るるりら[るるりらの 即興ゴルゴンダ] 2011年11月5日8時01分から2020年9月19日9時54分まで ---------------------------- poenique???????????????????????¨??????????????????????????????? ?????????????????? ¨?????????????http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=4832676#10633425?????????????????????????????????Τ????????????????????????????? ---------------------------- [自由詩]攻撃はいつも後ろからはじまる/るるりら[2011年11月5日8時01分]   人類諸君 諸君らの敵は人類である。 ちきゅうえい】という言葉を 覚えて以来、基本 ご機嫌だ。 地球影とかいて ちきゅうえい。ちきゅうゆうえいとは 関係ない。 澄んだ空の朝が夕方に 見られる現象でお日様のある方角とは反対の方角の空の下層部が青く そして その上は ピンク色を発色する現象で 地球が丸いから 日没や日の出の時刻の太陽光線をうけた地球の影が 目視できるというもの。影のある人というと いうことばはあるけれど、地球だって 影がある。 地球にも背後というものがある。それは 青みがかった色をしている。 街ではもう来年のカレンダーが売り出されている。十月すら 終わろうとしているのだから 当然だ。おもえば、今年は奇妙な観念に憑かれていた。 ある時は、このゴルゴンダの街にも 黒い雨がふっているというような かしげた背中に 黒い雨がふっているかのような ある時 一瞬、勇ましい気持ちになつた。棺の中から英雄が確かな道を示し、それが水没し行方も解らない人の心を代弁してくれたかのような しかし、 ちきゅうえい】という言葉を 覚えて以来、わたしは、生国を得た。二日も続けて 地球の魁の時間の夢を見た。眼前に広がる水平線 そして それに続く 地平線。昇ろうとしている太陽を背にした方角、つまり西の空の下方が青い。そして その上部にピンクに色づいている。時間の経過とともに下方の青い部分は消え、ピンクが 地平線と空の接した面を覆う。地球の影が見える時間が過ぎたからだ。そんな 夢を見た。 この星は 一個の命だ。一個なのだから 人格ならぬ 星格のようなものだってある。この星の海で たった一粒の命が36億年前に生まれた。いきとし いけてる生き物の祖だ。芥子粒と人の命と歴史は同じ36億年。二足歩行の私たちが 黒い雨の原因だ。 人類がしでかそうとしてきたことは、人類がしでかしたことだから人類だけの背後にその罰が与えられるのではなく、この星 全体に その罰は及ぶ。それでわたしたちは 今年一年 うちひしがれたり、運動を起こしたり、はげましあったり、なじりあったりしてきたのだ。 だけど、二歩歩行のうちの一匹として、わたしは 想う。わたしたちは ひよこだ。まだ 学べる、わたしたちが一個の命であることを みなで 学べる。敵は私たちか? わたしは、叫ぶ「ピィ」 ひよこの 一声。 数多い生命のうち 二足歩行が一番、背後を知るのに適している。おはよう。さあ、眼前になにがあるかを見よう。それは 絶望だけか? ---------------------------- [自由詩]ただいま/るるりら[2011年11月14日14時07分] おおらかだ 笑い声って おおらかだ 笑い声に出会えた日は 幸せだ 高台にある 小学校に ソプラノの歌 響いて ひざしが からっぽになる 水は だしっぱなし 生けすの 魚がはねた とびちる 自由の意味を探して 両手を広げて咲いている 宇宙という名の花 コスモス と おかえりと 言ってくれる君 はね る 夕飯時の団地を きみらと歩く 子供らが 歌を教えてくれる あちらは焼肉 うちはカレー おおらかだ みんなで 叫ぶ 「ただいまあ」 ---------------------------- [自由詩](仮)/るるりら[2012年10月13日21時56分] 地球という言葉が 宇宙の中に点在している気がする 宇宙広しというが 大宇宙には無数の知的生命体が存在し それぞれの星の人が それぞれの星のそれぞれの文化の言葉で 自分達の天体のことを「地球」とか「大地」とかの意味の名称で 自分達の天体の事を 呼んでいる気がする 虹という奇跡に遭遇する人は 地球人だけかもしれない 虹という奇跡に遭遇する人の多くは ⌒弧を描いている複数の色が 太陽の光と水であるということに言葉より深いところで感じていて けれど 太陽の位置は 自分の背中にあることを忘れている ふりむけば いつも光がそこにあるのに 人類は地球の一部ではなく 人類はそのむかし 地球そのものだったから 死んだら 土に還り きがつけば その背中には 光があふれていた 虹という奇跡に遭遇する人は 地球人だけかもしれない 背中に光を感じつつ 水と光の位置や関係が同じ角度のあたりを 見あげている ほかの星の人類も その星のことを地球とか大地とかいう意味の言葉で呼んでいる気がする その星の人も 自分たちの星のことを(地球)とか(大地)とか呼んでいる その星の人たちの背中にも 光があり ときより虹という奇跡を 見上げている そして みしらぬ自分たちの住む星以外の星には 個性ゆたかな 名前をつける ---------------------------- [自由詩]ホスピタル・サーキット/るるりら[2012年10月18日11時52分] もういちど ちゃんと 笑って アップルパイの焼ける 甘い匂い おおめにふるったシナモン ふれていたいのは 痛いとこ こねていたいたいのは やわらかなとこ アップルバイが焼ける匂いのする三丁目の角 病院街にある喫茶店 わたしの担当はアップルパイを焼く係 毎朝七時には焼きあがり あとは ひがな一日 自慢のパイを客にすすめる あなたの痛みが鎮まることを口にしながら わたしの痛みにも打ち勝つ心を乞いながら こねていたいのは やわらかなパイ生地 不安と恐れの中で救済を切望する人の交差点 成功の日の中の あなたの恵みではなく 失意のときにこそある あなたの手に 温かく もりつけられた 焼きたてのアップルバイ 病院街の真ん中で 自由を勝ち取るために耐える心を願うほどに焼ける 林檎の匂い 自分のしこんだ毒入り林檎を食べても 魔法はとける ホスピタルサーキットのフラッグは 林檎の匂い ねぇ もういちど  ちゃんと笑お シナモンみたいに ---------------------------- [自由詩]あなたにパイを投げる人たち/るるりら[2012年10月22日7時48分] やぶれた帆を持つ幽霊船のような障子から 指穴ほどの照準窓から目が のぞき その目は 富士山麓の鸚鵡の帰りを待ち わたしの逃げ場を俯瞰し すべてのものが 見事に該当して故郷である 見えない世界 大陸を縁取る海溝のような故郷を通じて連携を保ち 笑いながら 踊りながら 泣きながら 脅しながら 愛を込め憎しみをもって 人々が手に手に投げる そのπは 全部 綺麗な放物線を描き 私めがけて 投げられたのは  全部 お見通しだ だか 明星より遠くに 時を越えて飛んでいったπだけが わたしの おでこで破裂し わたしは目覚めた そして 私は そんなあなたに パイを投げる ---------------------------- [自由詩]悪魔の悪書/るるりら[2012年11月1日19時28分] アクマで悪書を好んで読むわ 雨が降るみたいに 身体が溶けて流れ出しそうよ 中央線新宿駅の立川方面行きプラットホームの 真ん中の柱に寄りかかって死んだ目をしていても 悪魔なんかじゃないわ こんなの 水銀みたいに重い銀色の身体が ヘビィだなんて私らしくないわ あいたい人は いるのよ あいにく天使みたいなラブストーリィに はまっているの 頭の中は いつも アニメ声よ あの人のガランドウの心が熟して食べごろになるのを待っているの それまでは天使みたいな悪書を勉強しかしないの 十一月の最初の日の十二時には 生者の世界と死者の世界との間に目に見えない「門」が開き 異界との境界から電車が発着するわ その境界をつなぐ電車が悪魔界の悪書には本当のことしか書いてなくて その電車のことも 書かれているのよ その本にはね【龍の尻尾は蛇】 って書いてあるの 電車の性質は豪奢だけど、でもその電車自体は蛇の尻尾みたいに かぼそく目立たない でも尻尾をみつけて掴んで その電車に乗車できれば 思い通りの未来へ行くことが約束されるわ 悪魔ならみんな知っていることなんで 人間はあまり知らないみたい  だから この世界って人間には不都合なことばかりおこるのよ 発着は新宿零時なのにね 中央線みたいに突っ切って渡るにしろ 丸の内線みたいに永遠に回ることを目指すにしろ 幸せの尻尾をつかむのも 乗車にはタイミングが勝負よね こうしちゃおれないわ あの人のガランドウが 素敵に熟れるように スリットの深いドレスを着て 電車に乗るわ わたしね 人間になりたいの \\\\\\\\\\\\ 参考資料。ハロウィンの原型は、サウィン祭といわれている。サウィン祭はケルト人の収穫感謝祭です。ケルト人の1年の終りは、この祭りの行われる10月31日でした。この日は、夏の終りの日であり、長く厳しい冬の始まる日でもありました。この祭りの夜は、同時に死者の祭りでもありました。年末から年始にかけてのこの時期は、生者の世界と死者の世界との間に目に見えない「門」が開き、異界との境界があいまいになると信じられていたそうです。この日は、死者の霊が親族のもとに訪れることを祝う日でもありました。しかし、同時に悪霊や妖精、精霊が訪れ、家畜や農作物に被害を与えるとされました。 ---------------------------- [自由詩]個と場/るるりら[2012年11月14日17時16分] 教室から飛行機が見えた 窓の向こうでは轟音が聞えているはずだ 潮のにおいも混じっているはずだ この町の大人達の自慢は この学校の窓という窓は 二重ガラスで 外の音が 全く聞えないことだ 今日も 心の中はどしゃぶりだった 心の内側では どしゃぶりなまま なんの匂いもしない教室で 人と同じようにしなさいと 叱られる  同じようにできる人達には  同じようにできる人達の過程があると思う 転校生の私には それがない 先生は魚のアパートの話をしている 海の中にはコンクリートの塊をいくつも置いていて 漁礁というらしい 帰り道の空も 同じ形の社宅のアパートが連なっていて 漁礁だと思う 魚の観ている空も四角いのだろうか 川沿いの道だけは救われていて 川の先にある海に接した飛行場に向かう飛行機が なにもかも考えられなくなるような轟音で飛んだ 轟音の中を飛んでゆきたい 川原にしゃがんで 石英の粒を探しながら 轟音の中を飛ぶと この間まで住んでいたいた山の緑の綺麗なことや バッタや原っぱのことを思っても許される気がした 小石も山から来たのかな ちいさな粒になってきらきらしてる いっぱい 流れに身をまかして 大河の心になったら 空を飛べるのかな  同じでないことは喋っていけない けれど同じでないことしか知らない 拾い集めた 石英の小石が 飛んでゆく ちいさく ちいさく ナニモイエナクなりながら でも  わたし 広い原っぱの空 忘れて ない ---------------------------- [自由詩]ホッチキスでとめただけの簡単な詩集、でもそれを君は本と呼んで/るるりら[2012年11月23日12時01分] 魚編の漢字が好きだ 目から鱗という言葉が好きだ 逆鱗に触れるという言葉が好きだ そして わたしの言葉を読んでくれるだろう そんな あなたが好きだ 回遊する魚のように 回して読む 寿司屋のお湯飲み茶碗のように わたしの世界の温度を確かめるように わたしは 今日も あなたに届く言葉を さがす 活字にならないで回遊している私の詩のようなものを あなたに これは 詩集にしたいと 言ってほしい わたしの本に名をつけるなら「回遊魚」という名前が似合うといった人がいた 言葉が私を水を得た魚にしてくれますようにという  それは 祈りだった気がして わたしは あれからというもの 心を栞みたいに薄くして 私の鱗が だれかの 心の底に触れることを 今日も祈る  昔 わたしの詩のようなものを わたしの代わりに手作りで装丁してくれた人がいた それは とても美しい装丁だった 詩の本を出す人のことを詩人というのだよと 渡してくれた たしかに その本にあったのは わたしの ことばたち 詩集を持っている人のことを詩人というならば わたしも詩人になったかもしれないけれど わたしは詩人になりたいんじゃない わたしは あなたの心の中に 今も挟まれている ささやかな栞になりたい 私は あなたの心の中に 触れることがあるのかが しりたい  あなたの心の みなぞこに ふれたい わたしの鱗が あなたの深海に 翻る光がみたい 私は 目から鱗の瞬間を探す 私は わたしの逆鱗に耐える ホッチキスでとめただけの簡単な詩集 わたしの言葉よ ホッチキスを がしゃりと留めたなら さあ 泳げ  ---------------------------- [自由詩]樹木のセミヌード/るるりら[2012年12月5日16時33分] モンマルトルに世界樹が生えている 世界の中心から その根は 枝をほそらみ スローモーションで 人々が朽ちるときにだけ 冴えざえと 好き勝手に舞いながら 全体としてと統一のとれたリズムで 落ちる枯れ葉よ 地球の中心に「樹」がある 秋葉原に世界樹が生えている おたくの中心から その根は 世界にほそらみ 猛スピードで おこなわれる選挙が満ちるのを 冴えざえと 好き勝手に批評しながら 全体として統一のとれたリズムで 舞いあがる萌えた華(はな)よ 世界の中心に「萌え」がある  はりめぐされた高速道路の街路に世界樹が生えている 遅い速度のゆるされない道 スローモーションで洗濯され干されている勝負服が見える ライバルは秋 秋めくほどに 脱いでゆく ほんとうだけになって 世界樹が 炎の葉を散らす ---------------------------- [自由詩]幸せのゲーム 二編/るるりら[2012年12月14日13時23分] 1.ゆきんこちゃん 段ボールに書かれた 真っ赤に書かれたクレヨンの暖炉の炎には  ぱちぱちと もえる友情が燃えていた おともだちの ゆきんこちゃんは 五年生で なふだにも ちゃんと 【ゆきんこ】と書いてある わたしは 一年生で ゆきんこちゃんは 五年生 ゆきんこちゃんは 暖炉のほうには 行かない 炎が こわいんだ 初めて つくった 雪だるまみたいに とけちゃうから 一年生のわたしは ゆきんこちゃんに 「夏になったら とけるんでしょ」 二年生になって 春になったときも 道で ゆきんこちゃんに 校門のところであったとき 「そだよ」って ゆきんこちゃんは言った 六月にであったときも「そだよ」って ゆきんこちゃんは言った 七月には 出会わなかった。 八月も出会わなかった。 十一月になって しろい雪が はじめてふった日 ゆきんこちゃんは はずかしそうに 見つかりたいような顔をして わたしの教室の近くまできた わたしは知っている  いつも かくれていた ゆきんこのおねえちゃんを 夏の間も ふつうの六年生だったことを 隠れながら 道を歩いていた ゆきんこちゃんのことを いつも みつけていたけれど しらないフリしてた ちゃんと 冬が来て 雪が降る日は 「ゆきんこちゃぁん」って 大きい声で呼んでもいいのに なにか はずかしくて  雪の降る日は 嬉しそうな ゆきんこちゃんから逃げて とおくで笑った  大好きって なんだか はずかしい 靴箱にあった 雪だるまも ゆきんこちゃんのしわざだよね にんげんが つくったものだなんて わたし ぜんぜん しらないよ 2.ハンディキャップゲーム 円卓には シルクハットが置かれていた レディス & ジェントルマン これから 思う存分飲みましょう 賭け事に 歌に踊り 酔いつぶれる前に それぞれの財布と相談して シルクハットの中に 自分がだせるだけのお金をいれた 賭け事に勝ちすぎた者は ほかの者に見えないように  そっとシルクハットの中に お金を落とした  富める者も そうでないものも スキなだけ遊ぶ お金は 心で支払う それがハンディ イン キャップ ハンディキャップのもともとの意味だよと 気取ったキリギリスが 教えてくれた 穴掘りばかりで目の悪い蟻たちは 美人が多くて いい匂いがした タキシードを着たキリギリスたちは 蟻たちの思いを歌にした だって こどものころは みんな 同じ穴のむじな  なつかしいにおいに 歌わずにいられない こころから歌い こころから酔いしれても すべては ハンディキャップゲーム 富める者はやさしく そうでないものも たやすく生きられる キャップの中に お金がたくさん ある間だけは ---------------------------- [自由詩]光について/るるりら[2012年12月24日23時42分] ミッキーマウスは ビックマウス ほんとうのネズミは 目が ほとんど見えなくて 光と影くらいしか分からない 見えなくても見える方法を 知っていたり いや 知らなかったりする オーストラリアではサンタは サーフィンに乗るらしい サンタ本人が豪雪で あかぎれになりながら 教えてくれたんだけど サンタは ほんとうのネズミと同じで 光と影くらいしか 見えない 見えなくても ほんとうのことを知る それは 選ばれた人ではなくて みんな そうなんだって 僕はサンタに言ったんだ「僕の気持ちは今 サンタどころじゃないんだ。まるで深海に居るみたいに真っ暗なんだ」 サンタは しばらく なにも言わないんだ ずっと だけど ずっと黙っているサンタは なんだか 臭い匂いがした サンタが ほんとうはネズミと同じっていうのは 本当かもしれない 暗いなあけど ほんとうかもしれないと 思い始めてたころ サンタは言った 「深海魚の住める浅瀬だって この世にはあるんだよ」  って サンタは笑ってた ---------------------------- [自由詩]末広がり/るるりら[2012年12月29日20時53分] まほろばが うたいはじめるのです フライパンの中は カタクチイワシの まほろばなのです 心が自然と フライパンに降りてゆき 放物線をえがいて 炒られて対流する香ばしい香りに うたいはじめるのです ごまめのうたの伝承は イワシなのに ごまめ 田んぼに まかれたイワシたちの おかしらつきを 田んぼになったつもりの心で いただくのです まかふしぎな くろまめは お鍋の中で くろぐろと 露ややかに光る ふくよかなのです 心が自然と お鍋の中におりてゆき ゆげが あたりにたちこめると しっかりと しっかりと 煮ふくまり うたいはじめるのです くろまめの転生は まめまめしい艶やかな こころの ころころ ころころのこころで いただくのです 八時間は 煮含めましょう 音楽はピアノのころころとした楽曲で すっきりと甘くしあげましょう 鍵盤の数も88ですもの あなたとわたしが 連弾しますように そんな こころで いるのは ひみつ です ---------------------------- [自由詩]書こうとしたことを忘れてしまって/るるりら[2013年1月13日2時33分] うっかりすると 本人も見逃しそうな 直立だった それは闇夜のできごとだった 神技(かみわざ)の域 幾重にも 青天の霹靂が重なった年がつづいた  ある新月の晩 カワウソが 岩の上で よつんばいになって 息をゆっくり吐きながら 少しつづ 背中をまるめ つぎに ゆっくりと 息を吸いながら上半身を 反らせたが すっくと 両足をそろえて立って 体の中心の軸を感じていた 見えない月の引力で背中がピンと伸びる 下腹に 河童だったころのスピリッツが戻ってきた かつては 彼の頭の上にあった皿から取り出した叡智を 人に さずけた  あのころと おなじような聡明さが 彼に もどってきた なにかをどこかに 書き残しておくべきだとは思案したが なにを書くべきなのかを おもいだせない かつて河童であった カワウソは 適切な言葉を思いだせなかった 人々は 河童どころか カワウソの存在すら 否定しかけているというのに ---------------------------- [自由詩]【りんごの ゆくえ 】二編のオムニバス/るるりら[2013年1月23日9時52分] 【すりおろした林檎】 ねこをかんぶくろにいれて ポンと蹴っていいような 汗と毒と 荒い呼吸の  みすぼらしい私が すっかり蒸発しました ぬけがらの私の みぞおちを  糖蜜が降りてゆきます エリーマイラブ ソシ―と 叫べます 水泳選手が壁を蹴飛ばすみたいに まっすぐに呼吸が伸びてゆきます 今までのわたしに さよなら 夕日は空に さようなら 空に わたしの息が白く浮かんで消えました いままでのわたしに さようなら いまのわたしは  リンゴの匂いで 誇らしい 【空メールのやりとり】 空メールを送信すると すりおろし林檎が きた 空メールを送信すると おいしい おかゆのセットが きた 空メールを送信するとアイスノンをとりかえてくれた 空メールを送信すると あたためられたタオルが きた 空メールを送信すると あたらしいシーツにとりかえてくれた 窓をあけて 「もういいよ」というと おふとんが 外に 干された 裏山を 散歩すると  繭玉をみつけた やさしい絹糸で 守られていたけれど ちゃんと  孵化したんだなって 空に  感謝した 【すりおろした林檎】  初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、小原 明季さん。 【空メールのやりとり】 同サイトに投稿-初出(2013/01/22(Tue) タイトルは、かんなさん ---------------------------- [自由詩] やさしいちえのわ/るるりら[2013年1月29日7時46分] なべなべそこぬけ そこがぬけたら  つながれた両手のうちのどちらかを くぐる ふたり一組になって遊ぶこともあれば 大人数で輪になって歌いながら そこがぬけたら そこぬけに笑う それが ちえのわ遊びだと信じていた 引っ越しをして  ちえのわ遊びをする友達もいなくなって 父さんに「ちえのわ遊びして」ってせがむと 父さんは むずかしい顔をして翌日 たくさんの知恵の輪を持って帰ってきた わたしがそこぬけのお唄を教えてあげたら お父さんの体は びっくりするくらい大きくて むちゃくちゃになって 困りながら笑ってたけど 毎週 なにか どこかで知恵の輪みたいなものをさがしてきた 「ほんとうは これが知恵の輪なんだよ」 なかには 父さん自作の知恵の輪もあったみたい でも私ったら 見向きもしなかった それには そこぬけさが 足りてなかったから それより むちゃくちゃに 無理のあった父さんとの ちえのわ遊びは バカみたいに そこぬけな 素敵さだった 鉄くずでできた知恵の輪は  この世の常識ってものの歪つさと だけど でもやっぱり この世には やさしいさってものがあるってことを知る鍵だった ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、ほかけさん ---------------------------- [自由詩] 白が虹むところ/るるりら[2013年1月31日8時40分] 川が かろやかに ながれている 人々は みな 黒い衣装を着て 積み重ねてきた色とりどりの思い出が しずかに ながれていくことに 心を寄せている 美しい心でありたいと焦る日々を埋葬し 醜い心のままで自身を黒く装う私の前を 光の川が流れる 誠実だった という言葉が 参列者の共通の思いとして 浮かぶ 川の 光の 故郷に あのかたが 帰って行かれた わたしたちに 光をふりまきながら ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、かんなさんです。 ---------------------------- [自由詩]さんかんびのオーロラ/るるりら[2013年2月6日21時17分] 空を押し上げて ひろげた 手のひらに オーロラが見えますか 空を押し広げて ひろげた その腕を たからかに 突き上げる あれは 父さんの仕事場の さんかんび お船にのりました 橋をバックに 手をあげて みんなで 「オーロラ」って叫んだら カメラのシャッターの ガシャリっていう音がした 写真ができた日には あらぴっくり 橋を持ち上げ 下から支える あの子や私 さんかんびの あの日の お船は  とおい とおい お国に行ったと、聞きました わたしの知らない空に きらめく 御空のカーテンや しらない鳥の歌声に出会う旅に 出かけたのでしょう わたしの しらない世界のものどもよ わたしの見える世界のものどもよ どこにいても なにをしていても わたしが 「オーロラ」って叫ぶとき わたしは いつでも わたしは  空を 押し開く ******************************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、4WDさんです。 ---------------------------- [自由詩]各駅停車で、春に向かう/るるりら[2013年2月11日23時37分] 各駅停車で、春に向かう このあたりは 四十年前より 毒々しい 昔はこの辺りのことを 武蔵といった 私は相変わらず 色白だ 恋人の八雲が人間の女にネコババされるのでの時間を いつくしんでいる私なのだ その昔は わたしとて さまざまな場所に居を構えていたが このあたりが武蔵と言われていた頃に 私の正体をあばいた男がいた  おゆきと 呼んでくれたのは好いが 私を見限り 男は 別の女と所帯をもったという 八雲め わたしを 雪女と知っての 狼藉か しかし この武蔵にさえ 住んでおれば いつか 男にあえる気がして 男の名前の八雲にあやかり この青梅線沿線の八幸ハイツに住んでおる 八雲は とおのむかしに死んだと聞いた 恋の引力か このあたりには たまに 八雲に似た男も このあたりには いまでも現れる  米軍の基地があるのだ ヒートアイルランド現象による気候の変化が身に応える アパートの防音防壁工事は完璧だ 隙間風がすくないことは 人間には良いことなのだろう だが冷気が この身の元である このおゆきには 耐え難い 青色吐息で まだ春の来ぬ駅を徘徊する 出発は この拝島 拝島駅  福生駅 このあたりは 八雲さんに似た おひとが ときより乗車する 羽村駅 このあたりで たそがれているおひとが 河辺駅 八雲さんの生まれ変わりやもしれぬ 東青梅駅 梅の花が咲くまでは天国だ 青梅駅 このあたりの梅の花の香が すこしでも匂い立つなら 春だ 宮ノ平駅 御家賃を一年分 全納せねばならぬ       日向和田駅 ひなたわだのように かるくなる わが恋心 石神前駅 意思が人と女を つくるのだ 二俣尾駅 八雲さんが 人間と睦んだことくらいは知っておる 軍畑駅 修羅のような いくさ場のような この心 沢井駅 それでも澤の水は 私を鎮める 御嶽駅 みたけまでのこの駅までの すべてが 無人駅になったのは この私のせいだ 霊力が ひとけを避けさせたのだ そんな私だが 春のたびに 体が 八雲さんを思うて その温かさに あつうなり 思うほどに 喜びで この身は ゆるんでしまう すっかり消え果てて しかしまた  冬が近づくと あのアパートで 息を吹き返す  私の正体は雪女 わたしは いつしか春がスキになってしまった雪女 冬の間は いそがしい 春が遠い日は、各駅停車で あの人の面影を探す 米軍とやらが 最近 また この沿線に増えてきた  うれしゅうてならぬ お会いしたや八雲さま あの席の おひとなどは まさしく八雲さまではなかろうか こんど 会ったなら 離しはすまい ああ いま またひとつ 青梅の梅の花が 一輪咲こうとしている 春までは  各駅停車でいこう **************************************************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたものに 若干の 修正を加えました。   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、紅茶花太郎さん ---------------------------- [携帯写真+詩]球体の印象/るるりら[2013年2月23日18時48分] わたくし獰猛な檸檬 チューニングするチュー      リップ  いいかげんの はちゃめちゃさで  いい加減をさがしてる わたくし球体ですの  清潔な球体の切り口 ビタミンCするクチビル 息をほそくして タンポポに おくるなら 大地を吸い込んだ種子が まるく踊りながら 飛んでゆく  いいかげんな はちゃめちゃさに  いい加減の 温度をのせて わたくし球体ですの みんな発芽を待っている 切なる思いの親切 おせっかいなわたしは あなたには やいば だけど もうすこしだけ ほんのすこしだけ 温度を感じて わたしのことを球体だと 思うとき そんな あなたも 球体ですの **************************************************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたものに 若干の (チューリップの間に スペースいれてます。) 修正を加えました。   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは ふかまちゆかさん です。 ---------------------------- [自由詩]かりん島のここここ鳥/るるりら[2013年2月26日7時48分] かりん  島の こここ こ鳥   恍惚のかおり 蜜のにおいに むせ返る   夜咲く花は たれのため   こここ鳥は 花の中をぬけだして   歌声のほうへ朝日とともに 飛んでくる   一斉に飛んでくる       こ, こ, ここ,ここ,こここ,こここ........ かりん  祷の こここ こ嗚呼     鳥が人の歌を真似て 謳っている     人がそれに答えて 謳っている     おなじリズムで 謳っている              こ, こ, ここ,ここ,こここ,こここ........      夜のとばりが落ちるころ      ことりは 話を咥えて飛んでゆく      高い木の上の花咲くほうへ      お話を咥えて飛んでゆく          こ, こ, ここ,ここ,こここ,こここ........                   **************************************************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、 クローバー さんです。 ---------------------------- [自由詩]幻影のバラード/るるりら[2013年3月6日20時50分] 少女は ある年の四月からというもの バラードの中のヤマネだった 両親と同じ名ではなく ヤマネだった 冬眠のように まどろんで 春眠のような いつくしみで育てられ ひかりが はねようが とりが むれをなそうが いつしか少女は ヤマネとなっていた 冬眠から目覚めたヤマネは 黒い瞳を くりくりさせながら 極彩色文化のビルディングの中に出かけ 黒目がちにアニメ声で携帯電話の売り子をするが 気が付くと ビルディングは すっかり緑に覆われ インパラがビルとビルの軒から軒に跳ねて  屋上まで 駆け上がっていたりしている ひかりがビルの中で どんなに はねようが ビルの中ではスピーカーの音が割れようが 窓の外でオスの始祖鳥は 大空で恋敵を競り合い 植物さえ甘くさせる恋の歌を 高らかに歌っている 少女はというと、バラードの中で ヤマネとよばれつづけ 上司のタヌキとともに 大トラとも戦った  しにそうでしにそうで しにそうなバラード そんな ほうらつな野生のバラードも いつしか終息を迎える ふたたび訪れる しばしの冬 ヤマネには 幸せとは何かは解らない  けれど「わたしって幸せ」が口癖だ  ただ ほんとうは つぎに目覚めるときは 別の生き方を 望んでいる うつくしくも切ないバラードのこのあとは もっと高揚するラブソングが 良い そんなことを願いながらヤマネは寝息をたてる 冬眠のように まどろんで 春眠のような いつくしみで  ロングブレスで愛を 愛を 春を いざなう  ※ヤマネとは 山に棲む小型哺乳類で 山鼠、冬眠鼠とも言います。 **************************************************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの    タイトルは、 クローバー さんです。 ---------------------------- [自由詩]小宇宙から流れくる/るるりら[2013年3月10日1時22分] プラナリアに会いたい 永遠の命かもしれないプラナリア 世界は、春霞ではない 黄砂だ 降り注いでいる微妙な沈鬱が 世界を覆っている それでも 季節はまだ めぐっている 水仙の花は 春を告げている  土を掘り起こせば 明るみにでた みみずがあわてて 土にもぐる 土を食べ土を豊かにして土を押し出すために みみずは土に生きる術をもとめ 人々は空をみあげ 出口を探している プラナリアは みみずよりさらに 単純な構造の生き物だ なんど切断しても 切断した断片のひとつひとつが 再生しつづけ 栄養状態さえよければ けして死ぬことがないという プラナリアには 穴はひとつしかない 食べた口から 体に不要なものを吐き出すらしい プラナリアには出口なんて 必要ない 元来た道を辿れば良いのだから 色あせない永遠の命 プラナリア 人も みみずさえ いきやすさを探して出口を探してばかりいるというのに 永遠の別名 プラナリア 土をほりおこしても 永遠は出てこない 空を仰いでも 永遠の清さはない 出口の必要のないプラナリア 時の中という 永遠ではない小宇宙 ひとつの命という 永遠ではない小宇宙 「プラナリア」と ちいさく つぶやけば わたしに なにか尊い軸のようなものが ながれくる 黄砂にもゆるがない 力を 体の全部で 受け止める ********************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの タイトルは、aoba_3Kさんです。 ---------------------------- [自由詩]【さくらの ゆくえ その一 開花編 】三編のオムニバス/るるりら[2013年3月18日0時11分] 【 そのあとがある 】 「ソ」の次は 音叉の「ラ」の音が 来るよ     さあ チューニングしようぜ 空を超えよう     人間という人間の間を孤独を 抜けよう         【 桜の木の下で想う 】 ブラスバンド部の熱が いちはやく 光のオクターブを 一気にあげて 桜の道のひかりと 響きあう 春雨が校舎をぬらす 制服の紺をすこしぬらす 小雨にむかって桜が咲く 幹が過去を吸い上げて 花弁にあらわになる 小雨が乾けば 別れの言葉にならない想いが 空に舞う わすれるこころ こどものこころ いのりのこころ 風に          舞う 【140文字以内で書いてください】      ふたりのアラベスク ひとつの椅子にふたりで座った      リバルディの春より はじけてた      艶書ではないのです      忘れられないのです      わずかばかり       わたしに入ってきた息      あれは 接吻でしょうか      女子どうしでは 陳腐で滑稽でしようか      どう聞いたら良いものか      型にいれるなら 答えやすいですか twitterは「さえずり・興奮」っていう意味なんだって      リバルディの春より わたしを はじく詰問です      カンセツキッスではなくて 連弾の合間のあの      あれは なに? 140文字以内で書いてください ********************************************* ********************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたものです。   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 今回は、三つの作品を 一気に公開させていただきました。 ★140文字以内で書いてください / 題名提供は 4WDさん ★桜の木の下で想う / 題名提供は かんなさん ★そのあとがある / 題名提供は ほかけさん ---------------------------- [自由詩]朗読喫茶/るるりら[2013年3月22日14時52分] 喫茶店が次々に店を閉じたというのに この店だけは流行っています 屋根すらない喫茶なのです 白木蓮を囲んで 簡単な椅子が置かれています 清水から作った ささやかな飲み物があるだけの店です 土筆が芽を出すころになると  喫茶店の中庭の 白木蓮の花 蜀台に灯りがともるように 白木蓮の花が 咲きますと あめやかな その花弁に 文字が 浮き出てくるのでございます たいていは 恋の詩が うきでてまいります その文字を 恋人に聴かせてあげると かならず その夜は 詩のとおりの物語を夢にみるのでございます やさしい詩です その人にとって  もっとも やさしい夢が現れるのでございます 飼っている犬に 聞かせてあげるなら その犬がもっとも幸せな時間の夢をみるのでございます その言葉を聞いたものも 喋ったものも 同じ夢をみるのでございます そして同じように 微笑むのでございます あめやかな声色なんぞで話をしたことなどない人ですら そのようなことがおこるので ございますから まだまだ この世は 常盤色でございます ********************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、aoba_3Kさんです。 ---------------------------- [自由詩]花びらの荷づくり/るるりら[2013年3月26日17時39分] 匣が匣として閉じられ いづれ花が華として咲く あわい希望を閉じ込める 包丁は包丁として布に包む 棘が棘として働くように 強い怒りはやわらかくしまう 箪笥の隅でみつけた秘密が 甘酸っぱいなら心の中にしまう 春の日は 茶巾寿司の中にすこし すこし しのばせておく すると さくらの はなびらが どこからともなく舞い下りて わたしは やさしく おもいでの中の あの日にかえる ********************************************* ※匣は、【はこ】と読んでくださいませ。美しい文字だと思っておりまして     いつか使ってみたかったのです。 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの お題は かんなさんです。   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 ---------------------------- [自由詩]ブリキの森と紙の古城とウルサい湖畔の魔法/るるりら[2013年4月1日1時52分] □報告者/ るるりら -(2013/04/01(Mon) 01:49:27) このほど発掘された石版には 解読の結果、このように記されていた。 *** なんどとなく残酷な人生の谷間に立たされて 命には限界があることを知らされようとも 終わりのあることを忘れてしまう おろかものたちよ 瓦礫の廃墟と化した街に おまえらが植えた森は実り 薔薇の花が咲いても その薔薇には 匂いも無い この世の花は すべて木質化し やわらかい性質だと思って触れても 血が通わぬ物ばかり  それでも 信じるのだ  命の漲る世界が来ることを 空を見上げるのだ 脳天のずっと上に そなたらの頭蓋骨と同じとても似た性質を併せ持つ岩があり 脳天のずっと上には 清涼で雄大な命の湖がある 今日も命の種が降り注いでおる そなたらの頭蓋骨は珊瑚でできているが あえかな 虹色の縞模様が空に無数に出でて あやかしの歌 響くとき いずれ あの空の切り口から オレンジともトパーズ色とも言えぬ 柑橘系の発光色 飛び散り すべての時空を つつむ 魔法の雨が降ろうぞ さあ ユビキタス ひとさしゆびに 止まれ雲 喰らえクラウド 天地がひっくり返えり いずれ そなたらは ブリキと同じ匂いの血が通うであろう わらわはパルプでできた古城に住む わらわの説く 命の永遠を 信じる人々がいかに数すくなくなろうとも 人の骨が珊瑚になっている現在は今だけの幻想である 人の心がどんなに粗悪で われらの体が いかに木質化しようとも いずれ われらには ブリキ似た匂いの血が通うであろう     愛を     愛を学ぶがよい     それがすべてじゃ     そこから魔法が湧き上がる *** 以上が石版に明記されていた内容を解読した結果である。 尚 この石版と ともに葬られていた人骨を調査した結果 人骨の分析結果は 珊瑚の性質と同様であったが 政府はその事実を なぜか現在も隠したままである                    2013 4 01***                                  ---------------------------- [自由詩]【さくらの ゆくえ  その二 桜陰編】 三篇/るるりら[2013年4月17日7時51分] 【 桜の散った街を往く 】 立ち止まるしかない 踏切では たちどころに 遮断機がおりて 多くの人の思いが 通り過ぎる 伝えようとした言葉が 伝えられないときは 立ち止まるしかない 遮断機が降りているのだ ボケの花が一斉に ほざき 轟音が行く手を はばむ 天然だし と ちいさく つぶやいても 聞こえない 桜が舞い上がる こまおくりの車窓が走る わたしの世界を あなたの世界を 風が吹きぬけて あなたとわたしの世界のすべてを 桜の花びらが舞う 遮断機がやさしく上がり わたしは あなたに手をさしのべて わたしたちの心の中に 沈殿してゆく花びらを 一歩つづ 確かめながら 歩く      【葉桜君は微睡んでます】       芝生の堤が 目の高さに 続いて       高低を描き 連続する さくら       今年も 並木は わらいの波頭       通り過ぎる顔 すべて ほの明るい       いとけなく ほどけて 満開に誇る       花のしたで あのとき きみはいった       「もっと散るといいのに」       しゃりんが回転して 音響が少年になる       しゃせいの少女は 萌える葉を指さした       自転車は走る 葉桜の路を       葉桜の好きな 少女に逢うため       道も石畳もピンクに 萌え出ずる漣       「もっと 散ると いいのに」       まちあわせは あの桜の木       薄く緑に透ける陰 【成長を見守る春】 サクラ サクの電報を心待ちにしてたのだよと言っていたのは お婆さま世代 サイタ サイタとウタウ そのあとに桜がつづくのは 桜世代 サイタ サイタとウタウ そのあとにチューリップがつづくならチューリップ世代                もうすぐ きみは 旅立ちの時 婆さまは 桜の歌を きみに うたっている 母さんは チューリップの歌を うたっている 元気でとか 風邪ひくなよとか 歯みがけよとか ドリフターズのようなことしか こどもだったころのようにしか あいらしいとしか いつくしむしか あのちいさかった娘がねぇとか ありったけの この思いよ 繊毛になれ さりげなく うつくしい花が かならず もっているもの さりげなく 咲く花の根のように すがしく白く透明な 繊毛になれ   たなびく歌よ サイタ サイタの リフレインよ きみの背中を追え 春の風を切る きみの 繊毛になれ  *********************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたものです。   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 今回は、三つの作品を まとめました、 お題を下さった方々のお名前は 【桜の散った街を往く】kauzakさん 【葉桜君は微睡んでます】aoba_3Kさん 【成長を見守る春】aoba_3Kさんより いただきました。                 ---------------------------- [自由詩]やわらかい、かわいい、きれい/るるりら[2013年5月1日1時11分] 体重計にのれたなら 勝利 のれないなら 敗北 豚の体脂肪率は十四パーセント程度と聞いて 愕然とする そうすると 私は豚ではなく  豚よりも ぷるるんとしている  ひとつの過ちが重なって 簡単な計測器におびえ 誤作動が私を造ってくるからか ものの見の方すら ぶれてくる このままの体脂肪率だと ゼリーのように ぷるるんと膨張した 豚 いろじろな私は 透明感たっぷりなゼリーのように  風に ゆさぶられる ≪そうだ 花水木になろう≫ 水木だけは勝利して 花になると誓う 水曜と木曜に体重計の上で 静かに 呼吸してみる やわらかい、とうめいな こぶた かわいい、かわいそうな ふるえ きれいに、さっぱりと わりきって ふるえる体重計の針を 見つめる ******************************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの お題は かんなさんです。   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 ---------------------------- [自由詩]符号階段の謎/るるりら[2013年5月9日11時05分] 秘密にしておいたほうが 良い だれにも明らかな回答は 無い アーガイルチェックに 奇跡の鍵があるのだ 世界の全てが斜めになる角度に 虹が現れるように 千羽鶴を折るなら  菱形を指で  できるだけ精緻に角と角をあわせたほうが いい ポイントを きめて 躊躇わなず 心を無にすると いい 住まうなら このマンションだけは 辞めておいたほうがよいと いうわりには その理由は 誰も口にしなかった このあたりのマンション群では 人はだれも死なない だから 棺桶が入る大きさのエレベーターも 階段もない 昇るなら 奇跡の階段だけは 辞めておいたほうがよいと 言うわけは この階段は 地獄のように 長い階段だ 昇るほどにあたらしい景色が すこしつづ増える   それでなくとも どこを眺めても勾配のない地勢のところはない この地域の この階段は 重力に脅かされて 足を震えさせる 最後の一段を昇るとき 奇跡の鍵が 僕の手には あるだろう それまで どれだけ ねがいを かけたか     そ      れ       い        か         でもなく         そもそも         むだなく         いとしく  おもうとき すべてが むくわれて 僕のあげた アーガイルチェックの服を着た君が いつも そこにいる   笑顔   かがやく謎         ********************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、aoba_3Kさんです。 ---------------------------- [自由詩]模倣と擬態/るるりら[2013年5月12日0時49分] ひとり さまよう  おひとりさま 酔う 大海を さまよう  いっぴきのいか あたりのいろに   自身を染めながら いかがなものか 敵があらわれた いかのからだは またたまくに変化し あたりの色形になる いかんせん 敵もさるもの いかの誤魔化しは やぶられた いかは ついに 吐く、イカ墨を。 いかすみは 浪間にゆれて いかのように伸びる いかばかりか いかのような いいにおいすらする そのイカ墨  いやはやこれでは さすがの敵も いかの墨の中に その身をつっこみ いかは みごと 敵をあざむく なんと いかした いかの うごき。嗚呼 女性ならだれでも惚れる 「いかが かしら あなたも おひとりかしら」 いかの手足は海流を読む いかの手足がすこしふれあう いかには いかにも時間がなくて 潮流の隙間で愛をはぐくみ またたくまに そのすぐれた洞察で ふたりは睦み またたくまに お互いの海を確認し ふたりは波間にスイングし 波の歌を 模倣を 伝達しあい 月の光を 模倣し 伝達しあい いかした いかとして さらに いきぬく    ********************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、こひもともひこさんです。 ---------------------------- [自由詩]天使は川辺にて/るるりら[2013年5月30日9時42分] しずかな つばさの抑揚に 呼吸を あわしながら歩きます しろさの きわだつ蝶を 追うとき わたしの 肩甲骨も 空を感じてました 「おたんぽぽしてるの ふうてん とばそ」 ちいさいひとが 川岸の野草から   ひょっこり 現れて ちいさいひとの ことばは おとが ひとつ おおかったりするのです おとがどこか はずれていたりもするのです ゆれるのです ことばも 草のように風の中です 姫ジョオンも ゆれています 蝶の軌跡も ゆらいでます ちいさいひとの 肩が それにあわせて ゆれています わたしの肩甲骨も ゆれています すこしばかり歩いたでしょうか 藪を抜けると そこは 川 刹那 水音が消え 光がわたしを 足元から照り返し わたしの指を 五つのやわらかい五本の指が にぎってくれ 笑いあったとき わたしは ふわと浮上したのでした 帽子が ふわと 飛んだだけなのに わたしとその子の 体が 浮いたように感じたのは ほんとうのような気がします **************************** 即興ゴルコンダ(仮)に投稿させていただいたものに若干の修正を加えました。http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi 御題は ナナ・クマスキーさんです。 ---------------------------- [自由詩]抹茶アイスと滝/るるりら[2013年6月4日7時54分] 奈落の底から 天上世界にまで突き抜ける滝が 私の体の中に 降りてゆく これまで 沈鬱がわたしを咥えたまま 離そうとしなかった 私の目の前に ただ黙って耐えていた私に 滝が現れたわ 狂気には至らなかったという 悲しい自負とは うらはらに 死におびえ 押し黙って 戦っていた 私に かなしむほどのことではないと 実際 狂いはしなかったと  妙な自負を 言い聞かせている私に ほんとうは負けそうな私の目の前に さしだされた ソフトクリームの やさしげな らせんの形 一口その螺旋に 舌が触れたとき 凝り固まった苦しみがなんであったのかを 忘れてしまった 口の中でひろがる そのアイスは まちがいなくしっかりとした 嗚呼、抹茶の味のソフトクリーム ********************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの   http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、aoba_3Kさんです。 ---------------------------- [自由詩]バンジージャンプを1階から/るるりら[2013年6月6日20時45分]  チャレンジ ソフトなら 30分で150kカロリー  チャレンジ ハードなら 30分で300kカロリーの消費がみこめます。  ただ、究極のアンチエイジングなら もっと良い方法があります。  チャレンジ バードでしょう。バード、鳥ですね。  そうです。飛びましょう。 ここまでの段階にくるまでの私は、毎日 すこしづつの ジョギングでした。 毎日続けると なにやら相乗効果でしょうか。大地や体の底から謎の力が 湧いてくるようになりました。ランニングハイという状況なのかもしれません。しかしあるとき 半跏思惟像のように座る コーチの言葉に、 良しっ。チャレンジ バード?挑戦鳥だかなんだかしらないが、  なんでも やってみようと 思ったのです。 渡された地図の通りに行きますと、そこは高層ビルでした。一階のエントランスの美しいこと、さまざまな植物の饗宴でした。 奥に進むと、中央に 透明な扉で仕切られた方丈の部屋があり、扉は すっと開きます。そこに コーチは居ました。最初、メソットのことを教えてくれた時と同じです。 またも 半跏姿勢。そして、澄んだ声で私に こう話を はじめました。 「わたしたちには、尾があります。」 「わたしたちが 尾を失ったから 尾てい骨があるのだと言われていますが、違います。」   「普段は、見えないし、感じない。ただそれだけのことです。」 「今の あなたには、見えるし 感じられるはず です。」 「目を閉じて 尾を念じたあと、おしりに手を あててみてください。」 すると、あるのでした。尾が、しっかりと。それも、どこまで続いているか解らないほど、ながぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい、尾なのです。 ながすぎて、尾の先端は 見えません。 「この尾があるから 大丈夫です。これを使って、 バンジージャンプを行います。やってみたら すぐ解ることですが、 どんなアンチエイジングより 及ばないほどの 若返る経験になります。」 「さあ、さっさく やってみましょう。今日は、初日ですから、一階の踊り場から 飛び降りて あの美しいエントランスに 降りるつもりでいてください。 段差は そんなにないでしょ?では、はじめます。」 わたしは、尾の先端がどこまで続いているかが 気になったものの、 どう考えても 普通の人間の運動神経さえあれば、怪我には なりそうもない高さだと思えたので、今日のところは 素直に コーチの指示にしたがってみることに しました。  コーチは 説明を つづけます。 「一番 大切なことは、たえず 尾の先端を心で追うことが大切です。 下や周りの景色を観察しすぎるのは、よくありませんよ。」  そして、わたしは、尾の先端をみながら 後ろ向きに 「えいや」と飛び降りました。 ↓ うわ ↓え ↓景色が おそろしく変わるんですけど?   ↓ ゆうか。 ↓ わたしの手も足もなんだか ちいさく なってきたんですけど? ↓ 夜とか昼とか めまぐるしく 景色が変るんですけど? ↓ あ いけね。そっか 尾の先端をさがそう。見えないけど、 ↓↑のほうで、尾の先端って、 星みたいですけど? ↓めまぐるしく 先端のあるだろう点を中心に  ↓星みたいなものが 旋回しているんですけど? ↓ ゆうか。景色がさっきから、冬になったり 夏になったり   めまぐるしんですけど? ↓ ゆうか なかなか 地面に つかないんですけど、 地面ってどこですか?     ゆうか 床は? じ め ↓ ん ↓ ↑  → あ あがりはじめたかも。上昇し始めた。地面に足つかなかったですけど?へ?  びよよよよよよよよよよよよよ〜ん。上昇  そして、すとん。と、戻ってきました。 コーチは あいかわらず、半跏思惟像のような 御姿。そして、おだやかに 説明をされた。 「あなたは、ほんの、四千年の旅をしてきました。今回は一階からの バンジーでしたが、次回は 二階から 行いますよ。 ************************************************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは 加勢さんです。 ---------------------------- [自由詩]ベイベー、都市化しないで/るるりら[2013年6月10日12時59分] 「ロケ地が このビルなんてさ」 ドラマのロケ地で実際に働く 女性は女優ではない 朝6時入室 入室ご蛍光灯スイッチをすべてON 17時 続々と「おつかれ」とか言い合い  ドアの向こうに仕事の仲間は きえてゆく たったひとりになった二十四階の24時  ビルの照明が自動で消える バスン....OFF......暗闇。 この時間は かならず東京タワーに面した場所で 夜景を見る このビルと東京タワーが同時に照明を落とすのを 観るために  24時前は 東京タワーの照明が もっとも美しい。 24時きっかりに東京タワーと このビルは光を失う。 24時直前の しばしの幻想。 東京タワーと自分の目線が同じだという幻想のシンデレラ ガラスの靴を履いても姫の 素足が さらされなかった理由は ガラスの靴は、発光していたに違いないなどと追想。 魔法の発光により 光か光を呼び  幸せを呼びよせなののだああ などとさらに陶酔。 現代に生きるイキテレラの足元は こんなに うつくしいのだあああ 日本の電力事情は 毎日が舞踏会なのだあ 24時きっかりに仕事は終えるしかないので よれよれの姿となり家に帰るのだあ 二時間かけて帰宅。 明日の朝六時には ふたたび このビル。 二時には寝て、翌朝は毎日 四時起きなのだあ。 私のマンションで 投身自殺があったらしいのだ。 その理由は不明なのだ。 シンダとだけ聞かされても 近所づいあいなんて無いのだ。 わたしが孤独につぶれても だれも 気づきもしないってことだ。 眠らない都市 東京。 都市化は毎日が舞踏会。 イキテレラは これからも 生きてられるの?  ******************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは 紅茶くんです。 ---------------------------- [自由詩]あの猫の名前はマダナイっていうんだ/るるりら[2013年6月15日5時49分] *壱*マダナイへの手紙 「あの猫の名前はマダナイっていうんだ」と、教えてくれた人がいた。 ああ うわさは聞いたことがある。 明治の文豪の家に 飼われていたという 噂だった。 それで、手紙を書いた。 苗字をわすれたい私に みゃうと言ってくれてありがとう。 あなたに明治の文豪が名前をつけることは できなかった。 けれど、あなたの名前は マダナイです。 わたしは、生題ではなく未無いでもなくマダナイという名を 手がかりに旅をしています。 周極星の話を知っていますか。北極星のことです。 ラスコー洞窟にも 夏の大三角の星がありました。 ベェガも アルタイも いつの季節を問わず 空にあったことがあります。 あの星が周極星だったころのことを おぼえています。 織女星が北極星だったのです。 いまじゃあ織姫は周極星なんかじゃなくて  恋愛の象徴として夏の大空で またたいています。  ねえマダナイ、あなたも たった独りだったことを知っています。 いまは さびしくありませんか? でも 今日は、手紙が描けて うれしかったです。 猫のマダナイ ありがとう。 また 君とは 逢える気がします。 手紙のそばに にぼしを置いておきます。 わたしは もう眠いけれど、 朝になったら ナマダイが来てくれると嬉しいな。 *弐*奇跡 朝がくると、私は向学心に目覚めていた。 自然と図書館行きの電車に乗った。 中央図書館の玄関に、ナマダイのことが書かれているではないか。   ********企画展「復刻版で味わう日本近代文学展******************** *明治・大正・昭和初期に出版された日本文学の名著を *復刻版でご紹介します。 * *復刻版のほか鈴木三重吉の『千代紙』(明治40年)、三重吉の師 *夏目漱石の『吾輩ハ猫デアル』(上巻・明治38、中巻・同39年)、 *『三四郎』(明治42年 著者署名入)の初版本もあわせて展示します。 *****************************広島中央図書館********************* *参*風貌 ナマダイは、エジプトの猫なのだろうか。その風貌はまるでパピルスへの記載のようだ。 たしかな生命力で じっと こちらを見ていた。 「どこで生れたかとんと見当がつかぬ。エジプトだったかもしれぬな。」と、彼は言った。 「そなた、いま 自身を織姫じゃと おもうたであろう?」 そんなことを ナマダイに、言われてしまったので 「me」と 猫語で応え、ショーケースごしにナマダイの頭をなでてやった。ナマダイの顔は こわおもてだった。けれど、その つぶらな目は 私の心の闇の底を やさしく 照らした。  ***************************************************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に投稿。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは 家政さんです。 ---------------------------- [自由詩] お洒落な 言葉なんて要らない/るるりら[2013年6月20日17時07分] お洒落な 満月なんて要らない 雨が降りそうだし ブルームーンなんて お洒落な言葉は要らない  青い満月をみたら 幸せになれるなんていう 言葉は要らない 要らない言葉は 小鳥にしか読めないほどの箱につめて鍵をかける 台風から守る 豪雪から守る 節操のない行いから守る やるせなさから ちいさな本を綺麗な小箱にいれて仕舞う 仕舞われた小箱の中は ほっそりと そぎおとされた言葉達のパラダイス すくない言葉たちが 満ちたりて踊っている お洒落な言葉なんて 要らない だけど いつかきっと 大好きなあなたの心の中で わたしの秘密の言葉が発芽しますようにと きょうも 言葉を そぎおとして 箱に仕舞う ***************** ブルームーンとは 二つの意味があります。 ひとつは、気象状況がそろい 青く光ってみえる月のことです。 もうひとつは、月に二度 満月がある場合に 最初の月を ファーストムーンといい 二度目の満月を ブルームーンと呼びます。今 6月23日は 2度目の満月です。 ***************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に投稿。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは すずこさんです。         ---------------------------- [自由詩]紫陽花と砂糖菓子の関係/るるりら[2013年6月24日18時36分] 雨が硝子を 舐めるので 時間すら 舐めまわすので 歩くことの意味や 進むことの意味も舐めるので この世界には もう 紫陽花しかありません 飴細工のように 雨に舐められて 窓の向こうの景色は いつもゆがんで たたずむことの意味や すべての言葉の意味も ゆがみます ただ紫陽花だけが 四角四面の彩を ひとつひとつ ひろげています ある日 目にも あざやかな赤い花が咲きました 血潮の飛沫のようです しかし 血の匂いなどは いたしません はて なんの においでしょう。懐かしい匂いです  かすかに甘い。そうそう これは 血が乳となった日の匂いと似ています 世界は もはや 砂糖菓子になりました 人も花も建物も 舐めつくされて 乳よりも甘く薫っています ***************************************************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に投稿。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは 星子アヤノさんです。 ---------------------------- [自由詩]流れ星が いま落ちた (他二編)/るるりら[2013年7月5日12時00分]      「 流れ星がいま落ちた 」 0の あすなろが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 1の はじまりが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 2の なおざりが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 3の もんじゅのちえが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 4の しあわせが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 5の てのひらが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 6の みちなりが あっけなり逝ったとき 流れ星が落ちた 7の たいかいが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 8の むさしが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 9の くらやみが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 10の とうかんかくが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 11の チームワークが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 12の つきひが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 13の かいだんが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 14の ソネットが あっけなく逝ったとき 流れ星が落ちた 15の いちごいちえが あっけなく 逝ったとき 流れ星が落ちた 16の 詩かけ誌が あっけなく 逝ったとき 流れ星が落ちた   なにもなくなって どこかの あなたと わたしは    いまも そらを みあげる          「絶対に大人にならないこと!」 17 の誓いは ゆがんだ大人にならないことだった 18 の卒業証 当時の学内新聞がはさんであり 19 のときも 好きだった男子がコメントを載せていた 20 のときの 「勉強しろ」が こだまする 21 のときの いのちがけの あそび 22 のときの 恋愛の意味不明さ 23 のときの 本気 24 のときの 人間不信 25 のときには 女性誌に書かれている【プチ大人】が、子供に 思え 26 のときは 大人だと 思った   おとなだなんて 幻想だった たいせつなひとと わたしは   いまも そらを みあげる         「恋は宇宙的な活力である。」 ながれぼしが おちて わたしは このからだに いのちを身籠った その子は わたしが 触れられる 宇宙の可視化であり 匂いであり わたしは その子の 餌であり玩具であり 前をゆく人になった 連綿とつづいた ほそい 命の糸が私であり ふるえながら 恋のような情熱を絶えず放出したがっている けれど じたばたしているときは わからない 目を閉じているときだけ 見えることがある 負けて 起きあがけず 目をとじているときだけ 恋のような情熱が 星の永遠が しずかに わたしに よりそう  からだが こころが 壊れた玩具の日にだけ  たかみの あの宇宙の力は  やさしい。 そして 私は ほうき星のように みなぎる ************************************************ 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)より お題をいただきました。 現代詩フォーラムに投稿させていただいた詩は、即興ゴルコンダ(仮)に投稿したものを 大きく改編しました。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 お題提供者のみなさまの名前一覧 ★流れ星がいま落ちた / 小原 明季さん ★絶対に大人にならないこと! / ほかけさん ★恋は宇宙的な活力である。 / るるりら ---------------------------- [自由詩]滑らかな試金石/るるりら[2013年7月13日0時05分] 夜の無人島は試金石のようだ あなたの口が おさかなみたいに  「ほら みてごらん海蛍だよ」とうごいて 漆黒に さよふく海の限りの無さを その生き物は 敬虔な光りで流れる 潮に洗われているのか それとも イキモノが海を 洗っているのか 潮は遠浅 漆黒の空は 滑らかにうねる闇の海は 大地を 磨いているのか いや この潮風に 磨かれているのは だれあろう  わたしでもある なんて なめらかに わたしをつつむ 凪だろう なんて なめらかに うごく漆黒の海だろう 海を すこしだけ あしでうごかせば わたしに 呼応して 海ほたるの光が またたく しずかだ ******************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、aoba_3Kさんです。 ---------------------------- [自由詩]食べ物を残すと祟られるのだろうか/るるりら[2013年7月18日16時46分] 問【食べ物を残すと祟られるのだろうか】 答【ライオンに きいてみました】 ライオンとして 食べ残しは ハイエナにあげました すてきな死肉でしたが ハイエナは かみさまに感謝したでしよう 先日は ハイエナの食べ残しからも いただきました すてきな死肉でしたが ぼくのつけた傷跡がついてました 古いみたいです こどもたちが飢えてます 最初の一匹が死にました すてきな死肉なので  たべました ライオンとして 食べ残しは ハイエナにあげました ある日 ズドンと音がして  僕は たおれました ぼくだって すてきな死肉なのに 食べ物じゃないといって 僕は皮だけのこされて 剥製となりました いつの日か  素敵な死肉に なりたかったです *(2013/07/18(Thu) 11:07:39  こんにちわ たったいま 鱈腹さんからも回答が届きました。 問【食べ物を残すと祟られるのだろうか】 答【鱈腹さんに 聞いてみました】 黒烏龍茶は 特保です 腹黒資金運用は 安全のためです 大阪証券取引所の時代から いつでも満腹めざしてきました むかしは手振りで 銘柄を指図してました すこしは体をつかいました 利口です ビックマウスではありません  けして満足することのない底なしの欲望ですから棄権はありません だれの目からも でっぱった腹には 共謀する欲の皮コバンザメがいます いまでは うすっぺらい手のひらサイズのスマホで資金運用です 全部 いただきます どんな量でも 消化します あらゆるメディアを活用し 問題を解決し すべての海岸の魚も 完食します なにも問題ありません リアスの海の魚も 例外ではありません ******************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは ぎわらさんです。 ---------------------------- [自由詩]星からおちた小さな人/るるりら[2013年7月20日23時35分] 星からおちた小さな人が 走る 走れることが ただ 嬉しくて 他の子たちが小さな人を 追いかける 笑いながら走っているから 追いかけたくて 星だったころだって 走っていた 回れることが ただ 嬉しくて 他の惑星たちも 巡っていることが 楽しくて ときには 他の星が追いかけてくれていることを感じながら 笑いながら回った ただ 只 まわって 零に出会った 零と衝突した 零となって爆発して なにもかも失い わずかに 零にならない ほんのわずかな命として産まれ落ち きょうも おしめのおしりを くりくりと こきみよく 動かして 星からおちた小さな人は  走る ******************************************* 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルはクローバーさんです。 ---------------------------- [自由詩]ファイナルしあわせファンタジー7/るるりら[2013年8月2日13時03分] ななのつく月は かぜまかせ はるかとおくの たつまきの駅 てらてらにぶく ほら貝吹けば なびくはたはた しろいはた  遠雷ひかる海の底 なにくわぬ顔の神の御影 はたはたっていうのはな 神様の魚 十一月の北の海に 雷鳴 落ちる頃 喜び曼荼羅 水の万華鏡  鰰(はたはた)来いよ来いよと 旗をふる 十一月でよお 世界初だった海底駅、 北海道と本州をつないでいた海底駅が終るだど 竜飛海底駅(たっぴかいていえき)いう駅だ。 海は神様のもんだ 津軽や秋田県民だけのものでもねぇし日本人のもんでもね  むかし秋田で はたはたが取れなくなった事があったべ んで、日本海の漁師はみんなでハタハタを取らない事にした みなで「三年我慢すっぺ はだはだねぐなってしまうべ」って喋ったべ 漁をしない三年の間 船を捨てるやつもいたども 解禁の三年後のことだ はたはたの旗がたなびいてな 鰰の群れが銀色が 船いっぱいに飛び跳ねさせるためだべ 人間さまが 海でまで いばることはねぇべ 海も やすませろぉ はたと 立ち止まってみろぉ  海にふさわしいのは ※さがなのおっぱだ。(※魚の尾。) 竜飛海底駅って名は 神様みてぃだ。 ※そえなばおどげでねはなしだ。 (※それは普通ではない話だ。) 人が神様みてぃにするなんて  そったな ※おぼでにもつどごたがぐ。(※重い荷物を持つ。) ななのつく月の最後のニュース はるかとおくの竜飛海底駅 てらてらにぶく ほら貝吹けば なびくはたはた しろいはた 喜び曼荼羅 水の万華鏡 鰰(はたはた)来いよ来いよと 旗をふる ええこと いっぺいありますようにと 旗をふる   ファイナルしあわせファンタジー7が 旗をふる ********************************************* わたしは、西日本に住んでいて東北弁は ほんとうは知りません。 この十一月に竜飛海底駅という駅がなくなるようです。 東北新幹線開通のための決定だとニュースで聴きました。 それは、この詩とは逆に 日本がより一層 便利になるということかもしれないです。 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは 夜中の紅茶さんです。 ---------------------------- [自由詩]ここにいてもいい/るるりら[2013年8月10日3時29分] 昼間のうだるような夏の空気に すっかり力を すっかり リカちゃんは わすれました あまりにながいこと 西日の中にいたものですから セルロイドのように 時間も すっかり やわらかくなり 窓をあけると たどたどしくギターのアルペジオが 聞こえます  失ったものがあったのでしょうか ギターの音があるだけです すこし であるくと そこかしこに ちいさな花が咲いてます すっかり 力を すっかり そぎおとしたときに であう 水の音 花の色 とてもつかれているのでしょうか まわりにある さまざまなものが  ささやくのです 水が 言います 「ここに いたら いい」 花が 言います 「ここに いたら いい」 アルペジオが いいます 「ここに いたら いい」 風が きまぐれに すべてを  やさしい歌にかえるので しずかに 目をとじて聞いています いつまでも いつまでも **************************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは ほかけさんです。 ---------------------------- [自由詩]毎日が運動会/るるりら[2013年8月14日8時27分] たまごのあてさきは 今日も 運動会です 最後には 綱引きで終わるはずですが お弁当を 食べたフリしている こも いるのしょうから パン喰い競争は できたら はずさないでほしいです 騎馬戦の得意な人 障害物競争が得意な人 アナウンスが得意な人 見せ場で ころんでしまう人 すべての声援が 入道雲に吸い込まれてゆきます 最大のハートフル競技は 借り物競争です スペシャルカードは「好きな人を とってくる」ってお題がはいってます。 かかとで 大地を蹴って  あの人のところに走って行くことができるかできないか それが 今日も 最大の勝負です **************************** 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは aobaさんです。 ---------------------------- [自由詩]浮くと思っていた/るるりら[2013年8月24日10時59分] み●●● ●ず●● ●●か● ●●●ら     うまれた     るふらん     みずから     浮上する          レ●●●                       ●の音の          ●●倍音          ●●●音                  その人は すっくと湖上に立って 尋ねた 「あなたが落としたのは 金の言葉ですか?」 ちようど そのとき 夕日が落ちようとしていて空は 金の恍惚だった けれど その様子は太陽が落ちるからで  太陽は わたしの落しものではないので 黙った 「あなたが落としたものは 銀の言葉ですか?」 ちようど そのとき 銀の指輪をなくして、放心状態だった けれど 銀の指輪は 指輪であって言葉ではないので 湖の上に浮いている人に 言うべきことなのかと おもわず 黙った 「あなたが 落としたものは フツウの言葉ですか?」  ふつうとは どういうことだろう まてよ なんで この人は 湖の上に浮いているのだ しかし なんで いままで気がつかなかったんだ 人が湖の上に浮いているということは フツウのことなのか? いまのいままで 浮いてあたりまえだと 思っていたのは  一体 どういうことだ  そして     黙った いつのまにか あたりは どっぷりと日が暮れて 真っ暗になり もはや だれの姿もみえなくなった しっかり大地に立っていると 思っていたのに わたしの体は しだいに 音も立てずに沈んでゆく 他人だと おもっていた 湖上の人は わたし自身のことだった From water ●●●●●● ********************************************************** 題名は  星子アヤノさんです。 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたものに 一部訂正および追加を 行いました。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 ---------------------------- [自由詩]少年よ 【三篇からなる オムニバス】/るるりら[2013年8月29日10時43分] 【飛行模型】 露草の花は ひかりをうけて翼のようだから  おだやかな 面もちで 飛び石を踏み外さないように歩く 縁側で 竹ひごが 飛行機雲のように しなやかにのびている そのなかでも 軽量に飛行荷重に耐えられる強度の竹ひごを 選ぶ  細い腕からは もっとも うつくしい雫のような円が現われ もっとも うつくしい直角から、シンメトリーの翼が生まれる 暗い雲をも押し広げるにはプロペラより むしろスクリューと呼ぶのが相応しい 死の島の上を 渾身のゴム動力の一機 白い模型飛行機が 旋回するのだ 漏斗状にへこんだ 彼の胸は 高鳴る 島には 廃墟となった建物が 屋根を失い 雨風を受け入れ 死者も そこにいる さびしい魂のその島へ 彼は、飛行機を飛ばす  【アイドルを探せ】 白い羽根に あの子に教わった文字を書く 露草のとこまで飛んだ機には 翡翠 門のところまで飛んだ機には 麒麟 屋根までとんだ機には 鳳凰 あの子がいうには この三つの魅惑的な生き物には雌雄があるそうだ 「翡」はオス、「翠」はメスの カワセミ 「麒」はオス、「麟」はメスの キリン 「鳳」はオス、「凰」はメスの ホウオウ あの子をさがしている あんなことをいう あの子のところに届く 飛行機がほしい だけど、母ちゃんには 内緒だ  【トノサマバッタ】 おはよう少年 少年は 原っぱの匂いがする たいようさんさん おはようさん 今日も バッタ捕りかい 精霊バッタもいいじゃないか おんぶばったなんて かっちょよくないか 少年は 首を振り、かけてゆく 前傾姿勢で 獲物を狙う 少年の動きが止まった 虫取り網を大きくふりかぶった そして そっと網の先を袋にする 細心の注意をもって 籠にいれる そして おおきくガッツ おおきく開脚 右足だけを折り曲げ  そして さけぶ 「ライダーとのさまあ」 きょうも あしたも 「ライターとのさまあ」だといいな 少年よ *************************************************** 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)より お題をいただきました。 【トノサマバッタ】以外は、現代詩フォーラムが初出です。 参加できなくて残念だったので リベンジです。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 ---------------------------- [自由詩]どこまでも続いていきそうな予感/るるりら[2013年8月31日7時25分] 嵐の日 雷が空気をゆらして 瞼をとじても 光がときより私をゆさぶるの わたしの心にあった 汚いものの  沈殿させる濁った想いを 荒々しい雨風が 洗い流してくれる気がする 今日みたいな日は 思い描いてみるの 突然息ができなくなるほど苦しい日 不安でたまらなくなる日 みじめでやりきれない日は 想像してみるの 太古の昔 初めの命が 稲妻のように現れた 誰がなんと言おうと美しいものを  わたしは知ることができる 泥水がふりかぶろうと 美しいこと 嫉み妬み誹謗中傷 孤独 不信 こんな日には、稲妻が走るの もうだれも わたしを おびやかせない わたしの白い帆は  もうすぐ、穏やかな風を満身にうけて進み始める 虚しさを埋めようと一生懸命になっている けれど 瞼をとじて 原初の光をイメージしてみよう すべてのことがはじまった ほんとうの始まりの日 もし わたしが 最初の命だとしたら  最初から 多くのことはできない  けれど いま まさに目覚めのとき 私は 私の手のひらに【if】って描いてあげるの 【if】って【もし】に 似てる 遠い国の原初の【if】と 私の原初の【もし】は よく似ている 遠い国の人が話かけるように 私は わたしの原初の命に 話しかける すると すてきな【if】と、すてきな【もし】が繋がって ミラクルな回転を 始めた ひらけてゆく めぐるめく 今が たった今 始まった ********************************************************** 題名は  クローバーさんです。 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいています。http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 ---------------------------- [自由詩]羽矢と霧矢/るるりら[2013年9月7日2時52分] 羽矢と霧矢は まゆみの木を みずからの眼力で選び 切り落とし弓と成し、その矢を射る。 深い霧の中に 白百合が群生している この村には いまは おなごしかおらんけんど さすけね 羽矢と霧矢も おとこみたいな名で 呼び合っているけんじょ  本当は おなごだ 年端もいかね 百合の花なら まだ開いてねぃ蕾だ だけんじょ 心の中は 大人みてぃに ひんやりと 鎮まってる 戦の話を聴くと せつねえ 羽矢と霧矢と名乗って いたずらずきの もののけなら容赦しねい だけんじょ 人と人とが いがみあうのは せつねえ  ふたりは 弓を背に 村を守る  霧はたちこめ 霧は森を育て 森の上に虹がでている 虹だけんじょ じぶんたちの心はいつも真っ白だ なんと みごとな弓の形だ なんとも ゆるぎのない姿の白虹が 自分たちを結んでいる 空けつになりそうなときは お互いを思う すると ありがとない 今日も あの日の 真っ白な虹が 羽矢と霧矢を結び付けてくれるべ     ******************** まゆみという植物が 校歌に入っている学校があると 教えてくれた福島出身の 友達のしゃべりかたを おもいおこしながら 書いてみました。 わたしは 福島に行ったことすら ないです。わたしは広島の人間です。 ご当地の方々に対して、なにか失礼がありましたら、なんなく おっしやっていただきたいと 願いつつ投稿させていただきました。 なお、この作品の初出は「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたものであり、題名は  aoba_3k さんです。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 ---------------------------- [自由詩]青黄黒緑赤/るるりら[2013年9月9日23時58分] 「one person, two persons, three persons」と数えてしまう人がいたら、 おしえてあげよう 「違う、one person, two people, three peopleだ」 だって 僕らは バグしてみんなを ここに呼び込んだんだ ハグするのと  ひとりよがりに走って ハグしないとでは  とっても ちがうのだから 青黄黒緑赤の花火が つぎつぎと うちあげられ ひゅーーーーーーーーーーーまん どどんと鳴る ゆゅーーーーーーーーーーーもあ の神様も叫び すべての音に 終わりがあるように すべての物語に 終わりがある けれど 人は みずからの身体能力に挑んできたんだ 人は 約束の地を さがしていたのさ へい トウキョウ へい ジャパン ^^ ヘイ ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オーストラリア、アメリカ ヘィヘィヘィヘィ ヘィ ハグしようぜ それどころじゃあ ないなら なおさらさ 炸裂する青黄黒緑赤 光りの環 ---------------------------------------------------- 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは クローバーさんです。 みなさんも ぜひぜひ いっしょに 同じ題名で書いてみましよう♪ ---------------------------- [自由詩]小娘/るるりら[2013年9月14日7時20分] 宇宙を 黙読しつづけて 何万回死んだかしれない こむすめコスメ ポーチから 四方八方に轟く その呻き きょうは おとなしい おくさま風 おとなしいおくさま おとなしいおくさま かがみよ かがみ ニキビが増えたわ ちょうどそのとき羽虫が 二万回羽ばたいて露草に とまり ちょうどそのとき露草が 地面をはなれて  舞ったかのように 蝶が花を さがしあてた ちょうど そのとき  おがわのせせらぎ ちょうど そのとき あなたの手が わたしに さしのべられる 音楽と ともに 踊りましょう 電車でいつも合うあの人の 名前を知った その人と同じ名前になったつもりの 今日は おとなしいおくさまふう ****************************** この作品の初出は「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたものであり、題名は  aoba_3k さんです。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 ---------------------------- [自由詩]それからはこぐまのサーカスばかり見て暮らした/るるりら[2013年9月19日7時36分] はこぐまに であったのは 白いマストが海岸に現れたときだった お蝶夫人の待ちわびた人は 波止場には 降りてこなかった かわりに降りてきたものは かるい箱のようなものを頭にかぶった熊だった 箱には 黒白の反転したパンダの顔が描かれている 赤いマントに お蝶夫人の本名が縫い付けられているので どんなに 仮装しても お蝶夫人は 彼を受け入れた それからというもの 箱熊は お蝶夫人にだけ サーカスを見せてくれるようになった 箱熊の つぶらな瞳を 信じているから  綱渡りも辞さないと お蝶夫人は、決めている。 ****************************** この作品の初出は「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたものであり、題名は ナナ・クマスキーさんです。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 ---------------------------- [自由詩]それでも/るるりら[2013年9月21日8時18分] *********************** * * おばけあります * *********************** 居酒屋の柱に 【おばけあります】ってあるから 客用の 鯨も冷蔵庫の中にはあるのだろう  そっと 「あれは 鯨のことですよ。」って  貼紙のことを 教えてあげる。 「調査捕鯨でしか手に入らないから貴重になっちゃってねぇ」 って ニタリクジラさんが かならず話を つづける 温暖化の影響かどうかしらないが  龍宮の使いの御嬢さんが 奥に居るのは秘密だ この店の電球のフィラメントは薔薇の形をしているのはなぜだろう 赤い薔薇や青い薔薇そして黒薔薇も   球形のガラスのなかで 光っている 奥座敷には たくさんの球形の水槽があり 綺麗なうろこをバラバラと落している子や 聡明だったブロブフィッシュの耄碌爺さん すぐに秘密をばらしたがるセルフィシュ君 皆、丸い水槽の 適正圧力で生活している ニタリクジラのおやじさんは ときどき海にもどってゆく 海溝で ちゃんとウナギの稚魚が育っているかが、気がかりなのかも ニタリのおやじさんに 前に一度聞いた聞いたことあるんだわ   「ねぇ 鱈レバの話をして悪いんだけどさ、 もし 人間じゃないってばれたらどうすんの?」  そしたらさ「コンセントを抜くだけだ」だってさ 赤い薔薇や青い薔薇そして黒薔薇のコンセントをぬけば みんな御釈迦になるから 大丈夫なんだってさ 御釈迦になっても それでも 大丈夫なんだってさあ この居酒屋って ボロボロだけど 宇宙船なのかなあ 私、お化けだから どうしようもないこと ばっかりだわ   ****************************** この作品の初出は「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたものであり、題名は ABさんです。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 ---------------------------- [自由詩]Tシャツでは すこし寒い/るるりら[2013年9月25日14時19分] いちまい 羽織って おゆきなさい おつきさまも 羽織っているよ いち せんちめんたるを ******************** 初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮) http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0   タイトルは、るるりらさん。(わたしですぅ) ---------------------------- [自由詩]リアクション&リアクション/るるりら[2013年10月8日15時03分] ******** 怪物くん ******** -(2013/10/05(Sat) 17:43:47) 新月の夜 竹に上下の節あるように 唇に上下の別があるように 新月の夜に ぱっくりと あけた口から 怪物君たちが 生まれました 太古の卑弥呼の時代には 生口と呼ばれていた人たちがいました あたかも 奴隷かなにかのように伝わっており 不思議な能力をもった彼らのことを卑弥呼は隣国に贈っているのですが、 じつは 生口とは、怪物君の祖先の人たちなのでございます ほらごらんなさいな 生口島が見えてきました 新月の無人のはずの この島に  ほうら 釣竿が たてかけてあるのが 見えませんか? 怪物君のかえりを 待つものが用意したのでございましょう ***************** きこえない、ふり ***************** -(2013/10/02(Wed) 18:22:26) 防音壁で仕切られた部屋で ガラス越しにあなたと話をする ほんとうは扉は開けられているけれど 貴方は  ガラス越しに 私に 大げさの身振り手振りで 口も 大きく開けてときどき その口は 「キ コ エ テ ル?」 って動く それを受けて 私は肩をすくめて「 オーゥ ノー  キ コ エ マ セ ン?」と 動く 唇は動くけれど、声は出さない。 ほんとうはね 無言のあの唇が 好きだよって 云ったのを わたし 聞いていたよ 音なくてもね 聞えちゃうんだよ ほんとうは 扉があいてたから あなたは本当にはソレを言う気が 無いこともね 知ってたよ わたしはあなたの親友に恋をした あなたも私の親友に恋をした 口元にあてられた 一本のひとさし指 胸が熱いことは  秘密です ********************* バタフライエフェクト ********************* -(2013/10/08(Tue) 00:19:36) 蛹が 自らの殻を しだいに薄くしているのは 自身の羽根が整ってきた証 君は まだ湿った翼を 休めている まだ 羽ばたくことのできない 蛹には 想像だにできない世界があることを 狭い殻の中で 君は夢想している 花鳥風月やどりし館 その玄関は花のよう 別れと出会いに微笑する 花鳥風月やどりし館 その中庭は鳥のよう 迦陵頻伽が水浴びする 花鳥風月やどりし館 その書斎は風のよう 叡智の恍惚する窓辺 花鳥風月やどりし館 その中空は月のよう 君は、見えない敵と握手しようと その手を伸ばす 君の その羽根は やがて その重さを ゆっくりと  ほどいてゆくだろう 舞う事は 容易いことではない 君は 感覚という感覚を研ぎ澄ませて 羽ばたきのフェラメントに エナジーを送ろうとするだろう そして 君は しずかに 羽ばたこうとする 理屈ではなくエナジー ただ 【ありがとう】と口にして ごらん 無駄な力が抜け 廻天の力が みなぎり 君の羽根が 自由になる 根底から 君は もう いままでの蛹ではない ゆっくりと たしかな うつくしい その羽ばたき ******************** 初出はあなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)ですが、修正を加えました。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、 怪物くん / ぎわらさん きこえない、ふり / かいぶつさん バタフライエフェクト / 赤司さん ---------------------------- [自由詩]まわり道/るるりら[2013年10月15日15時15分] ■■■ ■■■ 電車の連結部で ■ ■ シュノーケルの音 ■ ■ 渚が車窓から消え     つり革の人々は     相変わらず揺れ ■ ■ 大波小波が ■■■ 電車内の人々の足を濡らしている ■■■ ■■■ ■■■ 人々は車窓から いつものように ■■■ 波音が届いていると思っているが ■■■ 幻の中に迷子になった電車は ■■■ 異空間を走行中 ■■■  ■■■ 窓の外に 海はない ■■■ だれもが しらない海を ■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■ 巡っている ■■■■■■■■■■■■  ******************************************** 初出はあなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)ですが、修正を加えました。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、みみずく さん ---------------------------- [自由詩]1?/るるりら[2013年10月22日0時37分] ケサランパサランを しってるかい ちいさなちいさな生き物だよ  一ミリにもみたない 綿のような身体をしていて 不思議に妖力をもった生き物なのさ  人の心のやさしさにふれながら しだいに成長するよ   間もなく ケサランパサランはサラサラ鳴り ほふほふとした やさしい共感が あらゆる人々の心に降りかかるだけで その人の こころの天井まで すっかり満たされて 憎悪していたはずの あのひとのことすら いとおしく 嫌悪していたはずの あのできごとすら すばらしいできごとと繋がっていることを知り だれもが 目を細めて笑ってしまう たった ひとひらのケサランパサランに触れただけで 太陽から 雨から空気から すべての繋がりを わたしたちは もとめていたんだなと 素直な気持ちになる 怒ってしまうのは やさしくしたかっただけなんだな とてつもない わすれんぼうだったんだなと そのときようやく きがつき たった降幸量五ミリほど 世界に ケサランパサランが積もったらね 戦争なんて なくなってしまうのさ  実はね さびしいんぼうの おばかさんな わたしの心に 昨日から ゆっくりと ケサランパサランがねサラサラと 一ミリほどの降幸率で 降り注いだんだよ ほんとうだよ 初出はあなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)ですが、修正を加えました。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、伊織さんです。 ---------------------------- [自由詩]南国の魔女か人魚か轟きか/るるりら[2013年11月11日9時28分] 山と山のそのむこうの谷をも なだらかに結んでいるのは、 空の高さと広さに あかるい ふしまわし    カッコー  ( の声がするたびに わたしのこころに 閉じカッコをつけてみる カッコー )  カッコー )   カッコー ) 見上げれば 空 眼下には 山と谷の なだらかな稜線 みんなみんな  山の向こうに ひとつ残らず つれて行っていきますよ 山に入りきると 蝉に かき消されるカッコウの声 谷におりきけば 人に かき消されるカッコウの声 闇が近づけば  夜に かき消されるカッコウの声 稜線 かすかに 蜜の匂いがしてね カッコーが わたしの心に托卵したの だから私は  少女として羽化するわ 少女のぬけがらは 青いのよ 青い空を みると 心は青くなる ひらひら風も青く舞う ひらひら舞うから 時空をこえる わたしの姿は もはや南国の魔女か人魚か轟きか 初出はあなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)ですが、修正を加えました。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは fujisuzukoさんです。 ---------------------------- [自由詩]奈落のクイズマスター/るるりら[2013年11月14日8時39分] ボケという素敵な表現力 ケという素敵な表現力 という素敵な表現力 いう素敵な表現力 う素敵な表現力 素敵な表現力 敵な表現力 な表現力 表現力     わたしをバカにした はかないものどもに告ぐ                               猫 パンチ 非より出ずる心を 悲しみと云うなり ボケという素敵な表現力は 虹 レインボーカラーの鬼の乱舞する是が非 ボケという素敵な表現力を最大にして ボリューム最大にして やるせなさ 最大にして もう 涙もでないから 永遠なんて 怖いね 奈落の底に一個の ボタン 鬼さんこちら手のなるほうへ 鬼ですら たまに 可愛く思える地獄の沙汰は ほんの百倍返しの 猫パンチ **************** 初出はあなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)です。 タイトルは、伊織さんです。 ---------------------------- [自由詩]世界の半分に捧げる歌/るるりら[2013年11月20日15時22分] 「今」という車窓から 地球を覗き込むと、中心は相変わらず たぎっている 「まいど」という だれかの声は きっと  腕時計型端末を耳に当てて   最新の黄昏方をしている  黄砂も吹かぬ 地球の裏側の黄昏方を わたしは知らない 月は表側しか私たちに見せていないけれど  地球の半分の人々の日向と日陰の移ろい方も わたしには感じられない 冬へと向かう時代を ニュースが伝える。 はだかのこころでは、つたえられたことばが つかめない 眼鏡をはずすと、世界は多重化して どの姿が本当か よけいに解らなくなる。 これも 非点収差というのかしら わたしの中心は   あいかわらず。  あなたの中心も あたたかい。 体温を核心する あなたがいて わたしがいる あなたの視点と わたしの焦点 いつか ひとつになりますように ************************ 初出はあなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)です。 http://anapai.com/CGI/cbbs/cbbs.cgi?H=T&W=T&no=0 タイトルは、kauzakさんです。 ---------------------------- [自由詩]消えるには少し速い/るるりら[2013年11月24日23時42分] 山道は うつらうつらと 川のように曲がりくねり 日差しが 折り紙の 折り目のよう 知識の折りたたまれた場所に 潤うしい硯の前に 座ろう 花は、テーブルにひとつあれば いい たった ひとつの心のストロークで 筆の行き先が花園になる 尾てい骨に根が 生えて 一本の筆になろう 尻骨ー筆間ー腰ー腹ー喉ー命の毛 一本の筆は 人の魂の棲まう場所、人の身体と同じく慈しむ 硯は 人を 見る 硯の一部分は窪み、月の表面で すられた墨が 窪みの「海」へ溜まる 座ろう 硯の海のさざ波 かすれてきえそうな 心という字 -------------------------------- 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの タイトルは クローバーさんです。 ---------------------------- [自由詩]そらの最上階/るるりら[2013年12月11日11時10分] たぶんに、自分のせいだ。たぶん、自身が悪いのだ。 敵は 見えない敵じゃない、見えていることが敵なんだ。 聞えないことが敵じゃない、聞えていることが辛いんだ。 見えているのに 伝え方が解らないことが、苛めなんだ。 きっと 今日、十二月11日の街は、愛を謳っている。 目の見えない貴女と 路を歩いたのは昨日のこと。 だから、きっと今日の街のイルミネーションも、●だよ。 あなたが見えていた頃には きっと なかった色を わたしは、伝えられなくて ありとあらゆる人々が、たのしげに通り過ぎた。 あなたは よたよたと歩きながら その内側に たっぷんと汗を流して その息は、荒い。 ときに激昂しながら、ときに瞼をとじ 巡る季節を通して 貴女が、願っていたことは 何だったのだろう。 のっぺらとした毎日。色を、そして必要なことすら 伝えられない毎日。 日々毎日 昨日、今日。うしなわれていく音。 が、が、が、がしかし、が、しかし リターンリターン が、しかし まっしろい 無数の濁点。ががががが きっと天の一番高いところから 降っている。白い濁点に、世界が覆われてゆく 高速で 降り積もる白い濁点が、たった1点から無数に湧くように生まれ バームクーヘンのような 幾重にも層をつくりながら 降りている 見えない貴女にも きっと見えている。 初めての白い濁点が降っている。はじめて見る 既視感。 いま、たった今  まっしろい濁点が、 世界を 変えている。 -------------------------------- 初出「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)に 投稿させていただいたもの タイトルは かんなさんです。 ---------------------------- [自由詩]ゼリー色の夏/るるりら[2014年7月26日14時39分] 葡萄色のゼリーのような海と空は きっと絵のように美しい  いいえ きっと海の ほんとうは 絵なんかでは 表わせない 憶万の色と光と影を 海と空は もっているのだろうから けれど わたしを しあわせにするのは おおきな海と空ではないの 両手に収まる 小さく器に盛られた水平は 芸術そのもの スプーンを そっと そのやさしみに触れた最初のひとすくいが わたしを しあわせにするの わたしのためだけに用意された ひとすくいのつめたい ひかり 夏へのすべての怒りが ほどけてゆく 私をほんとうに しあわせにするのは 無限なものではないの ******************** 祝 即興ゴルコンダ(仮)を復活してくださいました。 この題名で、みなさんも どしどし 投稿なさってくださいませ。 いっしょに 詩作のひとときを楽しみましょう。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=4832676#10633425 ---------------------------- [自由詩]ことばのエンジンを 廻せ! オムニバス三篇/るるりら[2014年8月7日9時43分] 即興ゴルコンダ(仮)参加作品です。今回は、三つをオムニバスにしました。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=4832676#10633425    ≪うまれたてのぬけがら≫ あまさらさんが題名を出されました。 い ろいろな ダイエットにしてみます ろ まん  もとめ ヨガのポーズ は ちきれそう  汗をかいてみます に ほんあしで  バランスとって ほ んきの  汗を流します へ とへとに なると逆効果 と にかく  まずは 柔らかく ち のめぐりは  円滑に り ばうんど   うんどう うんうん うなる ぬ るいわ    うんどう うんうん うめく るるりら を わ たしの  体を脱ぎ捨てます か らの  からだは いりますか よ ごれた  こころは いりますか た いだ な こころは いりません れ っすん その一 そ れぞれの おにくを はかります つ ねって ひろげて 量り売り ね こ のような しなやかさ な んなく こなす すこやかさ ら ンニング も いといません む ずかしい かおも やめてみます う まれかわるよ  この からだ ゐ ばったような ふとっ腹 の-と には ウエストサイズ お んがく で テンションあげて く らいこころは ふきとばす や せほそるはずなど ありません  ま けないこころで 腹圧たかめて け なげに 花を飾ります ふ けこんではいけません こ わいのは おのれです  え んじん 全開 フルパワー て を変え品を変え  あ お写真に向かって さ いず ダウン き らめく 美意識 ゆ めものがたりに いたしません め もくらぬような ひざしに み あげた  そらに この身を さしだし し ェクスピアの 淑女のように ゑ み(笑み)を たたえ ひ かり のなみは さんざめく も しかして せ いしゅん かしら す ぐ ちかくに うまれたての ぬけがら  ≪まほうの西瓜≫題名は うたたねさんより いただきました。 むかしむかしあるところに こどもを たくさん産んでは いけない 国がありました ところがある日、国中の女達 おなかが大きくなりました みんな西瓜のような膨らみ まくどなるどの定員さんも ろってりありの美人お姉さんも ぱんぱんに大きな御なかで コンコンと 良い音がします ああよかった子供でなくて ただの西瓜になっだけだわ などと女達は安心して 休み時間になるとお腹を見せ合いました そうこうしているうちに この国ではお肉を売ってはいけない  オフレがでました 女達の心は すっかり西瓜なので お肉なんて食べたいなんておもいませんから 平気です。 ああよかった 化粧室で女達はお互いのお腹を見比べました まだ未熟なお腹の娘のお腹には やらわかい産毛が気持ち良い そこそこ充実してきた女のお腹は 緑と黒色がうっすらと現れます すっかりパンパンになった母のお腹の下は ピカッと照かるのです おとこたちは その頃 どうしていたのでしょうか 女達は みんな 西瓜になっているというのに  男たちは おとなりのくにが 戦争をしたがっていると噂してました たまにお腹がはじけて 真っ赤に熟れた甘い汁がほとばしっています けれど その国の人々にとっては見慣れた光景なので気にもしません むかしむかしあるところに こどもを たくさん産んではいけない国がありました とても豊かな国でした たくさんの女の人たちは 真っ赤な情熱の色をした甘い歌を歌っています。 わたしたちは中身は赤い西瓜です♪そんな唄でした。 その国の人々は、ついに みんな西瓜人間になってしました。 西から太陽の昇る国不思議な国でしたが、 本当のお話です。その証拠に いまでも西瓜は西の瓜と書くのです。  {≪扇風機の口癖≫題名は こはらあきさん より出題です。 L.O.V.E. 大好きさ ロングアゴー むかしから  L.O.V.E. 大好きさ ロングスカートを僕にかぶせて   L.O.V.E. 大好きさ ブルーマーだから平気なんだって    L.O.V.E. 大好きさ お花みたいに 笑ってた    L.O.V.E. 大好きさ    L.O.V.E. 大好きさ オッケイ 今日は相当 暑いね    L.O.V.E. 大好きさ オーバーアクションで 風を起こす   L.O.V.E. 大好きさ  おどけている君の汗を吹き飛ばせ  L.O.V.E. 大好きさ  目を閉じて草原を夢見てる君が好き   L.O.V.E. 大好きさ L.O.V.E. 大好きさ  ブィの発音は F分の1の揺らぎでお届けするよ L.O.V.E. 大好きさ  ビクトリーラブ ほら叫んでよ われわれは宇宙人だ  L.O.V.E. 大好きさ  扇風機に七色の糸をたらしてお店みたいにしてる君   L.O.V.E. 大好きさ  だめだよ そんなに引っ張ったら コンセント抜ける     L.O.V.E. 大好きさ    L.O.V.E. 大好きさ すずしい顔になったら すこしねむ    L.O.V.E. 大好きさ  ねむれる森の御姫様 おへそがちらり   L.O.V.E. 大好きさ  君の寝息のほうが ずっと素敵  L.O.V.E. 大好きさ あつくるしいから 後はハミングで歌うね るるるる るるるる  ---------------------------- [自由詩]透明な月がのぼる場所/るるりら[2014年8月12日9時52分] 忘れられないのです 満月の夜に 海面が砂金のようでした 星々は だまって それを見守ってました 海蛍です しずかに群れはじめ そっと この足首を 群れの真ん中に沈め かるく あたりを掻き回すと またたいていた海蛍は  一瞬 闇に身を潜め おしゃべりを やめるかのように こちらの 様子をうかがっていました けれども 次の瞬間 一番星が見つかるみたいに こちらの目が 闇の中で光を見つけやすくなったのか それとも 満月の時間を 海蛍達が 惜しむあまりなのか  一番最初に 砂粒みたいな光が  ちらついたかと 思うと やがて あたり一面の海面が 輝きはじめ はるか遠くまでつづく 海と空の片隅で 満月と満月に呼応する光が点滅するのです その ただなかに わたしのこの身を置いたときから わたしの この胸の中にも 透明があって 海蛍のように 私の透明も 青く白く 光るのです 点滅しているのです あなたに 見つけて ほしいのです わたしも透明な月なんですよ って  恋文を書いて 良いですか? ************************************ http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=4850616#10666509 即興ゴルコンダ(仮)参加作品 題名は ほしこさん 昨日が 満月だったようです♪題を出していただいて きがつきました。 今日も おそらく 月は満ちているのでしょうね。 ---------------------------- [自由詩]モビルスーツを試着中/るるりら[2014年9月2日13時10分] ひとめ あなたに会いたいです。明日 とうとう起動します。 あなたは いかがお過ごしでしょうか。 私は、ようやく 明日 起動します。 わたしは アルバムを見ながら 学生時代に書いた日記を読み返してました。 あの頃に書いた物には 得体のしれないエネルギーが満ち溢れています。 覚えていますか?貴方は私のことを「ノーマル」な人だと言いましたね。 わたしは 尖がった声で 「私のどこか ノーマルなの!」と吠えましたね。 わたしが明日起動させる機は ノーマルタイプです。 メジャーなタイプは 頑丈な装甲といったアドバンテ-ジがありますよね わたしのはノーマルタイプ。まさかの 塩化ビニール製です。 ごく普通に 戦います。  けれど 虚心坦懐であろうと 思います。 モビルスーツを着るからには 夢中になってとりかかねば と おもい古い日記をとりだしました。 いまでも あなたのことが好きです。 あのころと かわらず まっすぐに 行ってきます! http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=4872833#10726456 即興ゴルコンダ(仮)参加作品。 題名は aoba_3kさんです。 ---------------------------- [携帯写真+詩]ぷれぜんと 三篇のオムニバス/るるりら[2014年9月29日8時43分] 【あたらしい一日】 ところで どこともなく金木犀の香りがして 新しい季節の梢で すずむしが 昨日より すこしスローな音色の 今日を謳う ところてんしきに としごろてきに かおりたつ きんいろが すずのよう  あなたの うまれたひを つげている あなたが くれた あなたとともにある きょうという あたらしい一日  【猫と信号機】 風に ふかれること ただ遠くをみることを わすれてはいけないよ わたしのこねこちゃんの引出しに 宝の地図を いれときました 大海原のカレンダーで つくった封筒の中身は 地図です。 横断歩道の場所は しょうぼうしょの前と こうえんの前 しんごうきを ふたつ こえた こうえんのベンチの下に 秘密を かくしました ほんもののねこちゃんが そこにかくれていたのよ たくさん かんがえて ちゃんと しんごうきを わたってね おたんじようびの宝物が そこにあります。 【79円】  もし私に値段をつけるなら 79円が いい バス待ちの間に なにげなく 車体番号を観ていても 79のナンバーだと  ハピネス ハロー わたしのナンバー 七月九日に ワタシは生まれたらしいよ 意味のある世界にやってきたのさ イタミの無い世界からやったきたのかなあ 自由だけど闇しかない世界から 決別したのさ いまなら私の値段は 79円で いいよ 今日なら おつりだってあげられる  バスにのったら 前言はとりけす 意味のある世界では その値段だと ワタシは、自分の家にすら帰れないんだ ************************************************ 即興ゴルコンダ(仮)より題名をいただいた三篇です。 http://golconda.bbs.fc2.com/ 【あたらしい一日】御題名提供は こうだたけみ様 わたしは このとき不参加でした。本作品は、現代詩フォーラムが初出です。 【猫と信号機】御題名提供は 安藤紅一様です。 多少 改編いたしました。 【79円】御題名提供は あまさら様です。 ちなみに リアルに私の誕生日は七月九日です♪ ---------------------------- [自由詩]とりつくしまという名前の島での物語 オムニバス三篇/るるりら[2014年10月15日10時33分] 【青が崩壊する。】題名は あまさらさんです。 こんこんと 混沌 どくどくと 清濁入り乱れ 大地と空が 激昂する 相容れない物どうしが交信しようとして 雨戸を叩く 夜の闇に 身を投じている時は いつだって独りだったけど 嵐が 青い考えを吹き飛ばして すべてを支配しようとする力に揉まれて 今は、 なにか とりつくしまを探している 外から帰ってきた あなたの頬が赤い 軍手の下で燃えている指先 錠をかけると同時に開かれる心が 脈を打つ  【手を振った、実が落ちた】題名は みずけーさんです。 朝日を受けた川は 銀布のよう 車の走りは すべるよう 千の せいだかあわだちそうの群れが 金の花穂を 天に示しながらも 無数の腕を 一斉に わたしへ振っている    いっておいで 大地ごと隆起した山々の上で 緑はさらに もくもくと萌え 雲は しだいにちぎれ 大空にそよぐ 過剰に飽和した部屋は 忘れて いいよ    いってらっしゃい 高速で走る車の振動は ここちよく うつらうつらと意識は遠のく ぼんやりと瞼をあけると 山々にまたがる巨人の境地   よく ここまで 来たね ここは ヘブンブルーの空に ビーナスピンクの溶け合いはじめた海と空 すべてのものが しなやかに踊る いちるの風に この身は ひるがえり いままさに落ちようとしている 夕陽の わたしは、きっと 一粒種 【風のはじまりをあなたは知っていますか? 】題名は 紅茶くんです。 昨日の私が手を振った                明日の私のための果実を おとしながら 昨日の私は死んでいった                今日の私になるために 昨日の稔が 今も遠くで手を振っている                 今日の稔に 挨拶するために 昨日の稔が足を振っている                  明日の私までも躍らせようと 昨日の稔は 乾いてくる                    乾いた心でも歌える歌をさがして    きのうの歌は とてもちいさな姿で やさしくなれない空洞を抱えた わたしのところに やってきた 歌の姿は ちいさな小鳥のようだった つばさやおしりを タクトのように振っている おもわず 私の乾ききったこの胸は  コントラバスのように低く鳴いた 無我夢中でないていた すると鳥も鳴いていた しだいに やわらかなリズムがそだち            鳥とわたしのあいだから ほのあたたかい風が  うまれた                                                              ****************************************                             即興ゴルコンダ(仮)より題名をいただいた三篇です。 http://golconda.bbs.fc2.com/ 風のはじまりをあなたは知っていますか? と、いう作品だけは 現代詩フォーラムが初投稿です。 ---------------------------- [携帯写真+詩]夕陽のように温かい物語 三篇/るるりら[2014年10月28日17時41分] 【たまきはる】 珠さんが きはりましたのや 珠のような肌のお方でしてな おおけな光の珠のようでしたな 魂というものに あたたかみというのが あるのでしたら きっと夕日のようでっしゃろ 魂というものに寸法があるとしたら あんな おおけな珠でしたら どれだけ おおけな命でっしゃろか  人とは呼び難い  なにかとてつもない その方を、 私は 珠さんと お呼びすることにしました 珠さんは きはりました。 あの二階の窓から こちらを見ておいでで ただただ丸く人の姿でもないのに あきらかに 見ておいでだと わかったのでございます。 まあるい球のような御姿のまま わたしを ただただ見つめて 珠さんは わたしを勇気づけて 帰えられました わたしの心は なんとも ぬくうなりましたのや ありがたいことです 【ひきだしにテラリウム】 花の都 タイスルルン ここでは いきいそぐひとは いない しにいそぐひとも いない 古びた店の奥で 年老いた店主が アルコールランプで茶を沸かしている 看板の文字は古びていて読むこともできないが 永遠の春と云う意味だという この店でも正月になると抽斗から段重ねになった丸い 餅のようなものを飾る やわらかでしろい その餅のような物は 一年間 抽斗の中におさめられたまま生き続けていて 新年にだけ 家の玄関近くに飾られる ひとびとは 餅のように ふくよかに笑い すべてのひとが 善人にみえる かなしみの国から 逃げてきた人も 店主が茶を沸かし 餅のように笑う つまらないことから逃げ出してきた旅人も 店主は茶を沸かすと 餅ろん笑う 正月が終わると 餅のようなものは すっかり緑色の丸い生き物となっていて しろいと感じてさせていたのは 光だったのだと 毎年のことながら 店主は思い出す 店主は 硝子の容器に わずかに光る緑色の餅のような物を終う 抽斗の中にしまわれた丸い餅のようなものは あたらしい年の笑いのために 今も 寝息をたてている 【ふりかえる距離】 みいちゃんは とことことこついてくる おりこうだから とことことことついてくる あのかどのまがりがどの 塀の上に きれいに一列 どんぐりがならべてある そこから むこうに ひろがる道へは みいちゃんは まだ 行ったことが ない みいちゃんのために アップルパイをやく みいちゃんにあげられるほど じょうずに焼けなかった かわりに  あのかどのまがりかどの 塀の上の どんぐりさんを ひとり ふやす あまいろの奴隷たち あの塀のむこうにはいけないけれど みいちゃんは わたしのアップルパイをきっと食べる そのとき あのかどの どんぐりさんたちは あたらしい季節の中にもれていくだろう いつか みいちゃんが あのかどのところより むこうの世界を知ったころ どんぐりたちも 森の一員となって みいちゃんが ここに帰ってくるのを 待つのだろう ****************************************                             即興ゴルコンダ(仮)より題名をいただいた三篇です。 http://golconda.bbs.fc2.com/ たまきはる -と、いう作品だけは 現代詩フォーラムが初投稿です。各題名は次の方からいただきました。 たまきはる - あまさらさん ひきだしにテラリウム - メチターチェリさん ふりかえる距離-こうだたけみさん 画像は 失敗こそ アップしてみました。あは ---------------------------- [自由詩]ごめんね青春の等しくふりかかる月日はふりかえらないでふりきれ/るるりら[2014年11月6日0時44分] 青春のシュンが、しゅんしゅん音をたてて回り 琉球あさがおの青さのように またたまくに開き 葛藤に締め付けられては 青くほどける蕾の思いは、 この はちきれんばかりに鼓動している濡れた髪の下 過去をふりかえっても 幾重にも重なる青の影 前に進もうとするならさらに重なり透けて見える青 燃える指先が脈をうち 吹き飛ばされて青のかなたまで 余洗い 柔軟仕上げ まってての とっておきココロの洗濯コース 髪は体は心は かわきながら扉を開こうと はやる ドアのむこうには 青い空がしだいに暮れなずむ  空の透度に ふんわりと浮いた月には いつものうさぎ 空の同じ色の青さで おどけてる うさぎのシュンが、しゅりんしゅりんと猫の背中みたいに 流線型の歩調で ワルツをおどる 乾きたての髪の いい匂い 余計なことなんて考える余裕もなくて 月を追いかけ おもいが とおくまで ちぎれて飛ぶ ぱっすんぱっすんに満ちてくる  からだじゅうにみなぎる背中の太陽 迷いなんて すっかりわすれた わすれんぼうな うさぎが跳ねる ************************* 即興ゴルコンダ(仮)参加作品。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=4949464#10863245 題名は 阿ト理恵さんです。 ..∴★ ∵.★.. 昨日のほぼ満月は、後十三夜の月とよばれているようです。  月見は、主に旧暦8月15日から16日の夜(八月十五夜)と、 旧暦9月13日から14日の夜(九月十三夜)今年は10月6日、にも行われていて 今年は、閏月があるため 十三夜が二度あり、 昨日の月は、後十三夜の月とよばれているようです。 11/7は、満月です。ひきつづき天を見上げよう! ---------------------------- [自由詩]さよなら鉛筆、トンボ印のちびた秋/るるりら[2014年11月7日10時01分] ミツビシに勤めているのに みつひしと云う父が 三つ菱形があるから、三菱 そんなことを教えてくれたのは、やっぱり みつひしだったからなんだな カッターナイフを ぽきん 「これが ひしがた  ひしの実がとれるところでは トンボが よくでてくるんだよ」 鉛筆で自然を語る父さんの手のなかから  かつおぶしみたいなのがでてきて おもしろい べんきょうより 絵を書いたほうが たくさん えんぴつけずりができるから みるみる短くなって  父の選んだ誕生日プレゼントは  短くなった鉛筆でも使えるようにする道具だった ゛みじかくすること以外にも、 なにか素敵なことがある゛ 母さんには わたしの喜びは わかんない 母さんは いまでは まいにちまいにち 姿を無くした父さんの名前を 母さんは 呼んでいる 私は どんなに鉛筆が好きだったかを わたしすら 忘れてしまっていた。 私は筆箱に、 真新しい鉛筆を入れたる。 ★題名は こうだたけみさんです。 以前ゴルコンダに出しておられたお題ですが 今日書いてみました。   ---------------------------- [自由詩]水溶性キネマ/るるりら[2014年12月12日2時21分] 水溶性キネマ 記憶の階段を一段一段昇るたびに 潮のように満ちてくる おじぃちゃんの机のうえには 馬の毛 たぬきの毛 頬にやわらかいリスの毛 お米にも描けそな麝香猫 ありとあらゆる獣の毛の筆が屏風のようなものに 吊るされています 牡蠣殻が腐ったような匂い なにかの液体を煮溶かしているのです 机の上には 花 一輪   白い紙の上を 仙人のような手つきが 滑ります 花を描くつもりだと言うのに 一学期が終わっても 皺の多い手が 塗っているのは白い画面です 「胡粉と云うのだよ」 ひとはけごとに なにかきらめきます みたこともない沙漠の風紋が現われます  謎の液体の中には真珠の粉が隠れているかのようです 「いや ほんとに 貝を砕いてできている絵の具なんだよ」 光の粒をふくんだ海のにおいを ひとはけ 腕を弧のようにまわして 飛行機雲のように もう ひとはけ  ひとはけごとに 光の砂丘で満ちてきます いつのまにか えらく時間が経ったのかもしれません もうすっかり星霜という言葉の美しさも理解できるほどです とっくりと くらくなった心のまま 瞼を 閉じると 一瞬にして 輝く砂丘が うごくのです 常に映し出される ひだまり しだいに  中心から滲む 薄紅色 あの日の牡丹の花が咲いてゆく ************************* 即興ゴルコンダ(仮)参加作品。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=4984940#10919040 題名は こうだたけみ さんです。 ---------------------------- [自由詩]真鍮の都/るるりら[2015年8月31日0時29分] おさなごには まず ハーモニカが あたえられる くちびるにあたる真鍮のつめたさに まぶたは すこし 重くなり 息を吹きかければ こころは しだいに透けてくる   ひとつひとつの客席に 金管楽器が置かれ 楽器に手が触れたら もう だれひとり席を立つものはいない 人々の身体は もはや黄銅と化す だれひとり音をはずす者も いない ステンドグラスすら おなじ波長で揺れている ※ゴルコンダ参加のみなさまへ ひさしぶりに参加させていただけて嬉しいです。 なんだか納得できなくて ゴルに出した投稿作品を大幅に改編しています。 ---------------------------- [自由詩]透明な十字架/るるりら[2015年9月8日16時10分] 私の心の鏡に 魑魅魍魎の輩 知力欠如の姿 視力のすべて 聴力をも失い 手探りで嗅ぐ 風に混じる潮 光がさす感触 誰を呼んでも 聞えないまま 自分の声すら 耳には届かず わたしは蚯蚓 なにも無知覚 願いはひとつ またふたたび 世界が観たい お化けでも幽霊でもいい なにか未知の力で私の目を開かせて 私はお礼に解放の歌を唄うから、私の盲した瞼がわずかに開き、 瞼の隙間に海が現われる、眩しい一本の線の上に、 故郷の水平線に透明な朝日が登る 海は光のさざ波となり わたしの足元まで 光の道がゆらぐなら わたしは魑魅魍魎にすら 女神の名前をつけて 唄うよ。だから、鑑よ お願い。醜さしかない この私に 朝日さす海の光の道を 透明な太陽を 見させてください 鑑よ 鑑、 鑑よ 鑑、 鑑よ 鑑、鑑 鑑 鑑 鑑 鑑 鑑 よ ---------------------------- [自由詩]小宇宙から流れくる    (改訂稿)/るるりら[2015年9月9日18時43分] プラナリアに 出会いたい 永遠の命だというプラナリア 世界が黄砂に なぶられて 沈鬱が大陸を覆い 海洋にも降りた 人は みみずのように スマホのなかの情報に生きる術をもとめ 無数の出口を眺めている プラナリアは みみずよりさらに 単純な生き物だ なんど切断しても 切断した断片のひとつひとつは再生を続けて 栄養状態さえよければ けして死ぬことがないという プラナリアには 穴が ひとつしかない 食べた口から 排泄物を吐き出すらしい 出口が入口、永遠の別名 プラナリア 「プラナリア」と たましいに向かって、つぶやけば、 散在していた鬱屈の砂塵が螺旋状に動き始め、 無数にあるかのような出口らしきものは すべて閉じられ、 ほら たったひとつ 出口が現われる 排泄を指示しているのは、再生したての私 わたしの透明な指先 ****元の作品は こちら http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=270201&from=listbytitle.php%3Fenctt%3D%25E5%25B0%258F%25E5%25AE%2587%25E5%25AE%2599%25E3%2581%258B%25E3%2582%2589%25E6%25B5%2581%25E3%2582%258C%25E3%2581%258F%25E3%2582%258B ---------------------------- [自由詩]墓石の幻想郷/るるりら[2015年9月16日20時03分] それはとても柔らかくて静かな日だった わたしは視力を失いかけている母の目を治すことのできる医師が この地にいると聞いて はるばる この地にやってきたのだが 偶然にも その夜は、祭りの日だというので 母には悪いが 母をホテルに残し ひとり見知らぬ街にくりだした まるで草の根も お囃子にそよいでいるかのようだった 坂の多い海辺のちいさな町の夕暮れに 点在する家々からの胡弓の調べが ほのあかるく揺れている 無言で踊る女たちの貌は みえない 半円の笠を被っているからだ しろい指で描かれる まるみをおびた風のゆくえ 越中おわら節 風の盆 そろいの浴衣の踊り子は ほんとうに人だろうか 自分が何か不思議な幻に包まれていることに気がついた どこか生者の気配とは違う自然との一体感 彼女たちは 精霊かなにかのように ありうべからざる色彩の中を流れている うたのひとつが 耳に残った 「浮いたか瓢箪 かるそに流るる 行先ァ知らねど あの身になりたや」 踊り子が背を美しく反らせている 生きている人なら 筋肉が悲鳴をあげそうなものを  かるがると 旋律の中に人々は居た ひかりとは 希望の別名だと思っていた それは 本当だろうか 闇の中で踊る人々は、天女のようだった まどう風の道なりは 漆黒の国にも  うつくしく つづいているのかも しれない ---------------------------- [自由詩]悲しみの透明なあり方/るるりら[2015年11月2日12時43分] かなしみのとりは かなしみしみこむほどに ちいさなかずを 数えるように うたう おもいはいつも一になることない かなしみが 椎のこずえを ゆらしてる かなしみかなしみかなしみかかななししみみみみみ しみしみしみしみしみしみみしみしみしみ みみみみみみみみみみみみ ななななななななな しししししししし ごごごごご ひとりのとりでで きょうもうたう ******************************** 【即興ゴルコンダ仮】に投稿した作品です。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5245435#11371823 題名は、はかいしさんです。 ---------------------------- [自由詩]かざしことば/るるりら[2016年1月10日21時58分] 初夢はどんな夢を見ましたか すべての夢は もろ刃のつるぎ かざして何を想いましょうや 松飾をつけた車が 走っていた 正月だというのに梅が咲いている不思議な一日 うつくしさを かざす おもむきのある横顔 車用の松飾だなんて 一体どこで買ったのかしら あの車中では きっと 忌み言葉は避けられているのでしょう 鏡開きしようにも 梱包された容器のなかに  子餅が梱包されているだけですね そうではない しきたりは どこへいってしまったのかしら 毎年 玄関の注連飾りの御米をスズメが食べに来ますのに 今年は 秋のようなご陽気で お飾りの他にも食べるものがあったようですよ 正月をすぎても すずめが汚した跡がありません ふとたちどまり 月光の底で 鳴いている ちいさな子猫を ひろいあげ そっと天にかざしてみる この子のように まるいことばも いまも きっと いきている ** ゴルコンダ仮参加作品です。御題は、 かんなさんです。 2016年の鏡開きの日にちは、1月11日(月)の地域が多いようです。 関西では1月15日に行われることが多く、 京都や近隣の一部の地域では、1月4日に行われたようです。 ---------------------------- [自由詩]鋳掛屋/るるりら[2016年1月21日10時21分] そいつのことを「はんだめん」と呼んでいる そいつは自分のことを 「たぬき」と自称している 初めて「半田麺」と云う食べ物を知った時は なぜまた溶接面を商品名にするとはなんと奇抜で夢のあることかと思った 炎のある暮らしこそ 人の暮らしだ 子どもの頃は 鉄の街に住んでいたから 学校までの道なりに 何軒もの鉄工所があって 火花に見とれていると おっちゃんに「目をやられちまうから 火花を見るな!」と よくどやされた ところが いま住んでいる街には 炎が無い うちの台所にしたって IHで 炎が無い そいつに出会ったのは 炎が見たかったからだ 鉄の街で育ったので 鉄が好きで 芸術作品なんかも つくったりもしているのだが 昔の作り手の仕事もなかなか良いものだと思い 古道具屋で 私は火鉢と茶釜を買ってきた。 するとだ この茶釜はもしかしてSHARP製なのかあ?火にかけると喋ったのだ。 「あちち」「たぬきじるに せんといてください」と釜が言う。 金属の釜を食べるわけがなかろうもん。この釜の まあ良く喋ること喋ること こちらの顔色を見ながら喋っているので 人格を認めてやろうと思い始めたころ 彼がいうには 「申し遅れましたが、文福茶釜と申します」とな ふむ炊飯器ぽい名だな。ま いっか。 みれば 腹のあたりに穴が開いているのを 治してやったら 彼は私のことを「   」と言った 良く聞こえないぞ なんだそれ 『いかけ屋 ですぅ。こんな字を書くんです。鋳掛屋』 ようするに あれだな。「VTRスタート」っていうのと同じだな ビデオテープレコーダーなんて時代遅れな物は使っていなくても、 「VTRスタート」って言うみたいな感じかな たぶん そういうことで 私の家での名前は、鋳掛屋だ。 でも こんなことは ツイッターには書かずにおこう。 **************************************************** 即興ゴルコンダ仮 参加作品です。題名はaoba_3kさんです。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5295323#11470145 ---------------------------- [自由詩]はなして/るるりら[2016年1月23日10時31分] http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5297070#11473220 即興で詩を書くサイト 即興ゴルコンダ仮の今回の御題は【はなして】です。 みなさま おさそいあわせのうえ 是非御参加くださいませ。おまちしています。 例【はなして】 山のことをなんでも知っているなら おなはしして 自由について おはなしして 自由になるって どういうこと 自転車の後の手を はなすみたいなことかしら 自由って字は 巣箱みたいに箱があるでしょ 手を はなさないではなさないで って 思うのは はなしてほしいからなのかしら 空のことをなんでも知っているなら おはなしして おてんきにおふとんを干すと御空のにおいを嗅いだことがあって? ラビオリみたいにラピスラズリの粉で満たされたダイヤの女王陛下は 御空のことを ご存じかしら あなたがもし空を飛んだことがあるなら おはなしして きっと あなたは鳥の巣のにおいも しっているのでしょう ---------------------------- [自由詩]鬼の豆ください/るるりら[2016年2月2日19時08分] なんの魂胆かしらないけれど 鬼って悪い奴じゃなかったよ たましいにも ふたつある魂と魄って書くんだって どうやら 魂は精神を支えていて、魄は肉体を支えているらしいよ どちらにも 鬼がいるよね 鬼は悪い奴じゃあないかな このあいだ鬼から電話があった 節分にお邪魔しても良いでしょうか? 「最近の鬼は礼儀正しいんですね」と 私がいうと 「ご時世ですからね。アポとらないと家の中にいれてもらえないんですよ」 って 鬼さんがね、 ご丁寧に事前に挨拶にいらしたときに  鬼さんが言ってたんだよ 鬼が精神と肉体を支えているって 話はね。そんときに教えてもらったの。 鬼が言ってくれたんだけどね 精神が汚れていると 誰かに悪口を言われたとしても 気にする必要はないんだってよ そもそも精神を支えているものなんて すっかり現代では なくなってて 汚れるも汚れないも 精神は身体に宿ってないらしいよ 自由気ままに そのへんを漂っているだけなんだってさ だから精神が汚れているかなんて 今の世の中では  鬼ですら解らないんだってよ 鬼としては危機感を持っているだってさ そんでアポをとって  「おねがいしますから 豆をまいてください」って お願いして回っているようだよ 豆は心の畑の肉だから まかないと育たないらしいよ そういえば「精神」って なんだろね。たしかに良く考えると わからんわ。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5300920#11480233 即興ゴルコンダ仮 参加作品 題名はErntosさんです。 ---------------------------- [自由詩]きみを溶かしたら、たぶん空色になると思う。/るるりら[2016年3月3日0時30分] 道は山の中  ふざけたようにあそぶように きれぎれにもぐるトンネルを  もぐろうとする粉雪 いつだったか春一番が吹いたのが 嘘みたい お外は梅が咲いてたよね おまけに 小鳥も鳴いていたよね だけれど 花鳥よりも素敵なのは ひとけのないがらんどうの家の中で 時計の秒針の音 こころが躍る ひとから うまれたものは どんなに ささやかでも 人のうみだしたものに やっと ほっとするんだね 胸が軋むのは  故郷の空が軋むのではなかった ひとかげだけが ほしいものだったよ ゆきんこちゃんとなずけられたお雛様 だって 春は ゆきの わすれがたみだもん *************************** ゴルコンダ仮投稿作を一部改訂 題名は、阿ト理恵 さんです。   ---------------------------- [自由詩]さんわのあひるよんわのあひる/るるりら[2017年2月23日12時10分] さんわのあひるよん わのあひるさん わたしとおなじ にほんあし しらないふりして おしりをふりふり ごきげんよう さんわのあひるは まだ ひよこ おかあさんあひるのあとをあるく くるまがとまってみています さんわが みちをわたるから いまは そこは おうだんほどう わたしも あとをついて みちをわたる *即興ゴルゴンダ (仮)の掲示板参加作品です。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5583074#11990668  題名は こうだたけみさんです。 02/22 22:22に出題をされたことに意味があるそうです♪ ---------------------------- [自由詩]即興ゴルゴンダ三部作【嗚呼  夢よ うつつよ】/るるりら[2018年4月26日17時46分] 【チンダルのはしご】 ●●●●●●●● ●●●●●●● ●●●●●●われ ●●●●●かい無 ●●●●つまりは ●●●てがかり無 ●●いままで苦労 ●るてんする悪口 よるの終が無い心               【2019年に起きたこと】  2019年印象的なできごとをかいつまんで書く 一月 アルビノの不死鳥が発見された 二月 各駅停車で、春に向かった 三月 祝 奈落を卒業 四月 ブリキの森と紙の古城とウルサい湖畔の魔法を会得した 五月 詩集「回遊魚」発刊 恋のぼりがハタメク 六月 福沢諭吉氏と懇意となる 七月 ゼリー色の夏を堪能 八月 そこかしこに愛があふれていた 九月 オーロラに包まれた 十月 ホスピタル・サーキット開催 十一月攻撃はいつも後ろからはじまった 十二月嗚呼 揺れる なまざしだった 【嘘つきの休日】 口、 虚に つき ご注意ください 目、やみつきにて しんこきゅうなさいませ ぜんぶ すてて よいのです はだかんぼうが ほんとうです はだかのこころは 満月のようです 闇の水平線から 浮き上がる月が 光の道を まっすぐに私の足元に降りてきています ねぇやさしい 口虚つきさん  あらあら お口が虎に なっちゃってますよ  耳をやすませてあげましょうといって あまがみしますと ほうら 心臓は 夢のような潮騒になりましたとさ ********************************* ただいま即興ゴルコンダ仮開催してます。 http://golconda.bbs.fc2.com/ お題は「2019年に起きたこと」デス。 申し遅れましたが、 なお「2019年に起きたこと」は、わたし自身の過去の作品群の題名から ほとんどの行が構成しました。即興ゴルコンダ(仮)に提出してくださった言葉も多数あります。 「回遊魚」って詩集は、ほんとに出せると良いです。 ---------------------------- [自由詩]背後霊が水を汲みに行く/るるりら[2018年8月21日9時04分] 背後霊の手は長く 千手観音よりも多い ただ 多ければ良いという ものでも ない 人間の役に立つのは 人間の手と同じ数 つまり 二本の手がもっとも便利 背後霊にもイカのような触腕がある いびつな形の贈答品を持参するとき 着物の超絶技巧結びにチャレンジしているとき 雪山で遭難しかけたとき 二本の触手が伸びて手助けをする あるときは 傷ついた心に巻き付き包帯となる また ある時は さえないサラリーマンの首元で 目には見えないが蝶ネクタイとなったり 背中をまるめがちな少女の心にとりついて 少女の心にしか見えない真っ赤で大きなリボンになったりして  人間に 希望を 芽生えさせる そして背後霊は 夜な夜な ながい手で水を汲みに行く 人間のためにではなく 背後霊自身が潤うための一杯の水 透明な水が しみわたる ※即興ゴルコンダ(仮)時間外投稿作品 http://golconda.bbs.fc2.com お題は、ぎわらさん。 ---------------------------- [自由詩]東の国の眠らない夜/るるりら[2018年10月21日21時25分] ひんがしのくにのね 群らない夜は だれもか大勢の中で たったひとり 回遊魚のように 周回する深夜バス 満員なのに みんな たったひとりきり だれもが どろりととけた目をして 混雑した車内の中で ひとりきり ねてもさめても 大勢のひとがいて いつまでも眠らない夜を走るバスは ふたつのライトを真っ赤にして 海の底をおよいでいるのに誰もきがつかず 朝をめざしてはいるけれど だれもが時間を捨てました ****** 即興ゴルコンダ(仮)参加作品です。題名は、社町迅さんです。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5933773#12638548 ---------------------------- [自由詩]新月/るるりら[2019年1月9日8時25分] 新月が穴のように開いている 月が巡ってくることをいのる いにしえの民のこころもちで 月の定めた晦日の夜に凍えて 聖なる薪としてくべた雑記帳 お気に入りの日記帳が炎と化すあの感じ 大切な人が私と結びつけていた写真を無造作に捨てたと知った あの感じ 筆圧の強い字ではちゃめちゃに書いた文字が涙の飛沫で溶ける あの感じ ふくみのふくらみを 口にすると朽ちてゆく みもだえたすえに 決心する すきなことをすきなだけしているつもりで すきなことがなにかをわすれ 穴のように開いている 新月 満天の空に ぽっかりあいた穴のよう 或るはずの天体は 時間と空間のなかに まっさらを示し わたしをふくらませようとしている みたそうとしている  わたしは いつも みたさそうとする月の力を裏切りながら きょうの新月と対話する すきなことをすきなだけするという軸ではなく できることをできるだけしていく軸で生まれ変わりますから だから月よ  明日の わたしを 満たしておくれ *********** http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5957127#12689686 即興で詩を投稿するサイトに投稿した作品です。同じ題名で詩を書き、みなが認めた作品を書いた方が 次の題名を示すサイトです。本作品の課題は、みうらのばでぃすきー様が 2019/01/01 (Tue) 18:42:00に出しておられます。 しかし、どなたの御投稿がなかったようです。大幅に指定時間をすぎましたが、今朝 本作品を投稿させていただきました。 ---------------------------- [自由詩]シティ/るるりら[2019年1月15日16時41分] 線路はどこまでつづくのか トンネルの向こうに 白い世界が見えるが ちかづいてくると どうやら画布だ トンネルの出口は大きな世界地図で塞がれている 列車は べつだんなんのアナウンスもなく 地図に突入してゆく 息をのんでおもわず目をつぶるまぎわに つり革の人の革靴の足に力が入り すこし屈伸したのを見たと同時に 風圧とともに画布の破れる音がして世界は広がった なんという地平だろう なんという明るさだろう しばらく列車は陽気に前に進んでいたが ふたたびトンネルにさしかかった トンネルの向こうに 白い世界が見えるが ちかづいてくる こんどの画布には 日本地図が描かれている 列車は とりたててさわぎたてるものもなく 地図に突入してゆく もう呼吸をあらだてるほどのことではない  すこし余裕ぎみに窓の外を見ると 風圧とともに画布の破れる音がして なにやら故郷の文字を確認した気がしたが、はて  日本のことを忘れた なんという水平線だろう なんという清々しさだろう 列車はより一層加速して またまたトンネルにさしかかった 列車の中に短い音楽が流れたあと アナウンスが入った 「いつも ご乗車ありがとうございます。 この列車は、あなたの心の中に向かいます。 つぎは こころの中 こころの中」 バシュという音がして列車は 自宅の家の近くの駅に止まった 遮断機があがり 家路に向かう 突き当りの家には 薔薇が咲きそうだ 今日は見慣れない車が止まっている  車体番号には【遠くから来た】と書かれていた。 表札をみると【薔薇は蕾】と、立派な明朝体で掲げられていた。 はてと思いながら そのお隣の表札を読んでみると【地域猫在中】と書かれている。 なんという名前の猫だったろう みんなちがう名前で呼んでいるはず 家にたどり着く前に 隣の人とすれ違って 聞いたことのない名前で私のことを呼んだが まちがいなく不思議なその名前が私の名前だということが、分かった *************** 即興投稿板参加作品です。 お題は、はさみさんです。まだ まだ 時間ありますよ。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5961091#12698062 ---------------------------- [自由詩]ほね/るるりら[2019年3月22日9時28分] もしも 三人が しゃれこうべになったら 三人は親子だと すぐにわかる  なぜなら 同じ頭の形してる。 と、言われ ハチマキ姿のタコの絵のような 立派な おでこを 三つ つきあわせて 婆さんと母さんと娘が、声をたてて笑った あかんぼうの髪の毛は ゆでたてのトウモロコシのヒゲのように やわらかく 繊細に おつむを守っている 新米の母親と お婆さんとが 交互に おつむをくりくり なでるほどに  ずいぶんと違う性質の三人なのに ほねは とても似ているのが おかしい 皮膚のようなものを除いてみるスケルトンな眼識を与えられ 本質的に同じものをもっているというだけの ほねたちの わかちがたい ふくよかな笑い ******* http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5978980#12741981 即興で詩を書き合う 即興ゴルコンダ(仮)参加作品。今回の題名は、こうだたけみさんの出題です。 ---------------------------- [自由詩]かわるもの、かわりゆくもの/るるりら[2019年4月1日15時15分] むかしむかしあるところに大正という村で育った少女がいた 彼女は いつしか百歳を超えて 「敬老会に行っても 最近は若いモノばかりで つまらん」と言い 八十を超えている若い衆が ぐっと笑いをこらえた むかしむかしあるところに昭和という町で そだった少女がいた 「最近の若いもんは 車ばなれしてて つまらん」と いいながら どこかしらない美しい世界に いつまでも少女のように憧れていた むかしむかしあるところに平成という街に そだった少女がいた 彼女は 万葉集におさめられているという梅の話を いにしえの言葉のまま覚えようとしていた そして いまも すべての少女たちの すこし赤らめた頬が 春霞の向こう側に かすかに見えている ********** 即興ゴルコンダ 参加作品。お題は こはらあきさんです。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5982233#12750585 ---------------------------- [自由詩]ある春の日  (二編「ぽつんとしてる」「Anemone coronaria」)/るるりら[2019年4月13日17時56分] 【 ぽつんとしてる 】 石垣に咲いた たんぽぽ ぽつんとしている 杉木立の山道で 電柱 つん、と 立つ ガードレールの下に大きくなれないままの大根の花が  それでも りっぱに 両手を広げて咲いている んぅぅぅぅん ひろがる春の陽気に のびをする おてんとさんさんありがとさん おてんとうさんが ぽつんとしたものを そっと つんつんと つついてる ん。ひざしの感触が全身をつつんでいる 雲が流れ 風がよそぎ ぽつんと ぽにょんをくりかえし しずかな こころで あるきだす  【Anemone coronaria】 脈を打つような 真っ赤な色彩の 一輪のアネモネ 石と石の隙間の 細い茎の先に蕾 炎のようにゆらぎ やわらかな花弁を 覗いてみるけれど 花の中までは  みえません 小指の爪より ちいさな花はブラックホール 見えているということの奇跡 はてのない波動を ただただ 発しているのか それとも あかるさの奥で すべてを終えようとしているのか *********************** 即興ゴルコンダ(仮)参加作品http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5985582#12759940 【 ぽつんとしてる 】は、るるりらが題を出しました・ 【Anemone coronaria】は、 みうらのばでぃすきー さんの出題です。みなさんもぜひ参加しましよう      ---------------------------- [自由詩]それとはなしに/るるりら[2019年4月20日0時39分] さいごの さくらが さよふけて まんげつ まんまん みちている ほおづきのような ともしびを つなげて うたを うたいましよう 去ってしまいそうな 桜のいろを きえてしまいそうな かおりの時間を 若葉も きっと もっている やがて 落ち葉となったとしても 桜の気配は することでしよう さくらは さいごのさいごまで さくらのまま その葉は大地に かさなりかさなり 朽ちて葉脈だけとなった冬の日は レース編みのような繊細さで いとけない生きもののために やみから悪意を濾すのでありましよう さくらは さいごまで すなおなままに たとえ枝を もぎとられ炎に焼かれたとしても えもいわれぬ恍惚の燻製となって たましいに そっと かたりかけるのでありましよう それはそれは それとなく 天にものぼる やさしさで http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5987074#12763924 即興ゴルコンダ(仮)投稿作品 ---------------------------- [自由詩]十三夜月のくるぶし /即興ゴルコンダ(仮)に提出したものを改編/るるりら[2019年5月21日10時22分] 即興で詩を楽しむサイト 即興ゴルコンダに 題をwillさんが だされたものです。時間ぎりぎりまで ねばったのですが、時間内に書けたものは私としては不完全燃焼だったのです。すこしは自分に満足したくて、結構な改編を行いました。元の拙詩は ↓こちらです。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=5995518#12788721 *********************************************************** 十三夜月のくるぶし るるりら きみの間違えた瞬間を忘れない 間違え方が愛おしい なのにどうして正してしまうのだろう 正すことで 間違えた時空間を自分だけのものに きみの ブルーを じぶんだけの ヘブンブルーに ここは つきぎめ駐車場だからね つきごくぢぁあないから なにかをカッコよく きわめた場所ぢぁあないからね 満月になると決めポーズ? 縁石の上を平均台のように歩く 月の高さ しらんぷりのプリエ くるぶしの位置を きゅっと あげる 猫がとおる くるぶしの位置が さりげに すごく高い 真似をするとポケットの コインを落としてしまった 十三夜なのにツキのない十三歳                                    なめています                                    肉球で                  おでかけです                       ---------------------------- [自由詩]病葉堆積/るるりら[2019年6月25日9時05分] 遊びをせんとや生れけむ けむけむ遷都のものがたり たりたりたりぬかたりてるか あまいみずを きよめたもう こどもたちが むかしから伝わる唄でお手玉遊びをしている。 おとなたちは 同じ歌を労働歌として歌っている。 かれらは、誇り高きインシュリン族の民である。 かれらはランゲルハンス島で生まれてこのかた 常に降る蜜のような雨が止むのをみたことがない。 甘露なる川は 土壌を肥やしもするが腐らせもする。 川が清さを保っているのは インシュリンの民が 雨を生成し世界を清めているからなのだ。 かれらの力で、いつもは 清く流れる河が いちど 氾濫すると、土壌に病をもたらしながら  激しく蛇行し荒れ狂い すべてを破壊し  美しい自然体系はすっかり機能しなくなるのだ。 川が氾濫したあと 水位が下がると おもいがけない歴史を垣間見ることがある。地層だ。 かつて海を悠々と泳いだ古代魚が 地層の中で生きている 恒星と通信していた植物の物語が 活きている すべての歴史の上に 甘い雨は降り続け、浸食する。 そして甘露の雨がすべてを育んでいる。 インシュリンの民は 今日も甘すぎる雨を清め 今日も すべての生きとし生けるものの住処たるこの地を 神のように統治する都人のことを想うのであった ※ 冒頭の一行は、梁塵秘抄です。 ※ 即興で詩を楽しむサイト 即興ゴルコンダに 題は「わくらばたいせき」と読むのだそうです。こうだたけみさんが出題されました。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6005917#12814622 ---------------------------- [自由詩]本と雨のはなし/るるりら[2019年7月2日12時54分] いかがおすごしでしたか ほんと おひさしぶりですね あなたのことを 得体のしれないエネルギーだという人の話を ほんと何度もききましたよ 人々はあなたに出会うと ほんらいの姿を取り戻すだの心洗われるようだの わすれていたものを ほんきでみつめることができただのと称賛して居ますわ とうめいにんげんのわたしが 本だのに掲載されるきっかけは 雨の日しかないと思うのですわ私の本体が水にあたることで輪郭が現れますもの 写真でも映像でもだめよあなたが本手を得ているのですスケルトンの私を描いて メジャーにおなりなさいな 本でしか私が人に知られる術はない じゃあじゃあと滝のような雨 本性があらわれるのは驟雨のときのみですわ 今は全身に雨の律動バチバチ 翻弄されてはなりません 刹那をのがしてはなりません 翻訳するのです素直に無と向き合うのです 忙しいひとが涙をながす時を失ってしまいそうです 翻意を促すのです だめ 傘をわたしに かざしてはだめ わたしに触れようとしてはだめ ほら 雨がないと みえなくなったでしょ でも あたたかいわ あなたって ********************************* http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6007805#12819892 ※ 即興で詩を楽しむサイト 即興ゴルコンダ(仮)参加作品です。 ※題名は かんなさんが お出しになりました。 ※現在 この題名でやってます。そこのあなたも ぜひ参加しましょう! ---------------------------- [自由詩]八月の汽水域/るるりら[2019年8月1日16時54分] せいれいの かいせい と、囁いていたのはつけっぱなしのTV それでも、精霊の快声に呼ばれたのだ 海をめざしていいんだよ 腹の底まで真っ黒い私は唇も塩分の味がする生きたままの生醤油だ 生臭い生き方を超えたきがする の は まずい 間違えている まずは川をめざそう その先の海にかえろう  真っ黒な私を海にかえそう はじまる八月を下れ せいれいの かいせい say せいれいの かいせい *************************** http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6016863#12843822 即興ゴルコンダ(仮)というサイトで この題名での即興詩。 ---------------------------- [自由詩]まるでシカク/るるりら[2019年8月4日11時20分] 死角がない人を全能という 視覚がない人を盲人という 月の裏側に着陸した資格を 死角はそれで狭まったのか 視覚の拡張現実が伸びたと 月に尋ねて見るきはあるか 四角く仕切られた魚礁の魚 死角なく水がゆきわたると 月の力に導かれ全ての海を 視るためのレンズがひらく 四角い枠を飛び越えて在る 死を越えたつながりは蒼空 死角がないものは海底でも 四角四面の不自由の中でも 視力をまるで失っていても 月の力をたよりに歩いてる 資格があるとかないだとか 四面楚歌に貶めたとしても 空は四角には区切れない 海はすべて繋がっている ------------------------ http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6017686#12845787 即興ゴルコンダ(仮)というサイトで この題名での即興詩。 題名は こうだたけみさんです。 ---------------------------- [自由詩]だから会いたくない/るるりら[2019年12月22日10時36分] 光に照らされ 透けて見える川底 流線型の魚影が うつくしい フォーメーション 薄雲が川に陰りを与えると 失われた魚の影 代わりに現れたのは 鱗の煌めく魚たち わたしは、だれとも 会いたくない 美しい魚影を見ていたかった あふれんばかりの 光の中で ときおり 融合しあう魚の影を 影を、慕って いたかった ****************** http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6062041#12969449] 即興詩の試みのサイトへの、参加作品です。 題名は、こうだたけみさんです。 みなさまも ぜひ 即興を こころみてほしいです。 ---------------------------- [自由詩]花束と折り鶴が少しだけ風に揺れる、ように/るるりら[2020年8月7日1時10分] この星の何人かは ちいさめの正方形の紙を見かけると 戦争が終わった後だというのに 戦争のせいで病み 快癒を折り紙に託しながら 亡くなった少女のことを思い出す 紙の角と角を 合わせて 鶴に嘴をつけるときは 微妙に個性的な表情がつく そして 均整のとれた形の中央に 繊細に 息を吹き込む 少女の折り鶴は ガラスケースにいれられて うやうやしく 原爆資料館に保存されているが いままさに うまれようとしている 折り鶴も 最後に息を吹きこむと完成だ 細心の注意がそそがれて 紙は息をうけて すこしだけ ゆれる ふくらみに とどまる息が やはり生きたいと言っている ************************** http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6127351#13133744 即興詩の試みのサイトへの、参加作品です。 題名は、ABさんです。 ---------------------------- [自由詩]メゾン・ド・ウジキントキ/るるりら[2020年8月21日17時54分] メゾン・ド・ウジキントキ ●●●●●●●●●●●●●●●ひぐらしの声が 波だ〇 ●●●●●●●●●●●●●●くらしの 高温注意報の〇〇 ●●●●●●●●●●●●●はしばしに 感じる涼けさ〇〇〇 ●●●●●●●●●●●●嗚呼  ひとりごちる かき氷〇〇〇〇 ●●●●●●●●●●●しろく まとって中央まるまる〇〇〇〇〇 ●●●●●●●●●ひねもす雪の繭の中  ひねモスラ○〇〇〇〇〇 ●●●●●●●●ららら  めぞんど宇治金時ビルのさ○〇〇〇〇〇〇 ●●●●●●●一階に゜ ことのは ゜ってかき氷屋が○〇〇〇〇〇〇〇 ●●●●●●できたのよ。そこの氷は、お外のベンチで〇〇〇〇〇〇〇〇〇 ●●●●●たべるとね。体の中心に 宇治平等院がさあ〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 ●●●●ひろがるよ。シンメトリーな中にわざと餡がね〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 ●●●安心メトリーぃ。その感動を言葉にするまえにさ〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 ●●とけちゃうの めをとじると からだのちゅうしん〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 ●きよいものが ながれていくよきんきらきんきら時間〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 即興詩の試みのサイトへの、参加作品です。即興の指定時間外に、大幅に つけたしを行いました。 http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6130817#13141041 題名は、たばすこさんです。 ---------------------------- [自由詩]あたかも 森が海を恋しがるかのように/るるりら[2020年9月19日9時54分] トイレに 貼られた関門海峡の写真 そのくせ 見る事のできない生まれ故郷 「もし そこにいるのなら返事して」母は言う 補聴器をしなければ何も きこえず わずかに光だけを感知する あなたの手は まるで森の木々が とおい海を恋しがっているかのよう 煩悶しかない日常 けれど、あなたは むかし おさない私を 極端な怒りの人や悲しみの人から あなたは まもってくれたのかもしれないね 怒った顔の人のことを、あなたは 十時十分だと言い かなしみの人のことを、あなたは 八時二十分だと言った 喜怒哀楽を記号化して へっちゃらにしようと してくれたのかも しれないね もはや 時計をみることも 音を聞くことも難しくなった 暗闇で とうさんを呼ぶあなたは まるで 森が海を恋しがっているかのよう 私の顔が十時十分だか八時二十分だか  あなたには 知る方法がない たとえ一メールの距離に居ても 解らない そして どなってしまうのです 「ごはんができたよ」とか そんな些細なお知らせを どなってしまうのです 煮える喉 からみつく私の思いに  鏡にうつった 苦味ばしった苦痛の顔に 教えてあげよう 「わたしの感情なんて ただの記号です。」 エモーションよ 風に なれ 海に なれ *********************** 即興ゴルコンダ(仮)という即興詩のサイト参加作品です。 このサイトは同じ題名で 詩を提出しあいます。今回のお題は、わたくし るるりらが出させていただきました。ふるってご参加くださいませ http://golconda.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=6137556#13156123 ---------------------------- (ファイルの終わり)