 打ち明け話のなれのはて
清潔な指のあいだで跳ねる闇
わたしはたぶん すべて失う
いまからじゃおそすぎるねと笑うから
星は落ちるし 僕も落ちるし
春風ね どこまでいっても凡庸な
お前とお前とお前と私
笑うでしょ、君はいい子だよわるい日も
最悪な夜も 最低な朝も
運命の裾が解れる 伸びてゆく
はるか向うで か細く交わる
熱風の先にある体のかたちをした甘い嘘
甘やかな風を嗅いでる午後の庭
きっとあなたを失うけれど
くらやみのひとつもない街でするなら明かりを消せる恋がいいよね
こもれびのなかであなたが笑うとき
世界はいつも正しくなった
雨の日の花火のような恋だった
あなたのことを 忘れたかった
よろこびをうすっぺらいその胸に抱き
悲しみに痩せた背中を預ける
星の名を知らないままで抱き合った
覚悟もないのに 恋をしたから
いみなんてずっと前からのこってない「かくこと」だけがここにあるだけ
転がって火のつく指に背に頬になんどもつめたい口づけをする
七七の拍子で揺れる夢だから 五七五はきみにあげるね
....
永遠の表にバター裏にチョコレートを塗ってランチにしよう
はしってく君は永遠 僕はバター なすすべもなく溶けていくから
大好きだよ 排気口にキス意味のない呪文で飛べるながい一瞬
こんなにもどうして愛していましたか はばたきもせず囀りもせず
暗やみを拭う光を待ちわびて
抱き寄せるのは 悲しい背中
饒舌な指の間で跳ねる君
誰の歌でも誰の指でも
金色の
夢をみている うつくしい
世界があした
おわるといいね
目が覚めて失われるのは物語
燃え尽るのは安い情熱
もう一度しようと思った 間違いを
同じ熱さで焼かれてくれる?
うつぶせの君のまつ毛と同じくらい
やさしいものって他にないよな
詠んだけど書かなかっただけ思っても言わなかっただけあなたには
飲んだ嘘吐き出した嘘夜の数 囁きの音 数え忘れた
あしたからあなたを忘れて生きていくひとりで靴を履いて出掛ける
これ以上失えないっていうくらい深い夜から君は見つかる
簡単な夢を見ている 生温い浅瀬であなたが手を振っている
鶏小屋で
安易な名付け
浅い夢
散らかる祈り
深い傷跡
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