小池房枝[小池萬草庵] 2011年1月31日21時21分から2012年8月13日12時23分まで ---------------------------- ---------------------------- [俳句]アバウトに睦月/小池房枝[2011年1月31日21時21分] 山笑う数多のはだか椿の湯 梢にて野鳥のふりですずめチュン   冬型の気圧配置の大海嘯 屋上屋さらに重ねて霜柱 一日を終えて夕日に沈む富士 土曜日は身のうちに海をいれに行こう   天心の月下明日のパセリ摘み 葉牡丹をぱしゃりと打って牡丹雪 手のひらを雪に開いてヒイラギナンテン 松の葉の一本ずつに日の光 美味しいね小松菜しゃりしゃりウサギ二羽 目を閉じて開けていっそう青い空 首都高にワカケホンセイインコかな 不忍の白鳥ボートにゆりかもめ 初めての櫂をこぐ子と父の声 おおどかなオリオン街に涅槃像 左義長に出でませ大王具足虫 かじかんだ手をかざしてみるスイートピー スイートピーあふれてメトロの花屋さん 夕木立小鳥はみんなシルエット 四十雀だろうか梢を渡る声 越冬芽ふくらんで春はマッチ棒 火球して空ガッツンと鏡開き どんぐりも踏みしだかれて色あたらし 薔薇おいで来年の春はここで咲け 若布干す浜いっぱいに大根干し   まだ赤い白梅のつぼみ初詣   めでたさや九割引の大鏡 去年今年海から昇る大柄杓   星走るアマツキツネの嫁入りの夜 初ペットボトルロケットゆるく墜つ   深呼吸胸いっぱいに蚊の柱 カワセミの飛び去るときの背の青さ カイツブリ深々潜る冬の水 冬日の田ひこ生えももう刈り取られ 花よりも枝瑞々しき春の梅   晴れ上がる前の宇宙の色を思う 直角を三つ合わせた柔らかさ 牡ならば雄であろうに冬牡丹 ぽ、とだけ言って指差す。咲いている パソコンも百年経てば付喪神 年寄りがロウバイと庭に佇んでいる ぷちぷちと馬酔木は冬も慎ましい ユキヤナギ緑の硝子の粉を噴く ぽ、ぽ、ぽ、ぽと、言って指差す。ロゼットを   チューリップ寒いねスリッパ履いといで コクリコもうたた寝こくり、こくりとね ヒヤシンス冷んやり浸水 春の水 マンサクがまず咲く河川敷畑 這い回る白菜 黙認耕作地 砂利と雪と諸ともに崩すシャベルカー キセキレイ氷の水辺に翻る 入日野は雀も金色神々し モズ、君は雪野に何を見張ってる?   胸元の羽の白さを散らす空 スピカスピカ寒気にそっと震えてな 初春を知って無視してホトケノザ モクレンが何かの灯り点してる 木々はもう笑ってて春は煙ってる 初富士の稜線空へ翔けあがる 釣り人に少し離れてカイツブリ 足元の水の日向に稚魚の群れ さみしさもさみしいらしい またおいで モニターの「鷹女」が「魔女」に見えました ---------------------------- [俳句]あらうんど如月サウンド/小池房枝[2011年2月7日23時50分] あら、雪ね。今年最初のヒヤシンス   この道のトップノートは沈丁花 ふんわりとパニエのおしりカイツブリ 自販機の青を覆うほどミモザの黄 ヒメコブシそろそろ秘めきれなくなった? 夏蜜柑ごろごろ落ちてる冬の道 夏蜜柑ママレード炊く冬の部屋   さくさくとリンゴの匂い食器棚 西風(ゼフィルス)と東風(こち) 春風の西東 小鳥たち揺らすな揺れるな杉木立   春は居留守コゲラこここんノックする アネモネを一輪胸の風穴に 冷たくて咲き出せずにいる沈丁花 ラティメリアうろこの一つに透かす空 太陽は春霞の果てスターサファイア 詩人たちサリバン先生が足りない 潜るカモ潜らないカモ光る河 石の岸辺数限りなくハクセキレイ 風をはらんでゴミ袋海へ駆け下る 新しい橋脚の描くレイライン 細波の川面に散らばる千の月 春一番東京ドームにインカの蘭 春一番かご一杯の夏みかん   野菜用プランターにて亀を飼う 寒桜今目の前に輪掛本青(ワカケホンセイ) 焚き火した夜は熾き火の夢を見る 菜の花や東の地平・西の永遠 グラン・フェッテ・アン・トゥールナン タンポポは 背を山にあずけて安心梅が咲く スミレ隅に隠れてないで出ておいで 全て無視 冬も春も今もクローバー 先駆けの一樹咲き終え梅満開   片羽の蝶あやつって海の上 赤い実はまだ無くハウスは花畑   ハーレーの一群三浦でイチゴ狩り 部屋の金魚を代々タリーといいました 海恋し私の耳も貝の殻   銀河ネットワークで歌えよ初音ミク 雪は天からの手紙だ長門有希 コシヒカリこしひかるなら蛍だね ヴィーナスは 暁 降 (あかときくたち)に君臨す 北方に臼尻という漁港あり 家の跡白梅と車庫のアスファルト さかしらなましら春野をかけめぐる 滅びても滅ぼしても尚好奇心 モラン踊れ妖精の輪に霜柱 如月の午前の光のヘカトンケイレス オオイヌノフグリ真っ青な空の底   沈丁花 日向の外にも咲きだした どっさりと桜 八百屋の桶は緑 ウメかモモかサクラか名乗れよその蕾 クリスマスローズ馬酔木の足元に 甘やかな鈍器 飛び交うチョコレート 野点にて茶釜に化けてはいけません ソラリスのプロトコル永遠に待機中 アミガサを背負えばあなたもオトモダチ 夏の豆催花雨(さいかう)に今は散るエンジュ 一つ出たホイのよさホイ梅の花 海棠の新芽バルタン星人のチョキ 新井素子 草薙素子じゃありません 豚の角煮食べたいな土と霜柱 じゃがいもの新品種名フォボスです 教えると数える不思議に字が似てる 一冊の隅にひそりと金星樹 ---------------------------- [俳句]天晴れなエイプリル/小池房枝[2011年4月11日23時33分] 春の海子猫ほどある雨虎(アメフラシ) 柔らかな果肉の真紅いちご狩り カンカン石小網代神社に摂津から スナフキン桜とともに北上する ニョロニョロは葉桜とともに現れる 桜ほんの一瞬モランが触れていった 桜ほんの少しおさびし山もピンクに 花よりもムーミンママのお弁当 鯉のぼり川いっぱいのタルチョかな 山笑いおさめて安らぐ頃の慈雨   俳人の文字をほどけば人非人   受けとめて零して光のチューリップ 子供らのいない校庭春休み 鄙の駅スイートピーの花ざかり   ツキミソウまだ昼下がりまだ四月 クレヨンの緑をもっとくれと風 満天の星を従えて太陽 花びらがとよもす地面の音かすか 億京垓恒河沙那由他の春が降る 黄道光天使の梯子林立す 月において地球はいつの季語だろう 霾る日コーンスープの昼下がり   風、騒ぐな。部屋には入れてやれないよ 強風につき風発はお休みです キツネおいで河原にネズミを殖やしとく 桜草ひともと野生か逃げて来たか 家ごとにさくら枝垂れる一部落 水道管破裂ゆきやなぎ噴き上がる 濃き薄きこきまぜて春河岸段丘   一千の題名だけの物語 ねぇリヒト、ひかりはいつもひとりなの? 留守と言へ/ここには誰も居らぬと/詩人は 地獄にもさくら極楽にもさくら 満開のアンブローシア八重桜   春されば速贄もはや花の中 蓑虫をまとめて隣家の隅におく 雨の日のレイラインゆくライラレン アスファルト境いに噴出するスミレ 花腐し花の豆腐が出来さうな 春の氷雨さくらを抱いてみたくって   ゆずり葉の春はらはらと散る葉音 雨水吐累々花の堆積層 春寒し準急はるひ野駅通過 花筏オタマジャクシの群れの屋根 花びらが点描してくアスファルト シリウスを一番星に八重桜 暮れ残る空青い空暮れてからも 十重二十重八重の桜の峰に月 薄紅の縁取り穀雨の潦 花びらが花びらのしとね降りしきる 一斉にひとひらずつが舞い降りる 花びらに雌雄があったら番うだろう 御衣黄か鬱金か今年も知らぬまま 花一房落ちていました折っていません オフィーリアの小船遥かにも桜かな 月光のための手のひらハナミズキ 雨降ればカメは喜ぶ歩いてく 薔薇色の中和滴定昼と夜 街の風天源の風リサイクル 足裏で陽を指す亀のバスキング 辛子菜の岸辺の黄色にごり水   花粉症の真っ白なマスク鮎解禁 鎌首をもたげてひそりマムシグサ 花見好き桜を見ているハナミズキ 水を得て花がまた開く ---------------------------- [俳句]ゴースト、たぶん五月の幽霊/小池房枝[2011年5月24日22時36分] 光あれ暗闇もあれビッグバン 天津キツネ二尾を伸ばして駆け抜けた 二億年メリーゴーラウンド銀河系 「アミノ酸あれ」そう云って海に陽が射した 「午後の恐竜」地球カレンダー閏秒 「午後の恐竜」地球カレンダー新年好 たれぱんだおいで素甘を蒸しておく 晴れの国水面の波紋夕まずめ イルカ供養石碑ヒルガオ咲く浜に 海峡に白きひとひらこのフェリー 山深く遠く高みに泰山木 枇杷の実が遅れて熟れる北斜面 梅雨入りとともに今年も夏椿 春の花すべて腐してさみだれる   犬散歩しっぽくるりん雨上がり   カプカプと今年も笑えクラムボン 花信風終えて立夏に百花かな こどもの日こどもらは留守いい天気 休みの日学校兎は小屋に二羽 NLP真昼間っから日曜日 ふうわりと雲の羽衣かぐや月 酔うて赤き李白の大火アンタレス 寝る前に羊が一、二、山頭火 差しいれて腕を斬られてみたい葦 はしはしと風と水とが石叩く 川幅の真ん中の水を飲むツバメ 動かぬ鯉川は流れてるはずなのに 葦原に角ぐむ葦たち背比べ 更衣もう/まだ五月 着重なり   ツバメ五羽誰かがまとめて投げ上げた トランペット川ひとつ越えてやって来る 梶を切るミサゴ尾羽を震わせつつ ドップラーシフトバイク来てバイク去る コクリコが真っ赤なままで春が散る 俯いて濡れてるジゼル沙羅の花 雨晴れて星空を開く庭石菖 第四期始祖鳥のようにオナガ跳ぶ 幻日や中也の生地湯田温泉 環天頂アーク山頭火の空に 聞こえてるかパラボラキノコ星の声 キイチゴや小学生の帰り道 桜の実だれか散らかしたマッチ箱 桜しべ身ひとつになって身を投げる 桜の実こつんこつんと風のたび 桜しべ肩にコツンと花梗ごと 暮れ残る万朶 緑の衣通姫 待ち合わせイルカパークで雨の日に   白藤がニセアカシアと咲いていた もうずっと主は留守ですホタルブクロ 花ばさみ持って茨の河川敷 こんな風に空からあふれる水もある ストリーマー ステップリーダー 天のワルツ 雨音も雨もさえぎるアスファルト 雨水吐(ウスイバキ)ばきばきざばざば水を吐く   青海波 真縦の龍鱗 甕覗き 青海波 甍の波と雲の波  颯々と立夏 眼状紋の群れ さざ波に 触れ返す草の細き穂(すい) 遠近(おちこち)に木漏れ日 微睡みかき混ぜて 種々(くさぐさ)の木霊いつしか異国語も 金色の猫の背中の麦畑 まだ青き猫の背中の麦畑 鬼灯の葉陰あかるく白き花 切り込みの朝顔今年は好きに咲け 漕ぎ進む夏の河原をさはさはと 緑陰の航路われらは潜水艇   藤揺れる微かな羽音クマンバチ 赤潮はサクラエビ色 駿河湾 バリカンでまあるく刈り込む新茶摘み 風の手の絵の具の緑もっと下さい 配る手の絵の具みどりが足りません ---------------------------- [俳句]みみず水無月/小池房枝[2011年7月11日21時39分] 蜘蛛の仔を風に散らせよラプンツェル ベレニケの髪の毛あふれて銀河かな ラプンツェル オオミズアオの繭を編む ラプンツェル オオミズアオの繭つむぐ そよ風がそよ吹くたびにネムの花 爪ほどの巻貝の中のプリオシーン 宇宙(そら)の色ラピスラズリの天球儀 おだやかな海だったんだねクラゲ化石 赤猫を走らせぬよう火をあやす 開かれた水門は鉄扉ナマズ淵 早苗田の畦に合鴨一休み ホモイ、人よ。すずらんの実はまだ青かったよ ほろほろとなまこの目からホロスリン ヒマラヤに吹く風が来て田鶴渡る 集真藍が集める藍のスペクトル アメダスとカゼダス梅雨が走り出す あじさゐが自分の色を思い出す 秋桜は今年も強気栗花落(ついり)前 梅雨の岸辺野茨がまた咲いている 許可局の声降る木陰ホトトギス ミジンコの目は本当に花模様 黙示録、パンドラの箱に尚ひとつ 栗が咲きだだ漏れの甘さ強いられる 泰山木ここは泰山ではないよ 平伏せよ風下の我は草の王 美しき草野原 草の名は知らず 濁天をへろんへろんとサギが飛ぶ 砂浜の風にも耐えて月見草 外つ国のコオロギ日本で鳴いている   梅雨入りの風ネムふわりと船出する 水筒とランゲルハンス島の薔薇 薄紅のケセランパサラン合歓の花 ---------------------------- [俳句]ジュライシック公園/小池房枝[2011年7月11日21時39分] コチドリが呼びに来るチチチこっちだよ 午前五時オオカナダモはまだつぼみ 新しく朝日に光る蜘蛛の糸 降交点目掛けて月が駆け下る 大気圏光学現象コンテスト 薄雲をものともせずに歳の星 風強し百合の振り子は振り切れず 食堂はタベルナ星はアケルナル 天の川オオカナダモの白い花 コティロリーザ 紫のチュチュのバレリーナ   ミンミンは餃子屋の名前アブラゼミ クマムシになってコテンとしていたい 有翼の眠りの神は美青年 洗ったら猫きれい猫よごれてたのね 夏料理脱皮したての若イナゴ ぬけがらの主すいすい飛んでいる クラッカー食べるか捨てられアカミミー 暗黙知あんころ餅なら餡も口 カサブランカ真っ白なダリとガウディと   落ちネムもそよりと揺れて朝涼し 風鈴とサンダーソニア花屋さん アサガオがよそんちでばかり咲いている かのこ百合ふっくら何か宿してる 夕方のナツアカネたち今日生まれ 雨の日はアジサイ風の日にはネム 今はまだ可憐な背丈カンナ燃ゆ 草茉莉図書館からの帰り道 カミキリムシどこへと飛んでいくのかな 花びらの線香花火さるすべり まみどりのケセランパサラン栗のイガ 外は夜梔子(クチナシ)が白く浮かんでる 羽化場所を求めて徘徊する貴奴ら 海がめの背中は広いな大きいな 海がめと行ってみたいなよその国 スプロケットどんなロケットか夏のセロウ 夕立が干物のミミズ戻してる なぜミミズ?すぐ溺れるから水を見ず? たれぱんだ七夕の笹にたれている さらさらと金銀砂子の砂時計 夢を喰むバク星空を駆け巡る 冬の瓜、冬瓜(トウガン)夏のヒスイ色 銀河郵便ヤギよ短冊食べちゃいな ツチノコのようだ暑いと猫が長い 打ち付けるクジラの尾型高気圧 真っ白なテヅルモズルよ烏瓜 茄子は実も花もむらさき美しい とまとまと臓器の形に連なって グレナディン夕焼け空のグラディエーション がおがおと咆えるアサガオ「朝だよー」 朝昼と夕夜、花たちガオーガオー ---------------------------- [俳句]長命な九月/小池房枝[2011年9月8日19時46分]    青い薔薇の花の実は何色だろう 仙石原ノーストリリアの羊たち 東雲にオリオンと冬の大三角 夕焼けが夕映えを連れてやって来た 栗、クルミ、君らの双葉は分厚かろう ウデムシの腕よりやさしくクモヒトデ ヤシガニを探して深夜の女子トイレ 再帰せよ夏よ無謬の独裁よ 論無用ただ反撃せよ白き風 大根で殴るそれから煮て食べる どこかしら夏休み明けの水族館 寂寥の山脈を越えて秋が来た 羽化したて全き二頭のアゲハチョウ 宵の口なのに朝貌咲きたそう ネムの木の天辺名残の花に風 美しい眼という名前のユーグレナ(ミドリムシ) 薔薇窓のロザリオ夕陽に忘れ物 西向いていただく初物アップルパイ 咲きながらバジル一粒ずつ実る カサブランカ開けば戻る夏の闇 その顔はあまたの触手 灯を点す ルルイエと鳴く秋の虫もいるだろう ステップを踏んでナイアルラトテップ 貌のない混沌(カオス)ナイアルラトテップ 星辰を切り分けて遊ぶ星の神   肋骨はカメの甲羅にもなりました 血の中の鉄の由来は超新星 ヒアデスは此処です牛の赤い瞳 ミンタカを見たかとアルニラムアルニタク リコリスといえば可憐な死人花 くず洪水 電信柱の足元に キンモクセイ雨一夜分の潦(にわたずみ) 参られよ王子の狐オリオン群 白、薄黄、白銀とりどり花薄 光あれ魚影が魚体に添うために 風はまださまざまな色に騒がしい 咲き果てた向日葵どっしり涼んでる 夏のあと公園はセミの穴だらけ 跪くなんてあやうい文字だろう 水引が標結(しめゆ)ふ林に風ばかり 旅客機の孤影に点る夕日かな 一滝の萩 押す風を押し戻す ドングリがぱたんぽとんと落ちる音 百日紅あらためて高く天を指す 地球照あの弓の下に何がある 猫は目をどこまで細められるだろう    ---------------------------- [俳句]三月のマーチ/小池房枝[2012年4月8日19時21分] 彼岸桜優しげに咲く此岸かな 野に遊ぶさも値段高そうな猫 イヌノフグリ閉じてぽろんと今日でおしまい   産卵を済ませて二度寝のヒキガエル コーヒーの記憶 取っ手のとれたミル   手袋をし忘れた手に触れる夜気 イザナギは神、オルフェウスは人でした 春を待つ座敷わらしと赤いじょじょ たらちねの直黄(ひたき)ミモザは子沢山 白き指ひろげて風を梳く辛夷 トラのバター陽に溶ろけきって黄水仙 お彼岸に連翹 南無妙法蓮華経 緑なすヤナギ美容師に結われたかろ 咲く春はありおりはべりいまさかり   オオイヌノフグリは青いbuttercup 春に咲く椿と春に散る椿 銀色のアラザンひとつぶパブロンと 咲く前の桜に触りに行きたいな 粉雪が舞います明日はホワイトデー スミレたち初咲きてんでに一斉に 「種の起源」花の起源とその期限 桜貝いちごのジャムの空き瓶に 温かな夜風に滲むオリオン座 ヒヤシンス咲くとなんだか威張ってる 雪まぐれ一反木綿が飛んでった 静々と沈む三日月セッキ板 暮れる空アオまたアオと鳴く烏 金色のちいさき舟よ春の月 明星に舫う三日月揺れもせで やぁと言えばにゃぁとも言わぬ他所の猫 詩人です名乗ってみちゃってさぁ大変 詩人だなっ!砂かけばばぁ問答無用 ハナアルキ日本の春を見においで 黒潮にのってハイアイアイ諸島 布団から耳だけ出して猫涅槃 いつまでもとっておきたい林檎たち 地球へと落ちたがるリンゴ遮る手 烏羽玉の姉妹が抱くグロビュール 八雲立つ創造の指ワシ星雲 幼虫が五匹やわらかな薪を割る 消えていく熾き火の星座ゆらめきつつ 水面滑るカモは二つの影法師 雲は月を沸石にまたオパールに 焼け石に水黙すまで幾たびも 眼差しがつらぬく鈍器のようなもの   川沿いに下りてくる春ほーほけきょ カワセミがこっちを向いてて青くない ヒトのフグリも野に遊べ春の青き花 二叉の風タキシード来たつばくらめ 夕まずめぱっくり開く鯉の口 宵闇がいっそう濃くなる沈丁花 夕日浴びて爆ぜてる柳とジョウビタキ 夜に深く昏く濃く甘く匂う梅   ひとんちの蕗摘まれず花盛り 落ち椿小学生の群れのあと 春の仔ウサギ上手に土手を掘りすぎだ 印象派日本の春を点描しなさい 三日月の蒼ざめた目蓋 地球照 雨を重み深く枝垂れてミモザたわわ 三椏がどこかでどっさり咲いている シジュウカラ葦には目立つ白と黒 コガモ水面を流されながらくーるくる コガモ遊んでないでそろそろお帰りな 小枝折りつつ祈りつつ道を行く ---------------------------- [俳句]不自由な十月/小池房枝[2012年7月27日18時18分] カタツムリ首すくめさせて白き風 虫の音の海ルルイエは秋の季語 サイドワインドする猫どこかかゆいのか サイドワインドする猫どこがかゆいのか セミがまだ鳴いてる秋の松林 満面の笑み甲羅干しアカミミー カメの爪確かに君は爬虫類 秋深み猫が布団を楽しんでいる コメントを更新しました行進曲 ガトゴットン屋内散歩中のカメ コメントをついいれちゃって阿鼻共感 天を衝くテイオウダリア秋の季語 葉を毛虫食べつくすから咲いちゃった 五月より尚深き赤の秋の薔薇 チャンプルにしてからのタネが咲きました 知ることのどんどんぱんぱんドーパミン カラスウリまだ緑色のしま模様 東京湾対岸の千葉に灯がともる 陽が沈むあらゆる果実の赤い色 呑む海と呑まれる夕陽と同じ色 ツキミソウ荒地一面逢魔が刻 リゲルは右ベティ婆は道の果て左 でもそれは今日じゃないよね金木犀 カンブリア以前の海にコモノート 薄野に狐の嫁入り水の音 黄金の林檎実ってアルゴノート   渋いのに甘やかなふり姫林檎 クリスマス待ってる赤い実ハナミズキ 実ったり咲いたり枯れたり忙しい   朝顔と流れ星待つ流れない オリオンのわき腹を射る群流星 三ツ星の下に小さな帯飾り 双子座の足元に火星這い登る 東天に金星ちょっと明るすぎ 金のしずく降る降るまわりに金木犀 銀のしずく降る降るまわりに銀木犀 サックルが閉じるよシャケンベ遡れ ピリカレラ神は大地を神の手に ミーニシが吹いても南の島は夏 風もすべて水洗いして掛けておく 星は空気を空でしっかり洗濯ばさみ 空は誰かの透明なコインランドリー 金星は金色 before the daylight 船が出る図書館に行く秋が来てる 寝なさいね煮干は明日ネコもカメも 涼しくてうれしいマリモくるくるりん 平らかな地球の海が全て零れた ラングミュア・サーキュレーション砂漠にも 風盾の矛盾 風だけが永遠に吹く   ジンルイはまさしく宇宙の電波系 歌ってよ電脳世界のラプンツェル 夕映えを浴びて薔薇色雲くじら 月影の甍の波は夢の海 風をはらみ満腹転覆そら鯨 大丈夫いつでも海に帰れるよ 日を受けて夢に遊ぶ水が雲になる   カタバミとシジミ小さきもの同士   朝顔に釣瓶とられてラプンツェル アルフ・ライラ・ワ・ライラ語れよラプンツェル ハジ、君は、セロをそんなにしちゃいかん 青年と何か大きな黒いもの 木漏れ日をあやすゴーシュの弓捌き セロ弾きのゴーシュはザムザ氏と散歩 空一杯夜を満たして今日の月 星影をかき消し虚空に今日の月 山茶花がもう咲いている散っている 南中のオリオン南の風の中 綺羅星を見上げているのに寒くない ウサギ座の赤い目私の目には見えない 双子座で土星が三つ子のふりしてる シリウスをくわえて大犬駆け上がる ぽっかりとあかるい林に椅子ひとつ ---------------------------- [俳句]十一月の位置に/小池房枝[2012年7月29日18時10分] 虹も蛇小雪(しょうせつ)以降は冬篭もり 開かれず流れず閉塞する天地 あるならば旋毛見せてよカタツムリ 無理じゃないそれはリムだよ端っこだ カマイタチ北風小さなカタツムリ 今日よりも後は名のれよ冬薔薇 今日よりはどのポイントも寒施行 何もかも置き去りにしてオキザリス 何もかも置き去りにされてオキザリス 霜月に今夏実生の夕化粧 どっどどどう月影まっすぐ電柱に ギンナンも葉も降らば降れ銀杏並木 桜の葉かさこそくすぐるアスファルト オイヌノフグリ青いねまだ十一月だよ シーラスのコーラス重なる秋の空 宮家専用ホームにドングリ敷きつめた 木枯らしを聞く夏の花の種の夢 シジュウカラ メジロ 今のはどちらのチチチ おじさんは腰をいためた菊も飛べ 早朝の木枯らしにりんと白き月 シザーハンズきみが降らせる紙の雪これは スノウフレークコーンフレークペーパーフレーク 珪藻の valve face のシルエット 滄海の一粟秋水河豚戴天   オリオンの首の小さな三角形 青信号シリウス遠くへ招いてる 天蓋はゲレンデ流星直滑降 彗星は空の幽霊 半透明 フローレス冬空でこそのインクルージョン 星はすばる千数百年前も今も 人影のまばらな海に桜貝 のど飴を分け合う季節になりました 咲いていたはず咲いているはずの薔薇   息継ぎに一瞬の虹イルカジャンプ ウミガメの胸は広いな分厚いな クリスマスツリーの電気元気ウナギ イルカジャンプ弓なりの背を陽が走る 炉開きもせず日々焚き火そんな日々 霜月の立礼華麗に走りつつ どんぐりの一粒つむじを狙ってた この茸、赤いんですけど・・・。茶菓ですか? 傘の裏 菌糸輝く萬草庵 熱々のみかんの缶詰おいしそう データベースチェック「矛盾はありません」 目を覚ませ耳を澄ませ我はSETIの一基 チョコみたいMとかベイビーユニバースとか 射手、オリオン、ペルセウスの腕、みな豪腕 落ちドングリ最多記録の秋台風 まぶしくはなくただただ明るく彼岸此岸 ざっくりと割れたざくろの季節です とろとろの熟柿を小鳥が啄ばみます さざんかは散りたい放題散っています ウサギ座は今年も狩られかけたまま 現代詩読んだだろうか長門悠希 コスモスが可憐なふりして揺れている 売られても買うな喧嘩はその場では あまりにも思い切ったことしてくれる 「タフでなければ」ってタフだろうヴェロキラプトルは ひとでなしあやかしではなくろくでなし   たんぽぽの湯たんぽ地球を温めて SFを読まない人が多すぎる たりらりらん、足りない learn だったとは! 海鳴りは空耳、耳鳴り、貝の殻 風ひとつポプラ全ての葉が揺れる カラス座が南十字を指し示す 夜の果て東(ひむがし)の空に地球照 曙は上げ潮 月の船もやう 曙の上げ潮 春から星をさらう サソリお前 お日様と一緒に上がって来 夕日梳く雲の指を梳く空の風 いたずらな風に落ち葉をくらわされた 来月は冬至 落ちきる砂時計   山に山 紅葉に紅葉の夕日影 青い花は竜胆枯れた茎もまた 稜線の日時計を誰が読むだろう 窓の風ガタピシ出たがる猫のよう 風も猫も入りたければニャーと鳴け 温かい風が夜空をかけあがる 予兆など見せずに寒気が来るのだろう 土に還る落ちた花梨の香りいつまで ねずみ一匹 大山無鳴動大地震(サイレント アースクェイク) キャットフィッシュ スロースリップ クイックターン 列島は島弧 環大洋の花綵 サルビアの蜜の甘さがまだ夏だ 冬水仙アサツキのような浅緑 ツワブキの蕾でっかいタンポポだ 銀木犀咲いていたのかいないのか 白い十字はやっぱり柊だった間違えた  ---------------------------- [俳句]クリスマス師走にはします私だって/小池房枝[2012年7月29日18時44分] 大晦日湯船ゆらりと船出する 月光もモザイク師走の露天風呂 女湯の体形の千差万別さ 年寄りが煮える源泉掛け流し 会社の灯年末週末クリスマス 靴下の中に手袋クリスマス 半額はまだかまだかのクリスマス 鳥骨の髄、猫にやるクリスマス 日没とともに半額パネトーネ シュトーレンは賞味期限が正月までで 金色に一陽来復銀杏並木   ありったけお日さまを浴びてアリッサム 珍品のパンジーつまり珍パンジー 勿忘草忘れてないから咲かないで 百合根掘り起こしそこねてまた来年   何もかも地上はびしょ濡れ空に星 双子座を頂点に月は重心に 枕元カチコチ風邪の脳には五月蠅い 随分と火星にしても赤い星   この冬もでかい茄子だな帝王ダリア ギョエテとは誰のことだと公孫樹 電線に同じ角度でヒヨが二羽 逢魔ヶ時チュッパチャップス自転車(チャリ)を駆る   校庭の皇帝ダリアの冬休み 北からの歓喜ごうごう雲津波 年の瀬をはやみ惑星、砂時計 tenohirano nakanimauyuki suno-do-mu   戦跡のさとうきび畑のクリスマス 陸奥の猫魔ヶ岳もクリスマス サックルを閉じてニ風谷クリスマス 冬薔薇 遊園地跡のクリスマス 博物館マリンスノー舞うクリスマス 詩の中のかわず深さを自慢する ぞんざいな存在であれラフレシア ゴーストと訳したハーンも押井も正しい 使い捨て持てばカイロの日和アリ 離島にはサンタは船で訪れよう 疾駆するピザ屋のバイクがサンタクロース   粧いを落とすや山は笑い含み くるくると舞い上がるイチョウまた落ちる クリスマス梅のつぼみも膨らんで 逢魔が刻ゆえか凛々しき散歩犬 崩れかけて崩れぬクイーンエリザベス 半円を描いてサザンカ散っている ひこ生えの枯れ田のあるじ百舌が啼く 河原一面くっつきむしのキングダム 何の不思議もないことの奇跡キセキレイ   バリウムを呑んでエナガに会った道 ゲーテなるは堕ちてなお比翼の銀杏かな クリスマス1ミリほどのヒヤシンス 閉店後暗闇の中のシクラメン   お茶の水渓谷今日も翡翠色 カンダタも学べよ書物は蜘蛛の糸 BOOKOFF来るなら来てみろ神保町 ハロウィンのカボチャも冬至の湯に柚子と カラスウリ十ほど花壇にそっと置く なお目から落ちぬ心のうろこがきらきら クリスマス電飾ただびとこぞり合う   真っ青な空図書館にやって来た 何借りて帰ろう図書館夕焼け小焼け 散りきるや否や笑ってる冬木立 ビロードを脱がずに咲くか冬木蓮 特赦の日「蔵」のフィルターどっとはらい   新春に咲いてこそ梅 クリスマス    海のソラスズメは青いよ ふくら雀 つわぶきがタンポポのようだ冬至前 大根がずらりと浜のワカメ棚   一々が一期一会の海の波   そうめんと流れる言葉のようなもの ことことと煮詰める言葉のようなもの 我とともに来たり我と滅べ我が言葉 引き出しに一つ鈍器のようなもの 窓際に一体 鈍器のようなもの ありがたや雪に血塗れの傘地蔵 おそろしやこの札束は・・・傘地蔵 去年今年貫く鈍器のようなもの 冬の飢餓小鳥イラガの繭を喰む つごもりの梅 白さだけ匂わせて   辛くとも/幸いにもって見えました 一画の有無の辛さと幸せと   矢の如くでなくていいのだ光陰よ   すえぞうも君の眷属サンダーバード 空と雲フラッシュするまでシェイクする 励起する蛍光灯の内側にいる 風と海さざなみ以下の震え走る 冬などは祓って北野の梅が咲く シオマネキ詩など真似るな海を呼べ 玻璃の街 瑠璃の空 メリークリスマス パンドラの薔薇 いつの日か咲きなさい 正月のようにミサゴが高く飛ぶ カワセミの縄張りバトル翡々翠々 一粒の雫を小鳥は丸飲みに 鵜は鵜呑み頸より口より太き鯉 ふゆざくら三浦だいこん直売店 海苔の春いそぎんちゃくとアメフラシ 東(ひむがし)に千葉ふりかえれば西に富士 レンブラントライト冬枯れた山肌に   一個体、一属一種ゴン太くん   身の丈の王国 我はここにあり 言葉たち服せよ我に生かされよ 木々に冬よ星辰を以って戴冠せよ 恐竜もクマムシも我が胸のうち 見えている景色にそっと手を当てる はぁ、一句。溜息、俳句にならないか 秋も冬もお座りここにはその椅子がある   夏の形見どっさり入れてグラタンに 降る雪で空が全然見えません ライトグレー重ねて空と雪と屋根 よく冷えた雪で部屋までついてきます 隣り合いふと溶けあってぼたん雪 ぼたん雪ユキダルマには向きません 急いでも急がなくてもあと少し 百様の羽様々な舞を舞う フィクションも自己紹介ですプロフィール ミモザ萌え馬酔木鳴り出す師走小春 街中の四季に花など枯れぬもの 冬が来て並木も人も露わになる 枯らせたいか嬉々と絡まる藤あけび ---------------------------- [俳句]八月の小石/小池房枝[2012年8月13日12時23分] 人恋し妖かし恋しカラスウリ 流れてく雲の先にも夏の空 炎天下無人の公園カンナ燃ゆ 土星環消失まっすぐ地球見てる   涼しさや蔑称幾つか引き受けて スコールにはしゃいでる子らはプール帰り うろこぐも空深く怪魚見え隠れ   新涼やしゃりりしゃりりとあずき研ぐ 星々にまつろわぬ果ての地球人 駅弁の輪ゴム水色夏仕様 紀の国はみかんの国とアゲハチョウ あの山を越えれば海か本当か 伏流水今涸れてても川は川 ミヤマカラスアゲハの羽は黒翠り 道の駅さくさくハムかつ雨宿り 彫り出され漆黒の走るカメレオン ツユクサに紺碧の海のふたかけら 蝙蝠は幸福ぱたぱた飛んで来い 夜のチドリ怪我してるふりで鳴かないで 廃屋の薔薇カラムシにのまれてる 雪州も長崎県下 黙祷す 銅鏡の伊都国 風りん南部鉄 アスファルト色の猫の目静かな夜 黒猫が呼ばれてニャーと去る月夜 水面のさざ波はみな夜の仔ボラ フナムシもプロムナードで夕涼み グラジオラス ネジバナみたいにしてごらん エンジュ散る風に順じて逆らって ようそろと風にひとひら蓮の花 深夜には海鳴り聞いてる水族館 息継ぎのたびにウミガメ夢あらた   紅花を揉みながら染めた西の空   オトウサンモドキのような百合の群れ 人に化けそこねて百合に咲いている ぽっかりと月手放してサルスベリ 瞬かぬ月は妖かし一つの目 サルスベリ百日の火花咲き継いで 月仰ぎ雲湧くがごと百日紅 空あります海もあります駐車場   幸くあれと風の手のひら田を渡る   向日葵とダリア互いのように咲く アカマンマあの夏からの御ままごと 秋立ちてキツネノカミソリつっと立つ 何のために生まれてきたのか知っている さしのべる手を受け止められるはずがなくても   井の中に蛙飛び込む水の音 ニンゲンが星に願いをかけるの禁止 彗星の軌道と今年も交叉する 風は風 空は空そして ひとはひと  ---------------------------- (ファイルの終わり)