朝焼彩茜色の梅昆布茶さんおすすめリスト 2013年8月8日23時18分から2021年11月24日8時58分まで ---------------------------- [自由詩]八月の子供たち/梅昆布茶[2013年8月8日23時18分] かつて夏の日に幾千万の蝉たちが空へかえった  その日の灼熱はすべてを焼き尽くした 八月の焦土 大きな鳥の影が空を覆いポトリと卵を落とした 破壊と悲惨の卵 子供たちを奪い去った卵 何の大義名分も意味ないんだ子供たちにとっては ただ夏の日をたのしみたかっただけなんだもの いま空から子供たちの歓声がかえってくる 僕たちもかつては八月の子供だった だから空から降ってくる哀しみがわかるんだ じんじんするような青空を  涙のでるような夏の空を思い出してみないか ほら子供たちの歓声が聴こえる きっと水遊びやとんぼ捕りや それに宿題だってたまっているにちがいない かつてぼくらは八月の子供だった あのじんじんするような暑くて眩しい 夏の子供だったんだから ---------------------------- [自由詩]遠く雑踏を離れて/梅昆布茶[2013年8月9日17時38分] 華やいだ季節が過ぎて 気がつけばまた一人 一番確かなことは 誰も僕の内面を知らないってことさ まあお互い様だけどね 君は僕と違う橋をわたる それぞれ別の国を夢見ている 行きずりに眼と眼が合っただけ それだけさ 大理石の城はいらない 月の見える小さな部屋が欲しい 抜け殻のような僕を横たえるベッドがあればいい 壁にシャガールの絵を貼ってラフマニノフの曲を聴こう 届かぬ熱い指を月夜の川面で冷やすように 真夜中に僕は蛹になる そしてある月の良い晩に孵化するんだ そう夜の翼で君の夢へと飛んでゆく 僕は蜉蝣 透き通った翅で 柔らかに空気を揺らす 君の吐息に吸い寄せられてゆく 哀しい昆虫なのだから 夜のしじまを旅する者たちよ願わくば想いを伝えてよ 季節は過ぎ花の香りも変わって行くのさ あなたの心は何処にあるの 明るい日差しのなかで 一緒にめざめることは出来ないの ダージリンの香りのする 鳶色の朝に  ---------------------------- [自由詩]澄んだ水に/梅昆布茶[2013年8月14日1時02分] 小魚の様に無心に生きる 花びらの様に綻びる 風の様に巡り 夏の様に燃えさかる 春の様に流れ 雪の様に舞う 歴史の様に積み重なり 光の様に消滅するのだ その姿は見えない 誰にもさわれない 湧き上がってはまた散り散りに散華するのだ 陽光の中にある気配 とめどなく乱れ飛ぶ想い すべてが拡散してゆく 流れる 流れて 流れる様に しなやかに崩れてゆくので 憂鬱な秋の落ち葉の様に 毎日毎日同じ色をしている 小鳥の様に唄ってばかりいるんだ素敵だろう アイルランドの緑の夏に イングランドの森に アイスランドの火山のふもとに 明滅する街の灯りに 離れてゆく君を想う 小さく口笛を吹いて 澄んだ水にキスをする すべての鐘を夜どうし鳴らすんだ すべての警鐘を すべての絶望を 澄んだ水のように ---------------------------- [自由詩]千の丘を下る/梅昆布茶[2013年8月15日23時37分] 哀しい村を過ぎて丘を下る 教会の鐘が鳴る午後 マリアは涙を流す 礼拝堂は空虚で まるで僕の心みたいに 遠近法を失っている 君の庭園はとても静かだ 静謐という名の永遠 遥か高みを鳥が横切ってゆく 悲痛な歌をうたいながら 母親たちは子供をあやす 聴き慣れた子守唄に載せて 千の丘を下る 夜の瞳を覗く 星の無い夜に歌う 千の谷を超えて 君に会いに行く 千の風にふかれて 愛を失う 饒舌な夏が過ぎたら 君と語らいたい 幾千の夜が来ようとも 変わらぬ褥で休もうと 寡黙な冬には毛布にもぐって 暖めあおうと 誓い合おうと思うんだ 秋には枯葉を拾い 透明な風に沿って流れてゆく 光の中を 春には土筆とともに 土の下から新たに生まれてくるのだ 千の昼と 千の夜に 君と出会う そんな命が 欲しいと思っているんだ ---------------------------- [短歌]はぐれうた/梅昆布茶[2013年8月18日4時03分] Gからはじまる朝テンションコードのうえで踊るコーヒータイム 断裂の金属弦のはじける悲鳴うたが終って反転する夏 ジョンレノン忌 愛こそはすべてを歌う夜 ニューヨークの夏は優しい アスファルトの焼ける匂いオイルの煙のたなびいてさすらう車輪は何を夢見る アンドロイドの淹れるコーヒー飲みながらただただ君との未来をおもう 星新一のショートショート読む昼下がりふと永遠にふれた気がして 尾崎豊のハートを持ちたいとただ憧れる馬鹿な親父だっているさ ジェリービーンズの色とりどりのポップス聴いてちょっとつまんで恋もする カナディアンアイランド ナイアガラのサウンドを浴びながら ただ君を想う はぐれうた中島みゆきの憂愁をいまさら歌おうとおもう夜 ---------------------------- [自由詩]夢見る人/梅昆布茶[2013年8月20日15時50分] 僕は夢見る人が好きだ 当然僕もその種族だろう ただ夢を見ながらも 自分と正対できたらいいと思っている 夢を見る自分を受け入れ それでも夢を夢となずける強さがあれば 毎晩暑苦しくて 真夏の夜の夢さえ なかなか訪れないが 夢を見るなら 大嫌いなあいつは そばに寄せないように 夢見る自由は 時に自分を縛りつけさいなむ そうさ心の表裏なんだもの 夢を定義しないで すべての実現しないものの大陸なんだから ひとついえること ぼくは夢を含まない人生を 選ばないだろう たとえそれが徒労であろうとも そう 僕は 死ぬまで 夢の友で  いたいと思っている ---------------------------- [自由詩]人生は不思議だね /梅昆布茶[2013年8月22日18時31分] もし僕が君の瞳になれるとしたら どういう世界がうつるんだろうか もし君の心が盗めるとしたら どこに隠しておこうか 僕は身に余る沢山の夢を持っていた 海の向こうに新しい地平線が見えていた 僕は君の大切な涙を忘れはしない いつの日かどうやってかは分からないんだが 風にのって 海の上を行く 僕は君のことが分かり始めたようだ 昔々世界には夢が棲みついていた 野生の夢は死なないさ  次元を超えてやってきたジプシー 永遠の申し子 旅しながら歌いながら 家にかえることも忘れて こんな雨の午後 君がハローって言ってる 理由はどうあれ 僕はすぐに たいくつしてしまう でもさマイダーリン 君は僕のほとんどなんだ 人生のスクリーンには何が映るのか 君の唇からはどんな言葉が滑り出すのか サテンの夜に 届かない手紙 すべての美しさは 君に収束される だから 君を恋しつづける 銀の笛なんだ だから祈り続ける ---------------------------- [自由詩]鏡/梅昆布茶[2013年8月26日22時51分] 僕は世界に愛されているのだろうか ずっと不安だった 母の瞳の中に 僕はいたのだろうか そしてあなたの瞳のなかに それらは僕の生を映す鏡 だからずっとみつめていたかったのだ おなじものをおなじように感じたかった マス・コミュニケーションなんていらない ただそのパーソナル・コミュニケーションさえあれば じゅうぶんに生きていけると思ったんだ 光りは散り散りに反射して 僕を惑わせる 僕の深いところから甦る童話を繰り返し繰り返し 話し続けていたかった そう僕の無意識の領域について テレビの画面には決して映らない物語を聴かして欲しかったんだ 君の鏡に映る空や風や深い森や湖の神話を インターネットや映像にのらない でも僕を震わせ続けてきたもの いつかその澄んだ鏡の木漏れ日の午後を 不思議な気持ちで一緒に 散歩してみたいんだ ---------------------------- [自由詩]夏の送別/梅昆布茶[2013年9月4日19時35分]  「誰でもない何処にもいない」 何回目の夏を送別したのかは とうに忘れてしまった 火傷するほど熱い砂を踏みながら 水平線と湧き上がる雲の先に いかなる幻影を見出そうとしていたのか  定かでないほどに たくさんの夏がきらめいて去った 波を怖がる幼いわが子と とり残された小さな干潟で蟹や小魚に戯れ 永遠に家族であろうとも思われたた午後 すでに夏は夕暮れを孕んでいた やがて夕立がやってきてすべての砂の城は崩れ去り また海岸線の風景に音もなく呑み込まれてゆく 言葉は所在無げに 唇をかすかに震わすだけだった 幾度もの送別をもたらした夏は また記憶の片隅の小部屋に遠のいてゆく 書きかけの日記のように ピリオドを打たないままに 何処でもない場所にもどってゆくのだろう 誰でもない 何処にもいない  僕の夏が またひとつ何かを置き去りにしたまま 鮮やかに あの夏へとフェイドアウトしていった  「僕らの空間 僕らの時間」 遅い朝食のトーストを齧りながらミルクたっぷりのコーヒーを味わう 向かいの山頂には巨大な電波中継塔が聳えていてこのあたりの目印となっている かつて涼風を運んでくれた緑陰はだいぶ減ってしまって 裏の崖下にも家が建ってしまったが それでも街中しか知らない眼には 十分の緑に思われたのだ 君はこの山にへばりついた家が好きだった アップダウンの激しい地形を車で走るたびに まるでジェットコースターみたいだねって はしゃいでいたものだ しかし冬ちょっと雪が降るだけでも 車が登らなくなるぐらいの傾斜が続く 僕は空の広さがとても気に入っていた  夜の窓辺からのぞむ街の灯りが好きだった 星が近くに見えたし 君の息遣いもそばにあった 子供たちに混じって犬たちも転げまわっている それは僕らの空間 僕らの時間と呼んで良い筈だった 琥珀のなかに閉じ込めてしまえば良かったのだろうか たとえそれが幻像だとしても 喪失の深さとひきかえに なにをおそれることがあったただろうか いくつもの季節を味わい 小さな軋轢を重ねあって それぞれの名前を忘れてゆく そんな場所があったことさえも いずれ風化し去って消えてゆくものたちの かたみさえも残さずに ---------------------------- [自由詩]きのう/梅昆布茶[2013年10月3日17時42分] 昨日のうえにことりと 今日が落ちてくる その順番は変えられない やっと捜し当てた今日は つかのまのあいさつを済ますと 足早に去ってゆく きのうの昨日のきのう そこには取り残された気泡のような想いがあっても それはどれも些細な思い過ごしのようなものでしかなく 明日の俺がそ知らぬ顔で屑かごへ丸めて捨てるのだろう 昨日のドアを閉めるとなぜだかちょっぴり胸が疼いた 今日のドアを開けると次のドアから小鬼がちょろりと舌を出した ---------------------------- [自由詩]通り過ぎる窓/梅昆布茶[2013年10月22日17時34分] 通り過ぎた町の窓をあけてゆく すでに知っている町なのに 待ち遠しかった 通り過ぎてしまってから 言いわすれた言葉をくちにする すでに知っていた言葉なのかもしれないが もう一度くちにしてみる さまざまな誰かの想いがそらにのぼってやがて 流れる星となって言葉を降らせるのかもしれない せめてそのなかに伝える言葉のひとつふたつ 集めるうちには暖まってくるように大事にしまおう 通り過ぎる町の窓をたたく あかない窓もあるのだが そっと覗いた瞳があるのならもう一度 それをくちにしてみようか いつか君に渡せるように   ---------------------------- [自由詩]断章/梅昆布茶[2013年10月23日22時33分] 遥かな星の光に導かれたいと思った 滴を飲み干すようにそのいのちを汲み取りたかった それがたとえつかの間の足元を照らさなくとも 静かに己の無知をおしえてくれるなら 僕は本当の光に従いたいとおもうのだ 母がひざをあたためていた小さなストーブで暖をとる なにか特別なぬくもりがあたためてくれる夜だ 慌ただしさを口いっぱい詰め込んで今日も生きた 足跡の数をかぞえて眠りについた せめて一冊の本を枕元に置いて夢をみよう ---------------------------- [自由詩]うすむらさきの朝/梅昆布茶[2013年10月29日21時50分] 薄紫色の大気はひんやりと冴え渡ってそこにあった 南天の赤がこじんまりと眼の端に映るそんな朝だ 生きることはそうわるくもないさときどき意味のとり方を間違えるだけなんだ そうみんな生のかけらを交換しながら生きている 枝から枝へうつる鳥のようにときに世界は揺れて見える 身にそわないものにあえてしたがう必要もないのかもしれない ただ追いかける自分はとめられないそれが生きることならば ほんとうは人生のひとつひとつ 草木や森羅万象のひとつひとつともっと丁寧に 対話できれば良いのだろうが 転がる石の朝はときにめまぐるしく それでも薄紫色の朝はたしかにこころに映る それを忘れなければ幾度でも朝はくるとおもうのだ ---------------------------- [自由詩]猫の口上/梅昆布茶[2014年3月20日16時35分] 故あってかどうかわかりませんが 猫に生まれまして たいへん恐縮している次第でございまして 私が人間なら大変かなあともおもうこと 多々ありすぎて 申し上げることも躊躇いたしますが あえてうぶな猫ゆえご容赦を 猫は四季 きものは要りません 予防注射もありませんし もちろん健康診断も 政治的力学もあるようですが そんなのほんの町内のことです たぶんあなたたちが縄張りとよぶものです たいがいのほほんとしていますが ときどきテレビを覗いて 痛勤電車のあなたたちを見ては えらいことだなあと同情する次第です その季節だけ雌を恋求めます ブスとか美人とか関係ありません 多少はありますが あなたたちほどではありません だって種の保存のためですから ただ保存してなんぼかは あなたたちも知らないでしょう 私だってもちろんしりません 恋は猫の眼のようになんて 失礼ないいまわしもありますが あえて反論はしますまい なにかの正当化に寄与出来るだけでも まあいいのではないでしょうか かつて進化の途上では仲間だったのですから 猫がちょっと口上を申し上げるぐらいで驚かないでください 反省する猿もいたしそのうち踊る金魚や ギネスに載る位税の滞納額が巨額な豚なんてのもありかもですから YouTubeにはもっと不思議な人間たちがいっぱいだし たかが猫の口上 気に留めるほどのものではありません ただ消費税の心配をしてみても あまり甲斐もないかと思っての戯れ言でもありますから ---------------------------- [自由詩]猫でした/梅昆布茶[2014年5月9日3時39分] 猫でした まちがいなくねこだったと思うのですが 定かではありません 幸せだったかもしれませんし そうじゃあなかったかもしれません 宿無しだったのはたしかです いまでもたいして変わりはしませんが 濡れそぼる夜はなくなったようです また猫に戻りたいかときかれれば まああれはあれで良かったかなと思うだけです よく遠くのそらをながめていました 腹も減るものですが別の何かもさがしていたものです からっぽの街で風の行方を追いかけては 光のあふれる季節をみつけようと彷徨いました そう猫でした いまでもその記憶が残っているのです ---------------------------- [自由詩]光と雲と/梅昆布茶[2014年5月18日0時33分] 朝のひかりのなかで想う どこか彼方の星でも こんなふうに生命が 朝をむかえているのだろうか 夜の闇のなかにさえも光は在るものだ 宇宙の漆黒のなかにだって朝はあるのだろう 生命が遍満するものなら いまあることが仮の宿りなら それはそれでよいのだともおもう もし朝をつくるならば どんな光や雲で彩るだろうか 星の光で満たされた夜を 朝の光が引き継ぐように それを言葉少なにでも 誰かに伝えられたらそれで良いのだ あなたの紡ぐ朝が あなたの一日をただしく整えるように その想いが朝をそして一日を 季節を年月をかたちづくる種なのだから ---------------------------- [自由詩]ある失踪/梅昆布茶[2014年7月13日13時40分] タクが失踪した 親にも知らせず彼女ものこしたまま行方不明 刑務所から出て保護監察下ながらM工業で働いていた 将来独立するという意欲もこめて作った名刺ももらったのだが 僕が名義を貸して彼が月々きちんと払うはずだったスマートフォンの料金も残して 見慣れぬ外車が出入りしていた 金ちゃんからも彼が振り込め詐欺グループとの接触があるのではないかと 金ちゃんも見放しそうだ 僕は彼をよく知らないが金ちゃんの判断にしたがうしかないだろう 単純に考えても生命に背反する生き方は破綻するものだと思う それでなくとも僕らは他の生命を殺し貪って生きて行かざるを得ないのだから その場の辻褄合わせの生き方では永くは続かない 刑務所の壁の外にすぐに自由があるわけではないのだ 善悪を語る立場にはまったくない人間ではあるが 甘くたやすい方向へひとのこころは動く 奈落からつぎなる奈落へと こころを抜きにしての自由はない 社会的更正を語る事は難しい 富は潤沢に在るようにみえて 貧困は覆い隠されさらに窒息してゆく タクは失踪した 希望にも似た欲望を抱えて もう手に入らないかもしれない 様々に身をやつした自由というものを置き去りにして ---------------------------- [自由詩]おでん屋/梅昆布茶[2014年7月31日16時26分] 僕らは社会の文体を学んで成長してきた はたまた親の文体に反撥しながらも生きるために それを受け入れて 今度は自分自身のフォーマットに縛られながら それとの葛藤にちょっと疲れているのかもしれない 生きにくさはその局面よりも 対処する方法を知らない自分に原因が あるのかともおもう 群れとしてしか生きられないのなら それを受け入れて成熟してゆくしかないのだと 親と子 社会とじぶん かれとかのじょ 戦争と平和 なんていうことはないんだ 新橋あたりの立ち飲みやとか おでんの屋台で解消できればいいんだけどね ---------------------------- [自由詩]神話/梅昆布茶[2014年8月17日19時59分] 顔のない世界を ゆっくりあるいてゆく君を ぼくは呼び止めて お茶に誘ったんだ 言葉が伝わらないままに恋をし 手をにぎらないままに ベッドに誘ったんだ きみは買い物袋をさげて ときどきぼくのまえを横切る 袋のなかから はじめての神話がころげおちる ぼくたちの生活は あまりストイックではなかった それでもしらじらしさをもてあまして ときどきSEXをしたんだ ほんとうは創世記は白紙なんだ 誰もなにも描いていやしない だからぼくは きみのための神話を描く 顔のない ぼくときみだけのために ---------------------------- [自由詩]離島/梅昆布茶[2014年8月21日21時04分] 辺境とは文明のセンターではないところ ひじょうに身勝手な定義とおもう 一律の価値観でかたられるが 離島にもひとは生きている あるいはかれらには シンプルで必要なもの以外もたない自由が それだけで生きて行けるエッセンスが ニューヨークやパリの女いじょうに 解放されたレディが大股で歩いていたり 古老の語る伝承が文字をもたない こころの世界をかたる エクソダス何処へ脱出するのか 移民のうたはモーゼさえ必要としない 生きるすべをしらない専門家をふやすこと ぼくらは分散してしまった ただ離島が頑なに なにかをまもっているような気がするのだ ---------------------------- [自由詩]小景/梅昆布茶[2014年10月18日14時51分] 絶滅危惧種のような気分のときは おもわず星を探している 頭の中が明瞭に区分けされないまま 時計の針は行ったり来たり 姿の見えない人々は あちこちでちいさな吐息をもらす 拡散するままに かぎりなく稀薄になってゆき いつしか大気や風になってしまおう がらんとした駅のホーム 電車も人もいない風景を 抱えてあるく ---------------------------- [俳句]Zippo/梅昆布茶[2014年10月18日21時27分] 燃え上がり産毛をこがすオイルのにおい風のZippo 物質の夜を満たすネオンサインの転がる路上で ルーティーンなぞった指がタールにそまる いつも通りのカーゴパンツでひそかに運ぶ日々の転覆 新都心たんぼのなかの摩天楼四十一階蛙の合唱 あなたの抒情ひとつくださいちょっとごめんと味わいます ---------------------------- [自由詩]影踏み/梅昆布茶[2015年1月30日18時31分] 今日も街を行き交うひとびとの影を踏んで歩く 一瞬にして微塵に還るもの 止めどなく細く長く伸びるもの 軽く薄く風に舞うもの ときどきそれさえも無い人に出会うが それも街の雑踏の風景の一部に組み込まれて行く 人はそれぞれ自分の言葉という特別なコードをもつという たぶんそれは存在と繋がっていて そのほつれの一端から紐解いて行くことでしか その人に近づいて行くことはできないのかもしれない 影は夕暮れちかくには混ざり合いひとつの闇となって この夜を形成するものか やがて朝露とともにそれぞれの居場所へと 戻るものだろうか ざわめきや願いや恐れの影に雪が降りつもる やがて影の無い白い世界が現出するまで そんな夢を見た ---------------------------- [自由詩]言葉/梅昆布茶[2015年7月2日22時52分] 言葉はなぜあなたにつたわるのだろう あなたの脳内で維持されている 概念に呼応する音声あるいは文字列を 話し手と聞き手が相互にいれかわりながら 違和もさしてなく理解できる不思議 中国の友と手のひらにボールペン 漢字をかくことであるていどコミュニケーションできたこと 沖縄の友に特有のイントネーションを感じ 彼にヤマトンチューには 沖縄のいたみは何もわからないといわれた 文明の加速は とっくに言葉をおきざりにしているとおもうが それでも言葉は ぼくのたいせつな社会とのつながりなんだ こころはなかなかほかのこころと 繋がりにくいものかもしれない 社会って変化の集積だ 自分さえも変化する 誰も待っていない隙間でギターを弾く いつもの居酒屋で借りた古いガット弦の置きものだが たった一回だけゆきずりの娘さんから感謝をいただいた 誰も愛を自由には獲得できない 誰も愛を操作できない いいんだいつまでも彼女で それが素敵なんだ 失うことを哀しまないで それは普通のこと いつでもつきまとうできごとにすぎない ぼくはモラルアドバイザーにはなれないだろう 太陽の表面に白班や黒点があるようにいつも異物を孕んで ぼそぼそと人生をつぶやくだけなんだから 野菊がいつか鋭く美しい刺をもつ薔薇になる そんな変化はいつもあることなんでたいして影響はないさ ぼくはいつも通り野蛮でそして あたらしくて古い言葉をさがしている ---------------------------- [自由詩]ちっちゃな宇宙船にのって/梅昆布茶[2015年9月17日2時20分] よごれた皿を洗うことはたやすくできる こころを洗うことは容易ではない 精神のよごれが頂点に達して いつもこわれっっぱなしの回路をさらに脅かす どこの惑星で治療をうけたらよいのか 基本ソフトのバグとの戦いはまだつづく バージョンアップもままならず 地球とのわずかな交信も途絶えがちだ 地球の緑の丘も遠い昔 きみに摘んで手渡した ちっちゃな白い花が風にゆれる 古びた宇宙船はワープもままならず しんとした操縦室でこれからのゆくさきを考える 60億の細胞に生かされて 限られた生をいきる どれだけの宇宙にであえるのか ちょっと考える メンタルとフィジカル いつもおなじなんだ 問いかけるものはいつも なんだかからっぽなところから 発信されているようだ それに はなを添えるのは きみのあやしいかもしれないけど うつくしい宇宙なんだから ---------------------------- [自由詩]ジャンクソング/梅昆布茶[2017年12月19日22時26分] すべてのジャンクの山のなかからあなたを掘り起こす 随分と埃はかぶっているがすぐにでも使えそうなんだ すべての汚れたもののなかから抽出された血液だけが あなたを再生させるものなのかもしれないのだが 誰にもおぎなえない傷みを それもちいさな冗談みたいに 僕たちは語っているね 小さなことにこだわって 息を吸うのも忘れているのはあまり良くないことだと思うんだけれど だれも改ざんできない一回きりの人生って素敵かもしれないんだ 何処にもたどりつかない抒情としまりのない日常に慣れてしまって それでも覚え書きのように走り去った大切なことを おきざりにしている自分をいつかまたつかまえに行こうと思っているんだ ---------------------------- [自由詩]インスタントコーヒー/梅昆布茶[2018年12月3日23時44分] 疲れた心のためにインスタントコーヒーを一杯いれる 僕は悲鳴こそあげないが なんだかいつもテンパっている 60〜70年代に掲げた自由ってなんだったのだろう 敵はいないし仲間もいない でも誰かのために一編の詩をまた書こうとも思う レクイエムでもあり子守唄でもあるような そんな言葉をさがしにゆこう またあの外套のための冬がやってくる 僕はひましにひとりになってゆくが 誰かを何処かへつれてゆくドライブぐらいは平気さ 飛び去ってしまった旧友へたむける言葉さえ無く 理由もなく生きている僕は恥ずかしげもなく 負い目をまた背負ってゆくしかないのだろう 粘着質のいきかたしかできなくて 白さをわすれたままで凍えてゆくしかないのかもしれないが きみがいない世界はとても凍っていてー44度の指定席があるのさ きみがいる世界はとても喧しくて耳栓が必須なんだがそれでも きみが華やいだ夜はとてもやさしくて素敵な歌が響いてたりもするんだ ---------------------------- [自由詩]コラージュ2018/梅昆布茶[2019年1月2日7時41分] さびしい道化師は 観客のいないサーカス小屋にひとり 空中ブランコや象の玉乗りの夢を見る もう雇い主なんていやしないが 故郷にかえるまえに思い出にあいにゆく もう料金箱にはどんな人生も詰まってはいない 手を振って子供達が去ってゆく そうみんな大人になってゆくんだ 空につながる道にはコスモスが咲き 園丁のいない庭園は荒れ果ててゆく お手紙ありがとうございます 大好きな哲学者が別な世界へたびだってしまいました だいたい愚昧な輩は命を惜しむあまりあとに残ります 僕の最大の畏友であり内省と奔放が持ち味で きれあじ良く生きていたかとも想うのです いまでもある意味つながっています 僕は相変わらずだらしなく生きていますが でももう20年生きてもそれは変わらないのかもしれません 遅かれ早かれ僕も空に還るいのちです ---------------------------- [自由詩]FreeBird/梅昆布茶[2019年3月4日19時50分] 僕がサラリーマンだった頃 自称自由人らしき若者に侮蔑されて 僕が学生だった頃 就職組から学生なんて甘いよと言われて 結構傷ついて考えたあげく 僕は鳥になって いつか誰も知らない国まで飛んで行く事に したんだ 人生の栄養学も知らず さしたる美学もなくて それでも鳥になりたかった 僕はいまなにを基準に誰を愛しているんだろう 確かなものってひと握りもないのにね 満たされた心がひとつあればよかったのだけれど 鳥になって羽ばたきながら啼いている ---------------------------- [自由詩]平均値のうた/梅昆布茶[2021年11月24日8時58分] 素晴らしい朝は 岬の鴎たちが啼き交わす言葉までわかる 遠い希望は持たないほうがいい ただ一瞬の充実が幸福論のすべてならば そこに集力してそれが結果になる方がいい それからが始まりだと思う 努力しても不可能はあるが 自分の燃焼を感じていたい 大好きな美文堂書店は閉店するが 読み続ける事を教えてくれたのは此処です 平均値から外れても良いのですただ それがあまり意味ないことを覚えよう もしも自分というものが有ると仮定して この世界の一隅を借り住まいしていても 細胞は日々入れ替わり 毎日瞬間別人になってゆく 37兆個分の責任はとれないので ある意味自由に生きて行こうとおもう 魂だけが僕ならば 身体は余計な荷物だけれどもね ---------------------------- (ファイルの終わり)