乙ノ羽 凛のおすすめリスト 2012年8月2日8時43分から2012年10月15日23時39分まで ---------------------------- [自由詩]僕の夏休み/未有花[2012年8月2日8時43分] 気持ちのいい風に吹かれて 汽車は南を目指して行く 広がる青い穂波に心はときめいて 懐かしい君の声が僕を呼んでいるような気がするよ 君と作ったあの秘密基地はまだ残っているかな 蝉時雨の中駆け巡った 緑の山も僕を憶えていてくれるかな 虫取り網を担いで日が暮れるまで いろんな虫を夢中で捕まえたね 今年の夏も君と笑えるといいな これから始まる僕の夏休み 青い空が胸いっぱい広がって 僕を夏へと誘って行くよ 去年の夏最後に見た 花火はとても綺麗だったね 夜空にきらめく満天の星に照らされて いつまでも君とふたり夢を朝まで語り合ったね 君と潜った秘密の入り江は今も残っているかな 入道雲の湧き立つ 青い海も僕を歓迎してくれるかな 麦わら帽子被って日が沈むまで いろんな魚夢中で捕まえたね 今年の夏も君と泳げるといいな これから始まる僕の夏休み 水平線が今目の前に広がって 僕を夏へと連れて行くよ ---------------------------- [自由詩]詩を書く人/……とある蛙[2012年8月3日15時06分] 場末の神話から時間と空間を引っ張り出して 自分の居場所を作ってはみたたものの 他に追随するものはなく、いつも独りぽっちで、 もちろん光りは射さない 自分のフィールドで戦うことだけが唯一のプライドだ そんな奴が詩人を名乗っている。 ---------------------------- [自由詩]ひとを殺しに来る夜/吉岡ペペロ[2012年8月11日1時29分] 戦争があれば ひとを殺しに来る夜がある 若さや才能や平凡を踏みにじりに ついに来たかというような そんな運命が 想像を超えた化学や感情が 戦争があれば ひとを殺しに来る夜がある 火の粉を振り払いながら ひとを守ろうとしているひとがいる いつか終わるだろう また繰り返されるだろう いい子になるからもうやめてくれないか 戦争があれば ひとを殺しに来る夜がある 若さや才能や平凡を踏みにじりに ついに来たかというような そんな運命が 想像を超えた化学や感情が 戦争があれば ひとを殺しに来る夜がある ---------------------------- [自由詩]マクドナルドから見える夏/beebee[2012年8月20日1時32分] 風の音がとまった 日の光が強く押え付けてくる ガラス窓のこちら側は醒めた水の中だ 連れ立った女学生が口をパクパク動かしている 子供を連れた母親がヒラヒラと手振りを交えて立ち話をする 子供の額に腕時計の反射光がチラチラした 静かな音のしない情景だ カッターナイフで机の上の光の塊を切ってみる 音?熱?息?みんなスッパリ切れて落ちていく 所作が固まる夏が見えた ---------------------------- [自由詩]ムラサキノハナ/じじ[2012年8月21日20時53分] あたしに咲く ムラサキノハナ いいかげんなやさしさと 今だけのしあわせと 信じることはいいことです だけど 不安だらけの穴ポコだらけの ほんとのあたしのこころ 浅い夢 明るいみらいはあたしにあるのかな 手に触れたおもいだけ信じて あたしの体に 花は咲く ひとつだけ 信じたいものは 信じぬけ ぎゅっと 自分を ダキシメテ。 ---------------------------- [自由詩]さきっぽ/……とある蛙[2012年8月23日16時22分] 山のあなたに辿り着き 人生全部吸い込んで 空に向かって叫んでみたら 先っぽ なぜか膨らんだ どういう訳か膨らんだ いつまで経っても捌け口は 見えぬ病のその先に 空に向かって叫んだら 先っぽだけが膨らんだ 理由も分からず膨らんだ このまま終わるわけもなく 人生全部吐き出して 空に向かって叫んだら やはり 先っぽ膨らんだ 哀しい姿で膨らんだ もう一度始めに戻ろうと 人生全部やり直し 空に向かって叫んだら そのまま 先っぽ膨らんだ 意味など無しに膨らんだ どうすりゃ良いか分からず も一度地道に歩いたら 空が見えずに哀しくて そのまま先っぽ萎んでた 淋しそうに萎んでた。 ---------------------------- [自由詩]いつもの/殿上 童[2012年8月24日0時23分]   いつもの朝食 いつものテレビ そして、いつもの一日 いつもの幸せ   ---------------------------- [自由詩]ぼくたちはきっとうそつきなカナリア/中山 マキ[2012年8月27日18時21分] 青白い空に浮かぶ月は 境界線を見つけられないまま佇んで 何処ともなく 向き合わずに消えて行く 酷くひっそりと 動き始めた世田谷 バナルじゃないと 長く暮らせない 吸い慣れた煙草 マルボロメンソールが 身体の奥へと 染みて行くように 愛し合い続ける裏にある 確かな矛盾に負けそうになる 三宿の交差点に佇む 数億円のマンションから うそつきなカナリアが羽ばたいて 太陽に焼かれて落ちていく ぼくたちはそんな現実さえ 悲しいとも思わなくなって 図らずも存分な うそつきになっていた ---------------------------- [自由詩]いい夜の空/朧月[2012年8月28日22時35分] 夢みるために生きている ひとは かないそうもないといいながら かなえたくてたまらない うたうためにうまれたひとと きくことにすぐれたひとは 空間をうまくシェアできる かげをつれた星のように なにかにひとつすぐれたい 役にたたないことであっても それがあなたのためのことなら なおうれしいとおもう 波紋を起こさないことも 大切なのかもしれないな 今日の夜も綺麗な空だ ---------------------------- [自由詩]牢獄の女/田園[2012年9月4日11時11分] 牢獄が私の家だった 手枷をジャラジャラと鳴らし 監守の持ってくるまずいパンと汁を待つのみの 私はそんな女だった ある日 男が来た 男は理解できない言葉を とても丁寧に話していた だが私は何を言っているのか分からないので ずっと下を向いていた その日から男は 数分程度だが毎日来るようになった そして理解できない言葉で 私に語りかける 私は下を向く 繰り返した 長く長くそんな日々を過ごした ふと 私は自分が男の来訪を待っているのに気が付いた 人が居る心地よさを初めて知り 狼狽えた また 男が来た 私は思い切って顔をあげた 男は黒い肌にシンプルなシャツを着ていた あらためて顔を見たのは初めてだ 眩しくて また下を向こうとしたら 「あいしています」 耳が 心が 体が 魂が 螺旋階段を落ちていく 今 なんと言った なんと言った 監守は何かを男と話し 私を牢獄から出した 手枷も外された 何も理解できなかった 今までの男の言葉よりも理解できなかった ただ 男の視線がやけに優しげで 私は信じていいのか 信じてはいけないのか 戸惑い 睨んだ だが男はまた 「あなたがすきです」 と 睨んだ 男はほほえんだまま 私は 私はもう 奴隷ではないのだろうか そう思うと 男の柔らかな表情を見る 何故 その問いは答えが見えないが 流れてみようか そう思った まだ  笑えないのだけれど ---------------------------- [自由詩]悲しみがくれるもの/HAL[2012年9月7日0時21分] 嬉しいことはそんなにないのに 悲しいことはいっぱいある その悲しみはひとそれぞれだけど だれもがその悲しみを背負い生きていく でもその悲しみはひとの悲しみを教えてくれる だからだろう悲しみを知ってるひとは どんなひとにもやさしくなれる どんなひとにもちからを与える そうぼくは悲しみの数が多いひとほど ひとを抱きしめひとを思いやり ひとを愛することのできるひとだと想っている 悲しみがくれるのはじつは悲しみではなく ひとがもつべきやわらかいこころだということ きみはきみなりの悲しみを背負って生きながら ぼくはぼくなりの悲しみを背負って生きながら そしてぼくらは顔を見合わせ笑い合う ぼくらは仲間だというその理由だけで ---------------------------- [自由詩]流星群/梅昆布茶[2012年9月9日3時55分] その夜そらは光の雨で満たされて 彼方の丘の上にまたひとつ星が突き刺さり まるで堕ちてゆく天使のようにうたいながら ことばのかけらのように降り続けるのです こえにならない声がきこえて 胸をざわめかせる音たちはなんだか むかし聴いた波のおとにも似て まるで夜の浜にうちよせるように 光年をこえて想いは 空の深奥からやってくるのです ひとつひとつが憧れや後悔や 郷愁や破綻や慟哭や さまざまの色をたたえて 分裂し拡散し微塵にくだけちって 記憶の堆積のフラッシュバックする 星の道の終着点の夜 そうなのです それはむかし空にのぼって消えた 無数の想いが帰ってくる夜なのです 手をつないで渡った橋が見えたり 秋風と草原の匂いや 握り締めたてのひらにのこっていたものや 愛とよべない幼さや 川面のきらめき 午後の静謐 舌をつきさすたばこのくゆりや 喪失をともなった痛みの甘さや 体を震わせる幾千の漣のように 燃えて溶けてまた時のなかに かえってゆくのです そんな名前のない想いの数々に であえる夜なのです ---------------------------- [自由詩]ばらのジャムを煮る/はるな[2012年9月10日13時11分] 生き過ぎて 置きどころのない身を丸め 世界じゅうの 音を聞いていた 気持ちばかりが散らかってゆき 世界が どんどん狭くなる それから、立ち上がって なにもかも行き届いた部屋で 薔薇のジャムを煮る ---------------------------- [自由詩]別れても好きな人/ペポパンプ[2012年9月12日22時16分] 料理によって人を救った。 嬉しい。上手くできた。 誕生日にプレゼントする。 喜ぶ顔が見たい。 苦しんだが良い事をしている。 手紙を添えて 愛情添えて 笑顔を添えて 僕を信じてください。 休日を一緒に過ごそう。 話を聞いて上げられるのは 僕だけだ。 ---------------------------- [自由詩]甘い チョコレート/藤鈴呼[2012年9月18日18時53分] この地に住まうようになってから 雪に 埋もれて いませんか と 心配の言葉が 描かれ 安堵の虹が 掛かる日が とても 多い 気がする なんて ちょっと 他人事のように のたもうて おりましたれば のっこり のんのこ ずんずん 降りまして のんのん、って言う 表現は 岩手の 方言なんですか? と 質問される 羽目に 陥る 昔 のんのこ の 表現に ハマってからは 当たり前のように 使っていた My用語 そんなことって 多いですね 昨夜 ラーメン屋で 懐かしい声が 流れて 曲は 分からないけど ヒロトだと 思ったので これ ブルハかな? と 旦那に 言った その瞬間に ブーイングの嵐 そんな略し方は しないんですって アナタ カップラとか サンゴー缶とか 何でも適当に 略すから 可笑しいよ、なんて 大声で 指摘されちゃったりして ほかほかの 餃子が 目の前に なければ ラー油 ぶっかける ところでしたわ(?) とにかくね あたくしは ザ・ハイロウズか ブルハか否かを 問うたまでのことで 有りまして 淘汰すべき 存在定義や 略すべき 用法例なんて ホント どうでも 良かったんですの 気持ちばかりは 略しては 伝わりませんから 出来る限り 頑張って みますけれども がんばって 伝える心に 意味は 有るのか もう一度 問いかける間に 甘い チョコレートが 溶けて しまいそうで 食べて しまいそうで。 ★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・° ---------------------------- [自由詩]            夕日のように微笑んで                  /ただのみきや[2012年9月18日22時11分]             万物が一つの花ならば             誰が愛でてくれようか             蕾のままに枯れて逝く             誰が涙を流すのだろう             花には目がありません             自分の姿も知りません             誰が教えてくれようか             知らないからこそ思う             なにもかもを喰い尽し             最後に自分も喰い尽す             無限の虚無にただ唯一             漂う孤独はだからかと             でもわたしは信じます             外から世界を呼ぶ声を             汝は美しき花であると             真の名前を呼び覚ます             死に逝く蒼き蕾のため             光が夕立のように降り             奇蹟のように啓蒙され             一瞬にして咲くのです             散る事をもう恐れずに              ---------------------------- [自由詩]つまんない/殿上 童[2012年9月20日23時44分]   あなたの言葉が わかんない つまんない そんなんもわからへんのかとか もっと、つまんない   ---------------------------- [自由詩]雨の別れ歌/……とある蛙[2012年9月25日11時41分] ざーざーざーざー雨が降る 部屋にポツリと男と女 外は雨がざーざー降り 女が照らす明かりの側に 男は入らず闇の中 部屋に二人で男と女 外は雨がざーざー降り 女が尋ねる言葉の先に 男は隠れて押し黙る 部屋の真ん中 男と女 外は雨がざーざー降り 女が歌う歌の調べ 男は聴かぬ 耳抑え 部屋の片隅 男と女 外は雨がざーざー降り 女の送る微笑みに 男は見せない優しいそぶり 部屋の外に 男と女 二人に雨はざーざー降り 拭いもしない二人の顔に 涙も雨も区別なく 濡らし続ける 最後の夜 ざーざーざーざー雨が降る。 ---------------------------- [自由詩]紡ぎたい/殿上 童[2012年9月27日23時37分]   赤い糸があるなら 断ち切りたい だって、自ら紡ぎたいじゃないか   ---------------------------- [自由詩]金魚の命/夏美かをる[2012年9月28日2時07分] 連れられて来て 放たれて 追いかけられて 追いかけられて すくわれて 入れられ 揺すられ 揺すられて 閉じ込められ 名前を付けられ 見つめられ 見つめられ そして翌朝には 埋められる― 「ペットショップで新しいのを買ってきて」 一粒の涙も乾かないうちに娘達が言う 「どうせまたすぐに死んでしまうよ」 旦那が言う 私は無言で その慎ましい命を静かに護っていた花瓶を洗う ---------------------------- [自由詩]イフ・アイ・ラヴド・ユー/芦沢 恵[2012年9月29日22時00分] もしもツバサがあったなら あなたのところへ 飛んで行けるのに もしもツバサがあったなら あなたのところへは 飛んで行かない 背中にツバサを背負った姿で 愛を語るのは滑稽だから もしもあなたを愛しているのなら 背中にツバサを背負った 滑稽な格好をしてでも 会うために飛んで行けるのです ---------------------------- [自由詩]あしたはあしたの風がふく。/じじ[2012年10月1日18時57分] ななめ45℃に体かたむけて空を見る とんびがくるくっるとんでゆく 仕事がえり 足が大根になってゆく シンドイナってつぶやいて ちかちかと電信柱に灯がともる いいこともわるいこともおきない 一日が暮れるゆく 落し物があったような こころのね いいたいことや やってあげたいことや やさしくしてあげれなかったことや 体ななめにして ちょっと 悲しくなったりする すっかり 秋めいたから ちょっとね ちっぽけ人生にみえちゃったりして しわくちゃになったスカートが くたびれてる おなかすいたから 早くかえろっと お腹いっぱいになると しあわせ気分になれるから とっぷりと 暮れ行く秋の宵。 ---------------------------- [自由詩]サングラスのキューピット/芦沢 恵[2012年10月3日1時49分] 信号機が一つ増えただけだった それが妙に腹立たしくて この道を使うわたしはエゴイスト 狭い 直角に曲がることの 繰り返し 運転は苦手 3つ目の突き当たりで気づいた 左手に雑草絨毯を敷き詰めた応接間を 横たわる水道管が3メートル その中を22年前の夏 或る暑い日曜日 でなければ 21年前の冬 寒い祝日の火曜日でもいい 14と14の春夏秋冬 確かにその中を走る水が あなたの喉を潤し 手足の汚れを洗い流した 車を止めてみる 深い絨毯のすき間には ブロックのかけらが 食べこぼされたクッキーのように 沈み込んでひっそりと 片付けられる時を待っている 花壇があった 二人で作った花壇 14と14の春夏秋冬 花を咲かせ 花を散らせて 20年前にあなたは 家族と共にこの地を去った あの時からわたしも風雨にさらされ続け 時間は止まらなかった 角が丸く風化した ブロックのかけらを一つ ハンカチに包んで車に戻る 知らぬ間に大きな車が  後ろに止まっていた 私が戻るのを 黙って待っていてくれた 深く一礼をした スモークガラスの向こうに サングラスのキューピット ---------------------------- [自由詩]メモワール/そらの珊瑚[2012年10月3日8時11分] 治りかけの小さな傷は ちょっと痒くなる 我慢できなくなって その周りをおそるおそる掻いてみたりして 治ってしまえば こんな小さな傷のことなど きれいさっぱり忘れてしまうだろうに 治りかけの傷は たぶんさみしいのだ 自分の存在がやがてなくなってしまうことが 見えない傷はどうしているのだろう 身体の内部で生まれやがて消えていくそんな傷 宿主にさえ知らせることなく 未来永劫痕跡さえ発見されない もっともっとさみしい傷 弟の手のひらに引き攣れたような傷がある 幼児の頃 母がアイロンをつけたままにして置いて それを触って火傷した傷 弟にはその記憶はないが 母はその傷を見るたび もうやり直せない自分の過失を悔やんでいたに違いない 今は子離れして弟と手をつなぐなんてこともない母が そのことを思い出すことがなくなりますように 小さい頃公園に かいせんとう と呼んでいた遊具があった 丸い大きな輪にぶら下がってくるくる回る仕組み ある日数人で激しく回って遊んでいると 理由はわからないのだが 私以外の子が全員手を離してしまった 私は回旋する力にひとり取り残され 重みで輪は傾きしばらく地面に引きずられた 手を離せばいいものを どんくさい その時出来た傷は今も足にあるが それを見るたび、少しだけ切なくなる あの時 おいてけぼりにされた自分を思い出して 回旋塔はその後撤去されてしまった 治っても消えない20センチほどの手術痕が 私の胸にある 時間をかけてゆっくりと薄くなってきた それを見てももう辛くはない それどころか愛おしいくらいだ いろんな傷を吸収して 今 ここに存在する このくたびれた身体もまた 愛おしい ---------------------------- [自由詩]斬る/渡 ひろこ[2012年10月10日19時38分] シュッと宙に向けて突き出した切っ先が 目に飛び込んできた 暗い展示室にひときわ輝く一振り 研ぎ澄まされた刀身が 強いスポットライトを跳ね返して 銀色の光を放っている 思わず吸い込まれるように近づく 蛇行する刃文の文様がくっきり浮かび上がる そのゆるやかな刃文の曲線を尖端までたどると 「痛っ」 鋭利な刃先にスパッと視線を斬られた 凛とした真新しい太刀は 鬱屈した私のていたらくを斬る (己の怠惰を血筋のせいにしてはならぬ、と) 見抜かれてしまった自分への口実 いや、斬られたかったのかもしれない 責め纏わりつく血のしがらみを 手を尽くしても 自己満足の徒労に終わったあの夏から 胸の底に黒い塊が棲みついてしまった 打ち鍛えられた鉄は邪念さえ祓うのだろうか まだ血の汚れを知らない 無垢な地がねの肌 ガラス一枚隔てての対峙 そっと横にならぶ しなやかに反る切っ先が 指し示す方向を見た ---------------------------- [俳句]海猫帰る/北大路京介[2012年10月13日21時52分] 銅像にフンを落として海猫帰る ---------------------------- [自由詩]スキップ/beebee[2012年10月14日17時02分] 遠くから聞こえてくる音楽 幾つものの輪が拡がって 自分の心のどこかで繋がっている 初めてスキップをした時、 いつだったんだろう? わざとらしく同じ足で二度足を踏むのがいやだった。 人を幸せにする踊り? カントリーダンスで大きく円を描いて回る。 幼稚園?小学生の時かな? でも上手にできなかったスキップは 友達を真似てわざとらしく踊ると覚えられた。 女の子と手をつなぐことと頭の中で結びついてる。 幸せのスキップ? 腰に手をやったりしてすると上手にできた。 自分で踊りながら後ろから見てる気がした。 おどけていたけど真剣だった。 スキップは幸せの踊り? でもずいぶんしていないね、スキップ。 する? ---------------------------- [短歌]二次元の色/梅昆布茶[2012年10月15日7時34分] 感傷が緩衝をこえて観照になるまでいきていられるだろうか ちょっと思うんだけれども広場の孤独って時にはいいよね 優越感と劣等感は群れで進化してきた僕らの心性なのかな twitter勝間和代の風が吹き啓発主義の黄金の旗 僕の部屋にはロボットが居て時々すみっこで喋る 地酒とマスターの顔が懐かしい夜ゆめには出ないが禁酒中 対称という原理を対という幻想を僕と君という誤解を ルサンチマンをバンドの名前と間違えて自己憐憫に耽るバカ 病院の廊下に貼られた矢印に人類の未来と書き添えてみる 色彩は錘体細胞の錯覚だなんて紫外線さえ見れないなんて ---------------------------- [自由詩]ばいばい/そらの珊瑚[2012年10月15日8時29分] 赤ちゃんがいると 赤ちゃん言葉をしゃべりたくなるのは ちょっとだけ 赤ちゃんになると 楽しくなるから みんな赤ちゃんの頃があったのに 記憶はないから 二度目の赤ちゃん役をやってみる 牛乳はにゅうにゅう 蜜柑はみいみい 犬はわんわん 赤ちゃんがいなくなると 赤ちゃん言葉もいなくなる 今度は永遠にいなくなる ばいばい これは赤ちゃん言葉ではありません さようなら、よりも好きなのです ---------------------------- [自由詩]迂闊な発言しかできない/kauzak[2012年10月15日23時39分] 思ったことを口にする それは失言になることが多い けれどそんな人に憧れる 思ったこととは裏腹なこと しか口にしていないから 意識を裏切りながら生きているから それでも最近は脳神経が 途切れてきたのか 考える前に口をつくことが多い それで失敗したと悔やむこともある けれど 何だか気分は楽なんだ  なるようにしかならない  そんな諦めが身に染みたようで  ときおり揺り戻しはあるけど 迂闊なことを話していよう 言ってしまったことは反省して 言ってしまった自分は受け入れよう そのまんまでいることが 誠実であることなんだろうと 少しずつ分かってきた 他人に合わせ他人の言葉でしゃべる ことほど無責任なことはないから 思ったことを素直に口にする ---------------------------- (ファイルの終わり)