uminekoのおすすめリスト 2017年4月11日0時30分から2021年12月7日0時59分まで ---------------------------- [自由詩]桜の死んでいくとき/田中修子[2017年4月11日0時30分] きのうつぼみだったあの子が 今日はもう咲いているね 満開になって 散ってゆくね みおくるかなしさで こわれてしまわないよう みんなで別れをおしんでいる はなやかなお葬式 淡いピンクの 手や足や目がもげてゆく ひろいそこねた骨をふまずに 前へはすすめない ゆく春をひきとめてはいけないよ なごりおしすぎて この世からあなたの片足が 落ちようとしている ---------------------------- [自由詩]みどりの沼にひそむ/田中修子[2017年4月14日0時53分] 飲み込んだ言葉が 胸にわだかまりの どろりとした沼を作る 沼の中で 人に見捨てられ大きくなった亀が 悠々と泳いでいる よく見ると 子どもを食ってふくれた金魚の尾が ひらりひらり こっちへおいでと赤くさそう この風景をとどめよう そして私の胸はまた痛む それでも今日は素晴らしい日 二度と繰り返さないこの空 桃色、青色、金色のかさなる雲に足をとめた 強く吹く風は海からのものだろう ゆうぐれに月はひどく大きい 目をうつ白さに息を飲んで そうすると少し楽になる 私は痛む緑の沼だ 沼の中には大きな亀と 子どもを食ってふくれた金魚 よく見ると金魚は人魚であった 人魚の顔は私、 口の裂けるようにわらった ---------------------------- [自由詩]きょうかい。/木築[2017年5月2日2時18分] きょうかいせん、って言葉があるじゃない。 と、いった、彼女が、線をひいた。 むじひに、スッと切れめをきれて、 彼女は、だからね、と無意味なことば。 ひとつひとつが、正義である必要はなかった。 わかっていて、なにが、わかっているんだよ。 ただしい、ということが、なにひとつただしくはない、 そんなただしさ。 理解ができないよ。 あふれる液体が、シリコンカップに、 カチカチにこおらせれば、きっと形になるでしょう。 わかんないでしょ。 彼女がせいいっぱい、つきとばしていたもの、 の、ひとつ、ぼくはうっかり拾ってしまって、ああ、むざん。 冷却温度が足りなかったので、 ぶっしつは流れでてゆきました。 あしもとにしたたるので、 転ばないようにきをつけて、 あ、 彼女がくつしたをもちあげて、 ぬれちゃったよ、 と、いったので、ぼくと彼女のきょうかい、は、 ガラガラとこわれていきました。 しみてしまったものは、もどりません。 よごれてしまったね。 ぼくのこと、わすれてしまってもよかったよ、 でも、 ね、 しみてしまったことがかわらない。 かわいそうだね、って、おもうことが、 彼女をめいいっぱいやさしくつつむ、 あるひとつの暴力の、 あふれてしまったちからのことを、 きょうかいで、懺悔したら、 ぜんぶ、なかったことになりますか。 むじひ、な、切れめ、がやぶれてしまった。 ああ、かわいそう。 ---------------------------- [自由詩]Bk/卯月とわ子[2017年5月8日21時33分] 貴方は悪者 平穏を乱す者 その自覚があったからあんな事しちゃったんだよね 黒い銃は現実を切り裂いて 阿鼻叫喚の宴を引きずり出す それを嘲笑って 私の手を引いたあなた 俺は悪者 平穏を乱す者 知っているから優しいんだよね 黒でいる苦痛も パステルに染まる努力の血の涙も 貴方は知っているから ---------------------------- [自由詩]青い裂果/ただのみきや[2017年6月24日13時44分] 青い裂果     光の手中に墜ち さえずる鳥 ついばむ鳥 文字へと変ずるか 黒く蟻を纏って 大気に溶けだす肉体は祈り 小さな動物の頭蓋のよう 未満の種子 生を宿すこともなく 成熟と血脈から絶たれ 自他の境を失った やがて他者へと 遍く 薄められ 青い裂果    赤い鉄の匂い 招きに集う悪食のぬめる眼に 映る あどけなさ真白く 渾身の 鈍器の一撃に似て             《青い裂果:2017年6月24日》 ---------------------------- [自由詩]ミラー/1486 106[2017年6月27日20時17分] 信号待ちの交差点で隣に並んだ車を覗き込んだ ドラマで見たような奇跡を望んでしまっている ぼうっとした刹那にけたたましいクラクション 少しの間立ち止まることさえ許されないようだ サイドミラーに映る景色は風のように流れてく 見落としてしまった景色は1つや2つじゃない 振り返ってみてもあの頃に戻ることはできない 分かっていても自分で自分に嘘を吐いてしまう 向かい合っていたはずだった僕達はいつの間に 相手の姿に自分の姿を重ねてしまっていたんだ だから少しの違いなのに気になって仕方なくて 必要以上に相手に求めすぎてしまったんだろう コップを落とした破片を拾おうとして血を流す 自分の不注意を棚に上げ怒りをぶつけてしまう 大切にしていた日々と手放してしまった幸せと 記憶の底に残されたものは色褪せることもなく 誰もいない部屋のドアを開けてただいまと呟く 鏡に映る自分の姿は見違えるほど疲れた様子で 冷静になれれば埋めあえたものもきっとあった 最後に壊してしまったのは自分の手だったんだ 向かい合っていたはずだった僕達はいつの間に 相手のことが正反対に見えてしまっていたんだ 今更になって素直な気持ちを届けられたらって ディスプレイを眺めてみても伝える手段はない たった一つずれただけで変わってしまったミライ 向かい合っていたはずだった僕達はいつの間に 相手の姿に自分の姿を重ねてしまっていたんだ だから少しの違いなのに気になって仕方なくて 必要以上に相手に求めすぎてしまったんだろう 向かい合っていたはずだった僕達はいつの間に 相手のことが正反対に見えてしまっていたんだ 今更になって素直な気持ちを届けられたらって ディスプレイを眺めてみても伝える手段はない 向かい合っていたはずだった僕達はいつの間に 相手のことばかりを見て自分自身を省みもせず 笑って許すことができたら相手も応えてくれた やっと答え見付けたのに何も変えられないんだ 向かい合っていたはずだった僕達はいつの間に ---------------------------- [自由詩]耳/清花[2017年6月29日22時13分] すべてのものには順番があって 今 を 得るための 過去 ねえあなたのその耳が欲しい やわらかい 大切に箱にしまったそれは あなたから切り離されるともうわたしのすきなそれではなくて 意味なんてないんだって知った 放った言葉が悉く闇に落ちるのを ただ見ながら かわいそう 返して なんて言ったって もうそれは別の生き物で 勝手にどこかへ向かって消えていく 行き止まり なんて ない 過去 を 経て 得た 今 あなたをあいしているから わたしをあいしてください なんだそれ 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嫌われ者が背中を丸め眠る 閃光 現実から覚めた夢 黒く塗られた光が剥がれる 川底に沈む躰 憂いの息を吐き出しながら 複雑に絡む神経 蔦のように空に向かう 救われない訳 それは病んだ罪悪感 不信は不信を作り 囚われの男が震えている 自意識過剰の絡繰り それは過剰なプライド 飾ることができない瞳 似たもの通しなら 理解はできる 悟れ 月が光に呑まれる時 闇は消える ---------------------------- [自由詩]影/鷲田[2017年9月5日22時08分] 甘美なる赤い香りは 蒼い花を征服して 空間に調和という時間を与える 香水の飛沫 ヒステリックに飛び散る夜 叫びは歌とは違う 言葉が一つ捨てられている 孤独な人は名前を持っているのか 沈黙と共に寝ているだけなのか 夢が現実の表面を包み込む 哀れ 一房の葡萄の実 陰惨な道は認識の過ちだった 目は自らに嘘を付いた 秋に染まる天空は真っ青 ああ、重くなった 私の体 栄光の粒子は 地球のマントルに引き寄せられ やがて太陽が昇りゆく 人々は通俗的 少年がドアの扉を開く 朝の道路に横たわる影 ---------------------------- [自由詩]今夜は少し明るい/フユナ[2017年9月6日1時11分] 詩情さえ なくしていいと思っていた このコンクリートの延長線に あなたはいない ひとりをなくした 世界のようなひとりを なのに今夜は 少し明るい 月見草が咲いていて 私は詩を書いているから ---------------------------- [自由詩]風の痛点/ただのみきや[2017年9月6日20時03分] 木々が襟を立てて拒む間 風は歌わない 先を案じてざわざわと 意味のないお喋りを始めるのは木 いつしか言葉も枯れ果てて 幻のように消えてしまう すっかり裸になると しなやかに 風は切られて 歌い出す すすり泣くように 他者によらねば現わせない 存在の悲哀を ほら 鞭のように撓(しな)った枝先あたり 奏でているのではない あれは 己を裂いて ふるえる声            《風の痛点:2017年9月6日》 ---------------------------- [自由詩]草蜻蛉に/Lucy[2017年9月15日18時37分] 塞がれた傷なら 新しいほど ほの明るい 命と呼ぶには薄すぎる 生まれたばかりの緑の雲母は はかなげに震える風の欠片 アスファルトに跳ね返る 光の刃が 明日には切り刻むだろう 分厚く 傷を盛り上げて 凶暴な季節にたちむかおう 夜を渡る河に浮かべ 失語した恋の由来を 解き放つ もうすっかり葉を落とした木立のように 目を閉じて 煌めきながら羽ばたいていく 小さいけれど 強い命を見送った 空は光を滲ませる 深い雲の傷口に ---------------------------- [自由詩]もしも あのとき そしたら きっと/夏目 碧[2017年11月13日2時55分] その感情は後悔 「今までありがとう」 君は優しく微笑んだ 僕だけが泣いていた 「大丈夫だよ」 君は優しく微笑んだ 別れを告げたのは僕なのに 君は優しく微笑んで家を出た その腕を掴むのは 愛ではないと思っていたから 僕が泣いていた 扉の外で 君は泣いていた もしも あのとき でも やっぱり 抱きしめたいと思う気持ちが 愛なんだと知ったのは 君が居なくなったから ---------------------------- [自由詩]やっぱり紙ベース/イオン[2018年2月17日12時18分] 信用というのは やっぱリ紙ベースでしょう 暗号は解読するものではなく 紙から心で読み解くもの 仕事というのは やっぱり人ベースでしょう AIでこなせるものを 愛とは呼ばない 夢を描くには やっぱり現実ベースでしょう SNSで描いても 二次元でしかない ---------------------------- [自由詩]母の日に/Lucy[2018年5月22日13時33分] 幼稚園の頃 プレゼントは野に咲くお花がいいって 私が言ったから 兄ちゃんと二人で どこかの空き地で摘んできた ジシバリ アカツメクサ ははこぐさ ルピナス ひめじょおん 引っぱって抜いてきたらしく 根っこがついたものもまじった花束を 小さな拳にしっかり握り 息を弾ませ 「はいおかあさん」と 差し出した満面の笑顔を思い出す 「本当に野原に咲いていたんだよ」 「よそのおうちのお庭じゃないよ」と口々に言いながら その花たちを 花瓶に活けて 玄関の靴箱の上に飾った 幸せなお母さんだった頃の私が いつまでも枯れることなく この胸の中に咲いている ---------------------------- [自由詩]きみのとなりにユーレイのように/田中修子[2018年6月10日12時22分] きみのかあさんになりたい お洋服を手縫いしたり 陽に透けるきれいなゼリーをつくったり おひざにだっこして絵本を読んだりする いつも子育てのことで はらはらと気をもんでいる きみのとうさんになりたい 上手な火のおこしかたナイフの使いかたを教えよう 子育てノイローゼ寸前のかあさんを 「こら ちょっとやりすぎだ」 と抱きしめて デートにつれだしたりする きみのばあちゃんじいちゃんになりたい かあさんもとうさんも苦しそうなとき ちょっぴり預かって あくまでこっそりと いつもより贅沢な 歯の溶けそうなチョコレート菓子を 買ってあげたりする 内緒ですよ きみのともだちになりたい かあさんにもとうさんにも なんとなく話せない あのことを ひそひそ話すんだ なん時間だって きみの先生になりたい しかめつらしながら授業するあいま 生きることにほんとにひつようなことを ボソッともらして 校長先生にしかられる きみの 恋人になり……はべつにいいかな わりとテレビとか本とかに載っているし でも、空想と現実はちがうのである ガッカリするでないぞよ きみがもう だれかの かあさんでありとうさんであり ばあちゃんでありじいちゃんであり ともだちであり 先生であり 恋人……はいいんだった で、あるとして それでもぼくは ひつようなときに ひつようなだけ きみのそばにいよう ---------------------------- [自由詩]言雪<ことゆき>/田中修子[2019年2月9日19時50分] 雪のふりつもる音を 私の耳はとらえているのだろうか 青い夕暮れに白い雪ぱらぱらふるふるもっとふれふれ 夜 雪は少しの光を乱反射してほのかに明るく しずかに しずかになっていくけれど ことばが雪のようであったら つめたさはあっても かがやき くるみ おとずれる静けさがあったら ことばは どちらかといえば 雪よりは葉っぱに性質が近いんだろうか やはり みどりごの発するみずみずしい音 おとなになり たくみにあやつれるようになり 笹の葉を気まぐれに引き裂こうとするとき ゆびさきを切りさいて ハッ とするのである 葉<ことば>は 木<わたし>に呼吸をさせてくれる 元来そのためにあったものが ひとをきずつけている たしかに ハッハッハ と 笑おうとする ことすらなんだか障る ちょっとばかり 雪の道におでかけ ---------------------------- [自由詩]風の道/服部 剛[2019年2月9日21時11分] アスファルトの下に張り巡らされた 地下鉄を降り、改札を抜けて 無表情な仮面の人々とすれ違う逆流は 生ぬるい風になり この頬をなぶる だが、視える 人波の間を分かれゆく 目の前の道を 自らの鼓動に応じて、私は歩む  階段を……のぼったビル群の街で 地上の風に吹かれながら   ---------------------------- [自由詩]金色の朝/はるな[2019年2月9日21時47分] 金色の朝 私たちは思い違いをしている 実在、スープの値段、猫の恋、明後日の天気など あらゆる角度に突き立てた仮説がもはや球になって 設計され、建設され、実用され、朽ちてゆき、修繕され、 街は息の長い動物の様に伸び縮みし それは時間の行き方にも言えることだけれども いったいその細胞のひとつにすぎないわたしたちの中にもそれぞれ はてしない思想と現実が混ぜ合わされ、 吐き出され、 相互作用する椅子に座っている、一体の動物を形成する その瞬間にも多くの物事が終わりつづけている 私たちは探すのだ 営みの意味と無意味と価値と無価値を 空腹をみたすための食物を探し出すのと同じで だからそれらはしばしば作られる。 培養される、出荷され、値札を貼られさえする。 世界の奥行きが整備され 隅々まであかるい清潔さをもとめられ 照らされはじめると 私たちは眠たくなりすぎる 夜が足りないから、 かわいた瓶を持ち寄って、金色の朝を 少しずつ 少しずつ 咀嚼している。 ---------------------------- [自由詩]紙と暮らす/水宮うみ[2019年8月14日3時56分] みとれていたのは恋をしたから 朝のひかりで空の詩を書く 手紙のように話をしている 風にはきっと心があった 紙ひこうきで何度も出会う ---------------------------- [自由詩]あるもの/水宮うみ[2020年2月16日22時14分] 僕だけが知ってる風景がある。 僕しか知らない美しさがある。 目だけで見ているわけでも、 耳だけで聴いてるわけでも、 声だけで話してるわけでもない。 僕の心が、好きになったものがある。 ---------------------------- [自由詩]あさ/梅昆布茶[2020年2月18日7時48分] とても良い朝には きみに電話をして かわいい化け物の話とか 食べきれないピザの大きさなんかを 評論してみたいんだ ときどき売りにゆく 柱時計がボーンと鳴り 寺山修司が競馬新聞を持って 渋谷場外で馬券を買っている んだけど ---------------------------- [自由詩]冷やし中華始めました/たもつ[2020年2月18日19時36分]     いつまでも、が終わらない 夏のいつまでも 冷やし中華始めました 写真より冷たくなっていく手 冷え性なもので、と 言い支えるせめてもの君 三丁目産まれの君 三丁目の人間はほとんど 一丁目に行く都合がない、と そんな君、一丁目は遠かったのかい 途中で力尽き 始まるものと 始まらないものとが ことごとく力尽き 冷え性が益々加速していく 膨張する麺 拡張するハム 薄いままやり過ごす錦糸卵 その他は冷やし中華界隈のこととして 手を温めれば終わっていく 冷やし中華始めました (君を愛しているのは内緒の話だ) 君にしかわからない言葉がある いつまでも、 引き止めない      ---------------------------- [自由詩]家路/梓ゆい[2020年2月19日2時12分] 死んだ者たちが帰ってくる時刻だ。 透明な海が広がる南の方角から 白い空間と氷雪で覆われた北の方角から 生まれ故郷を目指して魂が向かうのは 死ぬ間際まで思い続けた家族に対しての心を 表しているかのようだ。 お父さん。お母さん。 無言でこぼれていた無念の涙。 「私は生きて、家に帰りたかった。」 ---------------------------- [自由詩]憧憬/ガト[2020年6月6日5時33分] 少しも 優しくないんだよ 私は 優しくなれないって 優しく出来ないって 何なの 優しさって努力なの? 違う 優しい人は 何も考えずに優しいんだよ どうしようもなく優しいんだよ 腹が立つぐらい優しいんだよ 私がどうにかして 優しい言葉をひねり出そうとする前に 閃光のように眩しく 元気か?って笑うんだよ ---------------------------- [自由詩]そんなことより大切な人生を/秋葉竹[2020年6月9日23時36分] 小雨つづく六月、小さな 悲しみが路傍に立っている 嘘をつかれて、嘘を信じたのは あなたの涙があまりに寂しげで それが一番うそっぽいから しずかに自死しようと歌った 私は私のことが嫌いだし あなたの涙も好きじゃないんだ そんなときその胸から 漏れだす声が聴こえるんだ 死にたいのか、殺したいのか それがわからないままなのです まるでむつごとを囁くような声で そんな絶望が聴こえるんです つま先みつめて立ち止まった まるでレモンの飛沫の漂う空気の中 小雨つづく六月、小さな 悲しみが路傍に立っている 私を呪うかのような目つきで 幸せになるなんて許さないと歌う そんなことより大切な 愛を、 私は、 この手から砂金みたいに キラキラと、 こぼしてしまったというのに ---------------------------- [自由詩]みなみ風を意識して/足立らどみ[2021年12月7日0時59分] みなみ風を意識して あなたのいない 空は高いですか 若いころの才能は ライバルをつぶす ことでしたか 年老いた権力者は 弱い者いじめが 好きでしたか 本当にいる暗躍する殺し屋が 夢想の世界から飛び出したら 誰だつて不安な日々だからさ それでも守りたい人のために 全世界を敵に回しても 貫き通すのならば 遥かな空高く流れている みなみ風を意識して 最後の最後は自然だけは あなたの味方だから そこまでいつてしまつたら 人も自然。 みんな自然だよ ---------------------------- (ファイルの終わり)