itukamitaniji[勝手に詩集『ウチュウッポイノ』] 2015年10月16日12時06分から2015年10月25日23時55分まで ---------------------------- もしも読んでいただけるのならば、8つで一つの詩というイメージで、順番に読んでいってください。 ---------------------------- [自由詩]プラネテス planetes/itukamitaniji[2015年10月16日12時06分] プラネテス planetes あれは遠い日のこと 僕らは真夜中に 街を抜け出して 綺麗な海へと出かけた 満天の星空に 僕らただ黙り込んで 何処にも居なくて 誰でもないフリをした 流れ星見つけたよ 指差す暇も無く 生まれた刹那に すぐに消えてった  もう輝かない石ころは 海へと放って 新しい星になった それは誰にも見つけられない 六等星の秘密のポラリス 君だけが位置を知っている あれは遠い日のこと それぞれの旅に出た 何処にも隠れれず 僕は僕になった 流れ星気付かない 見上げる暇も無い 生まれた意味は すぐに見失うのさ だからこそ輝くのさ 誰かに見つけてもらいたくって 誰もがきっと彷徨うプラネテス 自分と言う名を与えられて 失った記憶もちゃんと 長い旅を越えて此処にある 六等星の秘密のポラリス 君だけは位置を忘れないで 君だけは位置を忘れないで ---------------------------- [自由詩]イグニッション ignition/itukamitaniji[2015年10月17日13時04分] イグニッション ignition そしてまた君は 飛び立つ宇宙船に手を振って立ち尽くした また会おうね。って約束も 端から果たせないと諦めてる そして頭上には 何事もなかったように空っぽが戻ってきて 小さな君を置き去りにして 世界に蓋をして閉じ込めた さよなら宇宙船 君は地べたを這いずり回っては どこへも行けない理由を 必死に用意するのさ いつでもポジティブで元気な 友達をいつも誉めて称えた 君はプラスの影に紛れて マイナスになってかくれんぼ いつでも勇敢で人気者の 友達がずっと羨ましかった マイナスばかり群れて 掛けてプラスになれれば世話ないけど もうダメなんだ。とか 諦めてしまおう。とか 君が君自身を陥れようとする 呪いの言葉たちも 実は君を外の世界へ 解き放ってくれる一番の推進剤 燃やして灰になれば マイナスもプラスも区別はつかないぜ ここに居たくない。って でも何処へも行けやしない。って 君を押さえつけてた 矛盾という名の重力の反動こそが 君を外の世界へ 解き放ってくれる一番の原動力 空はいつだって開いている 探しに行こうぜ この広い宇宙でたったひとつだけの 君の名を冠した星に ---------------------------- [自由詩]ストレイスター stray star/itukamitaniji[2015年10月18日19時30分] ストレイスター stray star 似たような願い事ばっか おんなじ棚に飾られるなんて うんざりだって 凡人なりの誇りを掲げても 寝転がって見上げた星空 期待なんてしちゃいないけど 流れた星に向かって 心の中で手を合わせてた あの日拝んだ流れ星は きっと君の為のものじゃなかっただけのことさ 誰も彼も笑い飛ばす 君の夢を叶えるのは 流星雨の群れを離れ 闇夜を泳ぐはぐれ星 安売りの感動に群がり おんなじ顔で泣き笑うなんて 出来なくて 誰も聴いちゃいないような歌を歌う 自分という物語には いつだって期待をしていたい 例えばそれが 思わせぶりで終わり続けても あの日打ち切られた物語 きっとまだ終わってなんかいないだろう 誰も彼も見向きもしない 君の歌う新しい歌も いつかきっと分かってくれる それがたった一人でも 誰も彼も笑い飛ばす 君の夢を叶えるのは 流星雨の群れを離れ 闇夜を泳ぐ名前の無いはぐれ星 ---------------------------- [自由詩]ミルキーウェイ milky way/itukamitaniji[2015年10月19日19時38分] ミルキーウェイ milky way この川は誰かの涙 止め処なく流れる悲しみ 水面に浮かぶ星屑は 叶わず散った誰かの願い 掬おうしても 指の隙間から逃げてゆくの 彼方の君の笑顔さえ 思い出せそうな綺麗な夜には 心の痛みを歌にして 遠い空へ向けて巻き散らした 船を漕ぐ 向こう岸まで きっときっと 渡り切ってみせると 約束交わして 過ぎ去った日々 絶えず絶えず 僕は君を目指して 暗闇を泳ぐ 流れ星 この雨は君の涙 止まずに降り続く悲しみ 雲間に隠れた星屑は 叶わず散った僕の願い 強い風が吹いて 壊れてしまった僕の船 ずっとずっと 進んできたけれど 約束残して 消え去った光 いつか叶えと 強く願ってきたのに 向こう岸は 遥か遠く 悲しみは冷たく 沈まぬように水を掻く それでもそれでも もがき続けるのだ 願いに底は無い 天の川よ どうかどうか この思いだけでも 君の町に 降り注ぐ星となれ ---------------------------- [自由詩]コールドスリープ cold sleep/itukamitaniji[2015年10月20日20時29分] コールドスリープ cold sleep 足元から少しずつ 冷気が這い上がってくるのが分かる 滑稽なことだ それが自分の温かさを思い出させてくれる 丸い窓には 吐き出したため息が凍り付いて張り付いた その向こう側から 誰かが覗き込んでいるようだ 長い長い旅に出る 僕はここに寝転がったままで いつの日かちゃんと 目覚められますようにって 願いを込めて目を閉じるよ 心臓の音がよく聞こえる 僕が生きているのは確かだ しかしそれももうすぐ 聞こえなくなってしまうんだ 僕の身体は凍り付いて もうすぐ動かなくなってしまう たったひとつ その真ん中に温かなままの心を保存して 長い長い旅に出る 僕はここに寝転がったままで いつの日かちゃんと 目覚められますようにって 願いを込めて目を閉じるよ いつの日か こんな僕でも必要になる時が来るなら その時は また僕を起こしてくれよって 丸い窓の向こう側に居るであろう 君に言う 僕と同じ姿形をした 君に言う 僕の身体は凍り付いて もうすぐ動かなくなってしまう たったひとつ その真ん中に温かなままの心を保存して 僕はここに居るよ ずっと生きたまま ---------------------------- [自由詩]クレーター crater/itukamitaniji[2015年10月23日18時23分] クレーター crater 懐かしいね ここは君が終わった場所 同時にさ 始まった場所でもあるんだ 信じられるかい ここに確かに君は居たんだ 最後の最後まで 色んなもの守ろうとしてた 消えないでよ 何度も空に放った 祈りは果てしない 夜をいくつも越えたけど 静かだった空を 見たこともない光が 強く照らして とても綺麗だったけど 懐かしいね 時間は巻き戻ってゆく 終わることのないパーティーさ 騒がしい毎日 歌う意味を ここで確かに教わったんだ それは昨日のように 思い出せるんだ 砂になった記憶を 手のひらで掬って 風の中に散らせば まだ無邪気な歌が聴こえる お気に入りの場所は 今までたくさんあった いつだってそう お終いには全部壊されて さようならさ 降り注ぐ星に見とれてた それは君に 大きな穴ぼこを残したよ 今でも この胸に いつでも 痛かった記憶は 少しだけあるけど いつだってそう お終いには優しさだけが残るの ぽっかり開いた穴ぼこの淵で 歌ったんだ さようならさ 降り注ぐ星に見とれてた そして君は 新しい旅に出たんだ ---------------------------- [自由詩]ラッキースター lucky star/itukamitaniji[2015年10月24日23時20分] ラッキースター lucky star 暗闇にまぎれて 人知れず夢を見る 誰にもバレなきゃいいやと 喋らないで終わらせる ひっそり心の奥で 勝手に決着をつけて 後に残るものは空しさだけ それが積み重なって 取り囲まれて途方に暮れる頃 「こんなはずじゃなかった」 そんな短い言葉が はじめて音をまとって零れた そして君は歩き出す 空っぽの心に たったひとつ誓いを詰め込んで 誰も気付くことはない 君だけの戦いが ここであったこと にぎやかな街の向こう側から 聴こえてくるのは 君を知ろうともしない 馬鹿な奴らの声 「君は君のままでいい」 なんて誰かが言ってても もう胸張って 信じてる場合じゃないのかも 優しさばかり着飾った うわべだけの言葉だけで 簡単に片付けられるような 日々じゃないよな ほらもう夜は明けはじめてる 君だけが見届けた終わりとはじまり 「君は君で笑っていて」 そんなきれいな言葉も もう擦り減って 頼ってる場合じゃないけれど 心の奥に最後まで ほのかに残る温もりを 抱きしめてまだ歩けるよ 君だけが見つけた光の射す場所まで ---------------------------- [自由詩]ベイビースター baby star/itukamitaniji[2015年10月25日23時55分] ベイビースター baby star ひとり部屋にうずくまって 灯りという灯りをすべて消すと 明るい世界に すっかり目が慣れていたせいで その刹那 僕は自分の手のひらの位置すらすぐに見失った 僕はここに居ながらにして 宇宙へと旅に出たのだ いわゆる本当の僕ってやつは 何処かに置き忘れたっけな かつて暮らしていたあの街で 雨粒に濡れて震えているか もしやあの人に預けたまま 返してもらってないのかもしれない 邪険にされてないとよいが 願わくば残っていてほしいが 人は生きているだけで 与えているのだという ともすれば それは受け取っていることと同義だ それならば 僕は僕が受け取ったものをどうしたのだろうか いつかあの海で見上げた夜空 星々は犇めきあって輝いていた 互いに寄り添い合っているように そんな風に見えたけど その実きっと 星々の間には途方もない隔たりがあって 互いに出会うことなど 以ての他ないことなのだろう 繋がっているように思えて 全く以て浅かったのだ 誰彼の名がゲシュタルト崩壊し始めた そこではじめて気がつく 僕らもあの星と一緒なのかもしれないと たまらずに僕は暗闇の中を探した 何処かに光はないものか! ディスプレイに散らばるSNSやブログの中 何処かに光はないものか! 片付かないままの引き出しの中 何処かに光はないものか! かつて書きなぐった詩集ノートの中 何処かに光はないものか! 何処かに光はないものか! 人は生きているだけで 輝いているものなのだと ともすれば 僕だって輝いていることと同義だろうか どんなに与え続けても どんなに失い続けても 決して完全に消えることはないのだ そんな光のことを 僕たちは"心"と呼んだ 生きとし生けるすべてに宿った 途方もなく広い宇宙に浮かぶ 微かだが確かに輝く赤子の星の名だ ---------------------------- (ファイルの終わり)